気候システム研究のための高精度大気・海洋・陸面結合大循環モデルの開発
Development of a high-resolution coupled atmosphere-ocean-land general circulation model for climate system studies
時岡 達志
Tatsushi Tokioka
地球環境フロンティア研究センターの中期計画に沿って、大気・海洋・陸面結合大循環モデルと高解像度全球雲解像大気モデルおよび高解像度全球渦解像海洋モデルを開発し、先進的気候システム研究を推進していくことを、本プロジェクトの主たる目的とする。
プロジェクトでは、今まで開発してきた結合モデルを基礎にして、数年から数千年に及ぶ気候変動を再現できる大気・海洋・陸面結合大循環モデルを開発する。開発したモデルは一つのコミュニティモデルとして広く利用されることを目指す。また、高精度全球雲解像大気・渦解像海洋モデルを用いて、従来型の気候モデルでは扱うことのできなかった大気・海洋現象を直接解像したシミュレーション実験を行う。高分解能シミュレーション実験から気候システム中の様々なスケール間相互作用を解明し、この成果をふまえて低解像モデルの物理パラメタリゼーションを改良することも行う。
気候システム研究のための結合モデル開発では, 新しい境界層スキームと新しい積雲対流スキームを結合モデルに導入し、モデルバイアスの低減と降水の日変化の現実的な表現を試みる。モデル出力の解析, 古気候再現実験, 気候予測実験を通してモデルの物理過程を多面的に評価していく。高解像度全球雲解像大気モデル(NICAM)の研究では、水平数キロスケールでの超高解像度気候シミュレーションを行う。これによって、特に台風や熱帯降水システム等の予測の精密化が期待される。渦解像海洋大循環モデルの研究では、中規模渦を近似式を用いることなく直接解像し、中規模渦と海洋循環の相互作用の現実的なシミュレーションを行い、この相互作用を解明する。
結合モデル開発では、新しい境界層スキームをMIROCに導入し、モデルの水蒸気量の鉛直分布が著しく改善し、二酸化炭素倍増時の気候感度が下がることを確認した。これに加えて、新しい積雲対流スキームを開発導入したところ、赤道波動の表現が大きく改善された。水平と鉛直を高解像度した気候モデル(T213L256) で再現されたQBOは低解像のものより現実的で、その振動の生成メカニズムをモデル出力を用いて調査した。さらに、継続して行ってきているモデルプロダクト解析とモデル感度実験により、結合モデルの気候再現性の検証を行なった。
高解像度全球雲解像モデル(NICAM)の研究では、熱帯のマッデンジュリアン振動の再現実験を水平メッシュ間隔3.5, 7, 14kmで実施し、積雲集団の東進構造をシミュレートするとともに、マッデンジュリアン振動の内部構造を現実的に再現することに成功した。また、気候感度実験を実施し、温暖条件の実験に対する感度が、特に上層雲に関してMIROCと異なる応答が見られた。
高解像度渦解像海洋モデルの研究では、渦解像海洋循環シュミレーションを実施し、中規模渦と海洋循環の相互作用を解析した。その結果、南大西洋の中層水の生成メカニズムにおける中規模渦の役割を世界に先駆けて解明することに成功した。