平成19年度 地球シミュレータ利用報告会

火山ダイナミクスの数値シミュレーション

発表資料 (1.7MB)

1. プロジェクト名

火山ダイナミクスの数値シミュレーション

Numerical simulations of the dynamics of volcanic phenomena

2. プロジェクト責任者名

小屋口 剛博

Takehiro Koyaguchi

3. プロジェクトの目的

本研究では,地球内部のマグマ発生から地表におけるマグマ噴出までの火山現象を,相変化・相分離・熱輸送・乱流を伴う流体力学的問題として数値コードを開発し,火山現象の物理過程に関する理解を進める.

4. 今年度当初の計画

火山現象のうちでも特に人工衛星写真や火砕物堆積物などを通して定量的な観測が可能な噴煙現象の再現を目指す.今年度のテーマは以下の4点に分類できる.

  • a.大規模火山噴煙の3次元数値コードによる長時間シミュレーション
    噴火開始から1時間後程度までの噴煙の上昇と拡大を再現し,フィリピン・ピナツボ火山1991年噴火の観測データと系統的に比較する.
  • b.火山噴煙を含む乱流状態の自由噴流の高精度シミュレーション
    乱流ジェット・プルームを非常に高い空間分解能で再現し,室内実験で得られている乱流の混合効率と比較を行う.
  • c.地形を考慮した火砕流の3次元数値コードの開発・改良
    噴煙に特徴的な非線形な密度変化と複雑な地形の影響を含めた3次元数値コードを開発し地球シミュレータに実装する.
  • d.その他,相変化・相分離・熱輸送・乱流・衝撃波に関する数値コードを用いた基礎的研究.

5. 今年度得られた成果、および達成度

成果

  • a. ピナツボ1991年噴火の観測データを整合的に説明できた
    地球シミュレータを100ノード利用し,大規模な火山噴煙の長期積分に成功した.計算の結果はピナツボ1991年噴火の噴煙高度や半径の観測データと非常によく一致し,モデルの正当性を確認できた.さらに3次元の計算結果を用い,観測量から噴火条件を見積もる簡便な手法を新たに提案することができた.
  • b. 室内実験で得られる乱流ジェットの再現に成功した
    乱流ジェットの非常に細かなスケールの渦まで再現することができ,室内実験で計測されている乱流の混合効率を定量的に再現することができた.これにより,火山噴煙を含む自由噴流の乱流混合に支配的な渦スケールを再現するための数値計算上の条件を見積もることができた(Journal of the Earth Simulator Vol.8に掲載).
  • c. 火砕流の3次元モデルの基礎コードをESに実装できた
    一般座標系を使い噴煙の非線形な密度変化を再現できる火砕流の3次元モデルを開発し,実際の地形データを用いた小中規模の計算を正常に実行できるようになった.
  • d. 火山噴火に伴う爆風伝播を模擬する計算コードのESへの移植準備(並列化,ベクトル化),および計算に使用する高解像度の地形データを作成するプログラムの開発を行った. また,火山灰の堆積メカニズムや、噴煙中の固体粒子と気体間の非平衡過程の理解を目的とする固気二相流計算のためのコード開発を行った.

達成度

a. 100% 大規模噴煙の再現には成功し,次は小規模噴煙の再現を目指したい.
b. 90% 乱流モデルの更なる吟味やスペクトル解析により更なる理解ができる.
c. 70% 計算の大規模化・安定化が求められる.
d. 60% 検証問題に対して計算を行った結果,スキームの安定性が今後の課題である事が判明した.