平成19年度 地球シミュレータ利用報告会

ドラッグデリバリシステム(DDS)の大規模・ソフトマテリアル・シミュレーションに関する研究

発表資料 (2.4MB)

1. プロジェクト名

ドラッグデリバリシステム(DDS)の大規模・ソフトマテリアル・シミュレーションに関する研究

Large-scale Softmaterial Simulation on Drug Delivery System

2. プロジェクト責任者名

宮内 敦 財団法人高度情報科学技術研究機構

Atsushi Miyauchi

3. プロジェクトの目的

DDS(ドラッグデリバリシステム)のバイオソフトマテリアル的な現象の解明に大規模シミュレーションを導入する。本研究ではDDSの構造及び機能に着目し、先ず中核となる目的遺伝子の凝縮特性の把握、次に目的遺伝子をポリエチレングリコールで包む高分子ミセル構造の最適設計、さらにDDSを標的疾患部へ的確に輸送し、かつ薬理的作用を発現させるまでの薬物動態及び薬理効果を実現する分子機械設計を目的とする。これらの設計シミュレーションを薬理、臨床実験へフィードバックし、DDS開発の助けとする。

4. 今年度当初の計画

  • 1)DNA凝縮挙動シミュレーション
    前年度に並列化したプログラムの適用をさらに大規模のシミュレーションへ拡大する。まずMORISを用いて、DNA凝縮の基礎過程である水溶液中におけるポリエチレングリコール=ポリLリシンとDNAの結合状態を数万原子数規模で解析する。また、PWSCFを用いて、長鎖のポリエチレングリコール=ポリLリシンとDNAの結合時における電子状態解析を実施する。
  • 2)高分子ミセルの自己組織化シミュレーション
    簡略化した量子動力学モデルを用いて、溶液中においてPEGが両親媒性によってミセル化する自己組織化シミュレーションを行う。
  • 3)DDS製剤の薬物動態のシミュレーション
    高分子ミセルの表面を修飾する糖鎖と反応する、細胞表面の膜蛋白に関する機能シミュレーションを行なう。

5. 今年度得られた成果、および達成度

成果

DDSにおいてはDNAとPEG等との結合挙動を詳細に把握することが重要である。本年度も昨年度に引き続きDNA凝縮挙動シミュレーションに重点を置いた研究を進めた。

  • 1)DNA凝縮挙動シミュレーション
    • ① MORISを用いた解析では、計算が長時間化すると原子の軌道が不安定化する不具合が見つかった。プログラム中で用いたホッピングパラメータ等の精度が不十分だったことが原因と推測される。現在、第一原理計算から再構築した新たなパラメータを作成中である。
    • ② PWSCFを用いた解析では昨年度、部分的な詳細解析としてPEGとPLLからなるブロック共重合体がDNAと接合する条件を第一原理シミュレーションによって探索した。本年度は規模を昨年度に比べて4倍の原子数に増やした分子動力学シミュレーションを行い、系全体のイオン電荷分布を確認した。具体的にはドライ及び水溶液中の条件で、270原子からなるブロック共重合体と637原子のDNAからなる系に対し、両者間に生じるイオン結合を通して電荷移動を起こす主要分子とその移動量を追う分子動力学シミュレーションを実施した。計算された挙動と凝縮現象との間には一定の有意な対応が認めらたが、その最終確認にはさらに長時間のシミュレーションと大規模なディスクリソースが必要であることが判明した。
  • 2)高分子ミセルの自己組織化シミュレーション
    簡略化した量子動力学モデル(クォータニオンモデル)による高分子ミセルの自己組織化現象のシミュレーションを予定したが、さらに細部に亙って検討を加えた結果、このモデルでは物理的モデリングが不十分であると判明した。現在これに代わる分子動力学プログラムとしてDL-Polyモデルの最適化を準備中である。
  • 3)DDS製剤の薬物動態のシミュレーション
    離散粒子法に基づいたモデルによるシミュレーションを行う予定であったが、実質的な進展はなかった。

達成度

  • 1)DNA凝縮挙動シミュレーション。達成度60%。
  • 2)高分子ミセルの自己組織化シミュレーション。達成度20%。
  • 3)DDS製剤の薬物動態のシミュレーション。達成度0%。