放射線損傷に伴う材料の物性変化と破壊の微視的シミュレーション
Electronic and atomistic simulations on the irradiation induced property changes and fracture in materials
蕪木 英雄
Hideo Kaburaki
腐食環境にさらされている一般の構造材料の破壊過程においては、水素による材料の脆化が重要な課題の一つであり、過去100年に渡り実験等数多く行われているにも関わらず、そのメカニズムの解明には至っていない。腐食環境にさらされている原子力材料においても水素脆化機構の解明が必要とされる。ここでは水素脆化機構の解明を目指し、第一原理計算手法を用いて、転位と水素の相互作用、特に水素による転位運動の誘起効果メカニズムを明らかにするため大規模で高精度な数値シミュレーションを実施する。
体心立方(BCC)結晶に属する鉄(Fe)結晶内の転位芯の構造、転位が移動するために必要な力(パイエルス応力)を第一原理計算により精密決定する。さらに、Feに関しては水素(材料の脆化に関係し、応力腐食割れの原因の一つとされている)を転位周辺に配置して第一原理計算を行い、水素が安定に存在する位置及び配置可能な水素原子数を決定する。更に、せん断変位により転位が動き出す限界応力(パイエルス応力)を決定した後、転位周辺に水素を配置してパイエルス応力への影響を明らかにする
231個の鉄(Fe)原子から構成される体心立方(BCC)鉄(Fe)結晶内にらせん転位を導入し、その転位芯の周囲に水素原子を配置して最も相互作用が大きな位置を第一原理計算により探索した。転位芯から順に離れた八面体配置 (octahedral site)の位置に水素原子を入れ、格子は緩和しないで全体エネルギーを求めた結果、転位芯近傍に水素原子の大きなトラップサイトがある可能性が見出された。更に精密に計算するため、転位芯に近い四面体配置(tetrahedral site)の位置に水素原子を入れ、水素原子位置を緩和した計算を実施し、相互作用エネルギーを大体0.2eV程度と見積もることが出来た。
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