高頻度経済データの経済物理学解析
Econophysics Analysis of High Frequency Economic Data
高安 美佐子
Misako Takayasu
これまで科学的な観点から解析されたことがない膨大で詳細な経済データを、経済物理学の解析手法に基づいて解析する。これによって、詳細な経済データを超並列計算機で解析するための手法を確立し、その有用性を実証する。
本研究全体の対象となる経済データとしては、次の3つがある。
地球シミュレータ利用の初年度にあたる今年度は、第1のテーマに焦点を絞ることとし、第2、第3のテーマに関しては、次年度以降の研究計画に盛り込むこととする。この第1のテーマでは、日本中にある事実上全ての企業にあたる約100万社間の取引関係や財務状況に関するデータを経済物理学の手法で解析し、特に、企業ネットワークの構造の特性を特徴付ける様々な量を計算し、また、それらの量と企業の財務データの統計性を解析することを目的とする。企業ネットワークのハブ度やオーソリティ度の計算、それらの量と企業の成長率との相関、任意の企業間の距離行列、また、コミュニティ解析などを利用した企業ネットワークの自動分類、ネットワーク構造上のリスクの評価などを初年度の目標とする。
研究の実働部隊のメンバーに地球シミュレータを利用した経験のあるものが全くいない状態からのスタートになることを踏まえ、まず、最初の4ヶ月は、これまでパソコンを利用してC言語などを使って作ってきた経済物理学解析プログラムを、フォートラン言語に書き換え、動作の確認を行う作業を実施する。
次に、8月からの4ヶ月程度の期間にひとつひとつのプログラムを順次地球シミュレータに入れ、ベクトル化率、並列化率を高め、最大使用メモリーを下げるようにプログラムの改良を行う。このプログラムの改良に関しては、ひとつの県内の企業データやひとつの種類の産業のデータなど、限定された小規模なデータを主として用い、無駄な計算時間の浪費を避けることに注意する。また、この期間に計算結果の出力方法に関しても検討し、プログラムを作成する。
12月からの最後の4ヶ月において、全100万社のデータの解析を進め、結果を論文などにまとめていく作業を行う。
最初の4ヶ月間の準備期間では、年度初めに想定したスケジュールよりも若干の作業の遅れがあった。しかし、途中からフォートラン言語の経験を持つメンバーを追加し、作業はほぼ予定通り進んだ。
次の4ヶ月間のプログラムの改良作業もおおむね予定通りに進んだ。計算結果の出力方法の開発に関しては、まだ、今後も継続して進める必要がある。企業ネットワークのハブ度やオーソリティ度の計算、および、企業の成長率の解析に関しては、全企業データに関して、計算が完了した。距離行列に関しては、プログラムの改良が終わり、企業数を限定した解析までは終わった。コミュニティ解析などを利用した企業ネットワークの自動分類に関しても限定した企業数での解析までは終わっている。
12月からの大規模計算に関しては、まだ、これから本格的に取り組むところであり、結果はまだ揃っていない。今後、距離行列の算出、および、コミュニティ解析を全企業に対して実行する予定である。
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