火山ダイナミクスの数値シミュレーション
Numerical simulations of the dynamics of volcanic phenomena
小屋口 剛博
Takehiro Koyaguchi
本研究では,地球内部のマグマ発生から地表におけるマグマ噴出までの火山現象を,相変化・相分離・熱輸送・乱流を伴う流体力学的問題として数値コードを開発し,火山現象の物理過程に関する理解を進める.
火山現象のうちでも特に人工衛星写真や火砕物堆積物などを通じて定量的な観測が可能な噴煙現象の再現を目指す.今年度のテーマは以下の3点に分類できる.
昨年度までに構築した大規模噴火(噴出火口径が数百m)の噴煙を再現する3次元数値モデルを,より高頻度に起こる中小規模噴火(火口半径が数十m~数m)の噴煙に適用可能なモデルに拡張する.また,その数値計算上の問題点の洗い出しを行う.
マグマの発生・上昇といった地下現象や火口の形状などが噴煙のダイナミックスに与える影響を調べるため,マグマ溜りから火口までの流れに関する数値モデルと噴煙の3次元数値モデルを結合したモデルを開発する.当面は定常な噴火に焦点を合わせた基本モデルの性質を系統的に調べる.
火山灰が噴煙柱や傘型噴煙から分離することで降灰し,地表に堆積するまでを再現するモデルの開発段階として,プロトタイプとなる数値コードを開発する.
中小規模噴火は火口径に比べて噴煙高度が高くなるため,火口周辺の乱流混合を再現するために必要となるグリッド数が大規模噴火の計算に比べて著しく増加するという問題点が明らかになった.この問題点を解決するために,大規模噴火の3次元数値モデルに一般座標系を導入することで,火口近傍のスケール(数十m)から噴煙全体のスケール(数十km)の流れを同時に再現できる数値モデルを開発した.その結果,中規模噴火で形成される高度10km程度の噴煙柱を再現できた.また,噴煙柱内部の物理量プロファイルと乱流混合効率の関係を初めて明らかにした.さらに,一般座標系を用いた場合でも再現できる計算グリッドの最小サイズと最大サイズの比には限界があるため,小規模噴火(火口半径が数m)の噴煙全体を再現するためには計算グリッド数と計算ノード数を更に増やす,もしくは,重合格子法を用いるなどの工夫が必要であるといった問題点が新たに明らかになってきた.
マグマ上昇に関するモデルと準1次元定常の高速噴流理論を用い,火口半径やマグマ溜りの深さによって火口内外での衝撃波の有無が変化し,噴煙の流れも定性的に変化することを明らかにした.それら流れの変化の関係と火砕流の発生条件を組み合わせることで,火口付近の流れのパターンがこれまで知られていた以上に複数のレジームで複雑に構成されていることを解明した.以上の地下現象のモデルで得られた火口での噴出速度・圧力等を境界条件として,噴煙の挙動を3次元シミュレーションに結合する基本モデルを構築し,定常的な噴出率をもつ爆発的噴火に対する多様な噴火タイプを再現することに成功した.
火砕物の分離を考慮しない一流体モデルによって大規模噴火における傘型噴煙を再現し,噴煙内部の速度変動から乱流強度を推定することができた.この結果を用いることで,ピナツボ1991年噴火における降下火砕物の粒子サイズと到達距離の関係をこれまで以上に定量的に再現することに成功した.