平成20年度 地球シミュレータ利用報告会

地球シミュレータ用・非静力・大気海洋結合モデルの開発

発表資料 (2.5MB)

1. プロジェクト名

地球シミュレータ用・非静力・大気海洋結合モデルの開発

Multi-scale weather/climate simulations with coupled non-hydrostatic ocean-atmosphere GCM on the Earth Simulator

2. プロジェクト責任者名

高橋桂子 (独立行政法人海洋研究開発機構)

Keiko Takahashi

3. プロジェクトの目的

本プロジェクトは,地球シミュレータの能力を最大限に活用して,マルチスケール・マルチフィジックスな超高速シミュレーションを可能にする非静力・大気海洋結合シミュレーションコード(:Multi-Scale Simulator for the Geoenvironment (MSSG))を開発する。異なるスケールの現象をシームレスに結びつけた超高速シミュレーションを実現するために,MSSGには,高精度の計算手法,新しい物理過程モデルや新しい超並列計算手法が導入されている。本MSSGを用いて,1~5日程度の気象予測や,季節変動および1-2年の気候変動現象を扱うことが可能な,異なるスケールの現象をシームレスに結びつけたシミュレーションコードを実現し,MSSGを使用して,各スケールの,あるいはマルチスケールの対象現象の再現性と予測可能性を検証する。さらに,地球シミュレータを最大限に使用した際のマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーションの限界とこれからの課題を明らかにし,次世代スーパーコンピュータ上での超大規模シミュレーションの実行のための課題を明らかにする。

4. 今年度当初の計画

これまでのプロジェクトのまとめを中心とした以下の研究計画を推進する。特に以下の5つの観点からのモデル開発、事例に対する予測シミュレーション、計算性能の向上と最終評価を行う。

  • ・ 今後のマルチスケールシミュレーションのためにMulti-Scale Simulator for the Geoenvironment (MSSG)の各スケールに対するモデルの高度化を行う。
  • ・ 短期,長期シミュレーションの高精度化のために重要な,物理モデルの高度化,特に雲微物理モデルの高度化を行う。
  • ・ 長期積分を見据えて,ダイナミカルコアの高度化とそのインパクト評価を行う。事例テストケースを実行し,モデルの物理的性能についての評価も行う。
  • ・ シミュレーションコード全体の計算性能の最適化と計算性能の評価を行うとともに,特に,都市スケールでの計算の高度化と高速化を推進する。
  • ・ 上記のモデル高度化を検証するための事例予測シミュレーションを行い,そのインパクトを評価する。

5. 今年度得られた成果、および達成度

成果

  • ・ 全球,領域,都市スケールの各スケールごとに対し,特に計算精度に大きな影響を与える移流スキームの高度化とMSSGへの導入を行い,そのインパクトを評価した結果,いずれのスケールにおいても,物理的な性能を大幅に向上でき,特に,全球において,降水量の分布に大きなインパクトがあることを明らかにした。
  • ・ 全球での季節予測精度向上を目指したシミュレーションを行い,他のモデルとの物理的性能を比較した結果,MSSGを用いた高解像度でのシミュレーションは,よりよい再現性を示すことが明らかになったとともに,インド洋での降水分布の強度位置,モンスーンの再現性に課題があることがわかった。
  • ・ MSSG上に導入した雲微物理の物理的性能評価と高度化を行い,その評価のためにRICO数値実験を実施した.その結果,MSSGに導入した雲微物理が,他モデルとそん色ないこと,また,雨粒の落下速度や衝突成長のパラメタリゼーションの感度が高いことを明らかにした.
  • ・ MSSGを用いた都市スケールのシミュレーションの高度化のために,新たな計算スキームを導入し,基礎検証実験を行った結果、従来の手法と比べて,およそ100倍の高速化を実現した。
  • ・ さらに高速化と高精度化を目指し,あらたな全球モデルのプロトタイプとして全球面上にCIP-Soroban手法を適用し,動的適応型格子の採用の上に,高精度でありかつCFL条件が大幅に緩和可能な形式化が可能であることを示した。

達成度

当初の研究開発計画は,ほば予定どおりに進捗し,90%を達成した。加えて,新たな計算手法の導入によって,ダイナミカルコア,物理過程ともに計算の高精度化,高速化において,著しい成果を上げることができたため,当初計画を大幅に上回って成果を達成したといえる。