平成20年度 地球シミュレータ利用報告会

1700℃級ガスタービン燃焼器開発のための乱流燃焼の予測シミュレーション

発表資料 (909KB)

1. プロジェクト名

1700°C級ガスタービン燃焼器開発のための乱流燃焼の予測シミュレーション

Numerical Prediction of Turbulent Combustion Flows for 1700°C Class Gas turbine Combustor

2. プロジェクト責任者名

大島 伸行

Nobuyuki Oshima

3. プロジェクトの目的

CO2削減、サステナブル社会の実現はエネルギー産業に課せられた21世紀最大の責務であり、この目標に向けての技術開発促進が喫緊の課題となっている。一般に燃焼機関の高効率・低エミッションの実現には希薄高温予混合燃焼が理論的に優れており、経産省PJとして開発研究される1700°C級ガスタービン燃焼器もその代表的事例である。そこでは、逆火や燃焼振動などの流動不安定などの技術的課題を克服することで実用化を目指しており、乱流燃焼場の非定常予測シミュレーションの果たす役割が大きい。

一方、燃焼は「流れ」と「化学反応」の時間的、空間的スケール比が1000倍以上にも異なる典型的なマルチスケール・マルチフィジックス問題であり、それらに特徴的な間欠性、フラクタル性が現象を支配している。近年、乱流にはラージ・エディ・シミュレーション(LES)、燃焼には火炎片近似(flamelet approach)、また、スプレーなどの粒子流には離散粒子法(Discrete Droplet Model)などの研究が精力的進められ、実用問題への適用にも注目が向けられつつある。本申請者らは、flamelet近似を用いた乱流燃焼により火炎の流体力学的な発達過程を計算したのち、それを初期条件として詳細素反応解析により化学反応過程を計算する、ハイブリッド計算手法を考案して、基礎的な非定常燃焼流れのNO予測解析にて成功を収めた。本申請では、この考え方を1700℃級ガスタービン燃焼器の実機乱流燃焼場シミュレーションに適用して、定量的な精度評価とともに、実用化検証を行うことを目的とした。

4. 今年度当初の計画

本申請では、以下の研究課題を実施することを計画した。

1) 1700°C級ガスタービン燃焼器のflameletモデルによる非定常現象解析

・FFR Ver.3.0への更新による計算精度および速度向上

2) 1700°C級ガスタービン燃焼器の素反応モデルによるNO予測解析

・大規模計算格子(3000万要素規模)の実行、実機試験データとの比較

3) 1700°C級ガスタービン燃焼器の熱損失を考慮した温度解析

・小規模計算格子(500万要素規模)の実行、実機試験データとの比較

5. 今年度得られた成果、および達成度

成果

1) 1700°C級ガスタービン燃焼器のflameletモデルによる非定常現象解析

昨年度計算したFFR Ver.2.8から,最新版であるVer.3.0への以降更新を行った.本計算を対象にプログラム並列化率向上のためのチューニングを行った結果ベクトル化率は95%を充分超えていることを確認した。また、32CPUと80CPU使用時のRealTime(sec)計測による並列化率は1を超えており、この規模での並列化も十分なされていると考えられる。

2) 1700°C級ガスタービン燃焼器の素反応モデルによるNO予測解析

昨年度実施した小規模計算格子(500万要素規模)の計算結果を元に,より詳細な形状再現と乱流火炎構造の解像を試みるため,大規模計算格子(3000万要素規模)の試作を行った.しかしながら,格子生成環境が遠隔地に分散していることから本システムのネットワーク環境ではインターラクティブな大規模格子データのクオリティ評価に遅れがスムーズに行えず,予定の作業計画を完了できなかった.現在,外部計算機環境(北大SRおよび東大T2K)に移行しての作業を継続しており,年度内の計算実行を目指している.

3) 1700°C級ガスタービン燃焼器の熱損失を考慮した温度解析

昨年度において課題(2)の素反応モデルによるNO予測では瞬時温度場による生成率の予測を行ったが,実際には比較的長い反応時間の滞留により出口NO濃度が生じるものと考えられる.そこで今年度は,NO生成に十分な比較的長時間にわたる温度効果を扱えるよう,Flameletモデルと反応モデルを動的連成した解析法を導入し,熱損失効果を考慮した温度解析と併せて実用的NO予測の解法を開発した.

これを用いて,小規模計算格子(500万要素規模)の実行し,NO濃度場発達の時間的応答を解析した計算例を図1に示す.最終時刻(38000step)での計算結果は,実験で得られたNO濃度分布と比較して,1)メインベーン近傍に高濃度域があり,2)スクープ部で一度濃度が低下したのち,39出口に向かい上昇する,分布特徴を再現した.また,出口近傍におけるNO濃度値も実験と概ね一致する予測結果を得た.

R.L.モードにおけるNO濃度の時間的応答の解析例 1 R.L.モードにおけるNO濃度の時間的応答の解析例 2
図1 R.L.モードにおけるNO濃度の時間的応答の解析例

達成度

  • 1) 1700°C級ガスタービン燃焼器のflameletモデルによる非定常現象解析 100%
  • 2) 1700°C級ガスタービン燃焼器の素反応モデルによるNO予測解析 20%
  • 3) 1700°C級ガスタービン燃焼器の熱損失を考慮した温度解析 80%