平成21年度 地球シミュレータ利用報告会

大規模科学計算向け汎用数値ソフトウェア基盤の開発

発表資料 (620KB)

1. プロジェクト名

大規模科学計算向け汎用数値ソフトウェア基盤の開発

Development of General Purpose Numerical Software Infrastructure for Large Scale Scientific Computing

2. プロジェクト責任者名

西田 晃 (九州大学・情報基盤研究開発センター)

Akira Nishida

3. プロジェクトの目的

本研究では,線型計算,高速関数変換,及びその効果的な計算機上への実装手法の三分野を中心に,大規模化が予想される今後の計算環境に対応したスケーラブルなソフトウェア基盤を整備することを目指し,多様な計算機環境に対応したライブラリの開発を進めている.線型計算に関する研究では, 反復解法を中心に研究を進め,これらの拡張について多数の提案,発表を行うとともに,オブジェクト指向型の並列反復解法ライブラリ Lis (A Library of Iterative Solvers for Linear Systems) を開発し,国内外の多くの研究機関,企業で利用されている.また,高速関数変換に関する研究では,オートチューニング機能を備えた高速フーリエ変換ライブラリ FFTSS を開発し,多様なアーキテクチャ上で高い性能を得ており,Intel, IBM 等の商用ライブラリ,MIT の開発する FFTW 等と比較してより優れた性能を記録している.これら2ライブラリについては地球シミュレータ対応版の開発を完了し,実問題を用いた性能評価の段階にある.また,Lis については平成19年10月より地球シミュレータ対応版,また平成20年11月より NEC SX-9 対応版を公開している.実装手法に関しては,数値ライブラリの利用を目的とした高い抽象度を持つユーザインタフェース SILC (Simple Interface for Library Collections) を開発し,並列環境で使用可能なスクリプト言語として,国内・国際特許出願を行なうとともに,その成果を発表している.SILC については既にMPI対応を実現しており,地球シミュレータを含む並列ベクトル計算環境に対応したバージョンを完成し,配布する予定である.

4. 今年度当初の計画

本研究では新規アルゴリズムの実装,性能評価を主な目的としているため,計算資源について最大128ノードでの実行を予定している他は,既定の資源量で問題ないと思われる.ノード時間については各年とも区分4の範囲内で,2年間研究を実施する予定である.

5. 研究計画に沿った利用状況度

今年度前半はライブラリ開発を主に行い,ES2 及び東北大学に設置されたSX-9 を利用して,小規模並列環境でのデータを取得した.大規模ジョブでの性能評価は年度後半を予定している.

6. 今年度得られた成果、および達成度

成果

今年度は反復解法ライブラリLis を中心に,計算性能の向上を目的としたさまざまな改良を実施した.特に,線型方程式の求解を内部で大量に実行するアプリケーションについては,ユーザからの要望を受けて行列データの扱いを効率化し,顕著な性能向上を得た.また,疎行列ベクトル積の性能に見られる問題・計算環境への依存性に対処するため,チューニングを可能とするベンチマークプログラムを作成し,九州大学,東北大学等の計算機環境を活用した予備的な評価を行い,有効性を確認した.

達成度

70%

8. 研究成果一覧 (投稿中の論文、予定講演の場合はその旨記載のこと)

a. 原著論文 (査読あり)

  • Akira Nishida, Experience in Developing an Open Source Scalable Software Infrastructure in Japan, Lecture Notes in Computer Science, Springer, accepted.
  • Taizo Kobayashi, Toshiya Takami, Masataka Miyamoto, Kin'ya Takahashi, Akira Nishida, and Mutsumi Aoyagi, 3D Calculation with Compressible LES for Sound Vibration of Ocarina, In Proceedings of Open Source CFD International Conference 2009, accepted.

b. 原著論文 (査読なし、および雑誌等寄稿)

  • 西田晃,「線型計算における高精度演算」, 計測と制御,「高品質数値計算とその応用」特集号,to appear.
  • 高橋公也,宮本真孝,伊藤泰典,高見利也,小林泰三,西田晃,青柳睦, 「圧縮性 LES を用いたエアリード楽器の発音機構」, 京大数理解析研究所研究集会「数値解析と数値計算アルゴリズムの最近の展開」, 京都大学数理解析研究所講究録, to appear.
  • 西田晃,「複数アーキテクチャ上での疎行列ベクトル積の性能最適化手法」, 情報処理学会研究報告, Vol.2009-ARC-186 No.7, pp.1-8, 2009.
  • 西田晃,「前処理付固有値解法の誤差評価」, 情報処理学会研究報告, Vol.2009-HPC-122, No.6, pp.1-6, 2009.
  • 西田晃,「並列非線型共役勾配法アルゴリズムとその性能評価」, 情報処理学会研究報告, Vol.2009-HPC-121, No.36, pp.1-6, 2009.
  • 宮本真孝,高見利也,小林泰三,西田晃,青柳睦, 高橋公也,「圧縮性LESを用いた小型エアリード楽器の数値解析」, 日本物理学会2009年秋季大会講演概要集, Vol.64, No.2, p.243.
  • 高橋公也,宮本真孝,高見利也,小林泰三,西田晃,青柳睦, 「エアリード楽器の発音機構:流体と音の相互作用の数値解析」, 京大数理解析研究所研究集会「オイラー方程式の数理:渦運動と音波150年」, 京都大学数理解析研究所講究録, to appear.

c. 学会等発表 (ポスターセッションの場合はその旨記載)

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d. 講演

  • 西田晃, 「大規模科学計算向け汎用数値ソフトウェア基盤 SSI の大規模 SMP クラスタ環境への移植と性能評価」, 先駆的科学計算に関するフォーラム2009 ~先駆的計算科学研究プロジェクト成果報告会~, 九州大学情報基盤研究開発センター, 2009.
  • 西田晃, 「反復解法ライブラリLisを用いたSR16000上での疎行列計算性能評価」,先駆的科学計算に関するフォーラム 2009~新高性能アプリケーションサーバ情報交換会~, 九州大学情報基盤研究開発センター, 2009.

e. 新聞、雑誌での掲載記事

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