化学輸送モデルによる大気組成変動と気候影響の研究
Atmospheric Composition Change and its Climate Effect Studies by a Chemical Transport Model
滝川 雅之 (海洋研究開発機構 地球環境変動領域)
Masayuki Takigawa
地球温暖化およびそれにともなう気候変動は二酸化炭素(CO2), メタン(CH4), 一酸化二窒素(N2O)等の人為起源温室効果ガスの大気中濃度増加により引き起こされてきたと考えられている. 本プロジェクトでは高解像度の化学輸送モデルを用いて前進および逆計算を行うことにより温室効果ガスのソース・シンクを定量的に見積もる.
また, 前進計算の再現性能向上のため, 温室効果ガスの化学的な生成・消滅や他の大気中短寿命化学物質や気候要素との相互作用についても研究する. 現在は, 例えば水酸基(OH)ラジカルのような温室効果ガスの大気化学的制御因子についての理解が不十分なため, 化学気候モデルを用いてそれらのメカニズムを理解した上で定量的解析を行う.
本研究では, 全球化学輸送モデルを用いて, 二酸化炭素等の長寿命温室効果ガス, およびOHラジカル等の短寿命大気化学物質の大気組成変動のシミュレーションを行い, それらの対流圏・成層圏における変動および地球規模・地域規模での収支や気候影響の解析を行う.
温室効果気体の輸送過程および全球収支の検証のため, 全球化学輸送モデルに新たに一酸化窒素の同位体を組み込長期計算を行った.
温室効果気体の輸送過程および全球収支の検証のため, 全球化学輸送モデルに新たに一酸化窒素の同位体を組み込み, その鉛直分布をゾンデ観測等と比較するとともに, 全球収支の長期変動に関する解析を行った. その結果, キルナ上空での同位体比勾配はやや過小評価なものの, 昭和基地および三陸上空でのゾンデ観測で得られた勾配を良く再現できていた. 一酸化窒素自身の濃度勾配も航空機観測等とよく一致していることから, 現在気候における輸送過程および同位体分別過程の再現性は良好であると考えられる. また南極氷床のフィルン分析から産業化以前はδ15NBulkが現在よりも大きな値を示していたと考えられるが, 本モデルを用いた長期計算でも同様の結果となった. これは窒素肥料の大量使用により, 脱窒よりも硝化による土壌からの一酸化二窒素の放出が増大したためと考えられる.
年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください.複数の目標があった場合は,それぞれについて達成度を数値で示してください.
※計画的に計算機資源を利用できているか, 状況を記載してください.
本年度前半は, 当該期間に集中観測を行う他プロジェクトのモデル解析等を行っていたため本プロジェクトへの対応がじゅうぶん出来なかった. 年度後半に長期計算および初期解析を行った. 最終的には概ね初期目標を達成できたものと考える.
※ベクトル化, 並列化チューニング等, 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください.
本プロジェクトで使用している化学輸送モデルACTMはMIROCをベースに開発したもので, ベクトル化に関してはほぼ満足できる水準(98.94%) にある. 同位体モデルの組み込みはスカラ計算機(SGI Altix4700 およびチーム所有Xeonクラスタ) を用いて行ったため, 一部ループについてのみベクトル化チューニングが必要であった.
参加者のほとんとが年度前半に別プロジェクトへの対応に迫られたため, モデルチューニング等に着手するのは年度後半にならざるを得なかった.