平成22年度 地球シミュレータ利用報告会

宇宙・地球表層・地球内部の相関モデリング

発表資料 (3.3MB)

1. プロジェクト名

宇宙・地球表層・地球内部の相関モデリング

Space and Earth System Modeling

2. プロジェクト責任者名

草野 完也 (海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)

Kanya Kusano

3. プロジェクトの目的

地球システムは内部(地殻, マントル, コア), 表層(大気海洋)および外部(宇宙)が互いに影響を及ぼしながら変動進化する相関システムである.本研究は, 地球シミュレータセンターが行ってきたESプロジェクト「連結階層シミュレーションアルゴリズムの開発」の成果を発展させ, 複合相関地球システムの変動をとらえることができる先進的なシミュレーションの開発を目指すものである.このため, 第1に分子動力学モデル, 超水滴雲微物理モデル, 雲解像モデル, 全球モデルの連結階層シミュレーションを行い, 宇宙線と分子クラスターの環境影響を定量的に探る.第2に, 地球深部に取り込まれる水の影響を取り込んだマントル対流シミュレーションを実施し, 表層環境と内部の相互関係を探る.第3に天体衝突における脱ガスと雲生成過程をモデル化する.最終的に, これらの研究を総合して全球凍結など地球史における大規模環境変動のメカニズムを明らかにする.

4. 今年度当初の計画

宇宙から与えられる高エネルギー粒子の環境影響を評価するため, 核形成分子動力学モデル, 核成長モデル, 雲微物理モデル, 雲解像大気モデル, 全球大気海洋結合モデルからなる連結階層シミュレーションを実現する.さらに, 超水滴法による微物理モデルを雲解像モデルCReSSに導入し, エアロゾルの間接効果を第一原理から計算可能とする多階層地球環境モデルへ発展させる.また, 太陽地球環境システムの統合シミュレーションの実現へ向けて, 太陽面爆発モデル・宇宙線加速伝搬モデル・太陽圏モデルの開発をそれぞれ進める.
火成活動, 水やメルトなどに依存した化学反応効果を取り入れた内部地球進化モデルの基礎開発を行い, 表層と内部の間の水交換と火成活動が気候に及ぼす影響を探る準備を整えると共に, 脱ガス反応を考慮した天体衝突シミュレーションの準備を行い, 衝突によって生成される硫酸エアロゾルの定量的評価を行う.

5. 研究計画に沿った利用状況

超水滴雲モデルをCReSSに導入すると共に, 運動量カップリング方法の精密化や複数種の水溶性エアロゾルへの対応等を行うことで雲解像微物理モデルの開発をほぼ研究計画に沿って実現した.また, 大気海洋結合全球循環モデルCFESを改良し, エアロゾルの増加効果を検証する実験を研究計画に沿って行った.さらに, 太陽面爆発モデル・宇宙線加速モデルを用いた太陽地球環境システムの実験も研究計画に沿って実施した.この他に地磁気反転とその環境影響の解明を目指した新たな3次元電磁流体シミュレーション研究を開始した.なお, 核生成・成長モデルによるエアロゾル形成の研究及び内部地球進化モデルの開発は, 主にES以外のシステムを利用して順調に進められている.

6. 今年度得られた成果, および達成度

成果

銀河宇宙線が地球大気の電離等に影響して雲核となるエアロゾルの生成に変動をもたらす可能性については,幾つかの異なるアプローチで研究を進め, それぞれ重要な成果を得ている.超水滴法による雲解像微物理モデル(改良型CReSS)を用いてRain in Cumulus over the Ocean (RICO)プロジェクトによる観測データの再現実験を行い, 良好な結果を得た.この実験では超水滴法によるエアロゾルの粒径分解能の依存性を検証し, 分解能の向上と共に観測データの再現性が高まることが確かめられた.これは長年開発を続けている第1原理雲モデルが現実の問題に応用可能であることを示す重要な成果であり, 今後銀河宇宙線の雲影響を研究する応用研究へ発展させる予定である.
宇宙線等の効果で雲核量が増加し, 雲粒径が小さくなることを想定し, 大気海洋結合大循環モデル(CGCM)において, 大気放射計算に与えるパラメータの一つである, 雲粒の粒径を約半分にした数値実験(粒径半分実験)を行った.このCGCMでは雲粒はどこにできているかによらず,水(液体)の雲粒の粒径は1μm,氷(固体)の粒径は1.5μmが規定値となっていたが, それぞれを, 0.5μm, 0.7μmに変更して, 10年間の計算を行った.シミュレーションの初期値は, 規定値のシミュレーション(標準実験)を100年間走らせたものを使い, 標準実験として100年目から粒径を変更せずに10年間のシミュレーションを行った.10年間の粒径半分実験の最後の3年間では, 全球平均気温はほぼ定常に達し, 標準実験よりも約3℃低い状態となった.雲粒の粒径がどれだけ変わりうるのかについては今後の研究を待つことになるが, 今回のシミュレーションで, 粒径変化が気候変動をもたらす可能性があることが指摘された.
分子動力学モデルを用いて硫酸エアロゾルの核形成過程を解析し, 核形成の初期過程に分子クラスターのエネルギー分布が大きな影響を与えることを明らかにした.また, 核形成におけるイオン効果を直接解析するシミュレーションを開始した.
太陽観測データに基づいて太陽圏全体の電磁流体環境と高エネルギー粒子加速過程を再現する為のモデル開発を進め, 太陽面爆発の再現実験に初めて成功すると共に, 粒子流体連結手法を用いて高エネルギー粒子の加速と伝搬を計算することができるモデル開発を進めた.また, 天体衝突モデル, 地球内部化学ダイナミクスモデル, 超水滴法を用いた新しい火山噴火モデルに関しては, 新規開発のための調査研究を継続して実施した.

達成度

※年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください.複数の目標があった場合は, それぞれについて達成度を数値で示してください.

全体 80% (2010年12月時点)

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

※計画的に計算機資源を利用できているか, 状況を記載してください.

月別利用累積時間ノード積(下図)の通り計画に沿った利用を行っており, 年度末には配分資源(26,000ノード時間積)の90%以上を使い切る予定である.なお, 昨年度(H21)は配分資源の84%を利用した.

チューニングによる成果

※ベクトル化, 並列化チューニング等, 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください.

超水滴法を雲解像モデルCReSSに導入した先進的な雲モデルの開発を行い, 新地球シミュレータへの最適化を実施した.128ノードでベクトル化率 99.54%, 並列化率99.977%を達成している.