平成22年度 地球シミュレータ利用報告会

カーボンナノチューブの特性に関する大規模シミュレーション

発表資料 (1.2MB)

1. プロジェクト名

カーボンナノチューブの特性に関する大規模シミュレーション

Large-scale simulation on the properties of carbon-nanotube

2. プロジェクト責任者名

手島 正吾 (高度情報科学技術研究機構)

Syogo Tejima

3. プロジェクトの目的

カーボンナノチューブ(以下, CNT)はナノテクノロジの基幹材であり, その特性把握, 産業応用は激しい国際競争となっている. 本研究は, 技術的に難しいナノスケー ル実験に代わり, 地球シミュレータを利用する大規模シミュレーションにより, 新奇ナノ構造体の諸特性を明らかにし, 新技術・産業分野であるエネルギー・環境・量子デバイスへ応用展開し, 且つ, 戦略的知的財産として, 我が国のナノテクノロジの国際競争力の維持確保を支援することを目的としている.

4. 今年度当初の計画

1 高精度化したダイヤモンド超伝導体の長時間フォノン振動計算とカーボンナノチューブ量子伝導計算

拡張した強結合近似分子動力学法による, 高精度化したダイヤモンド超伝導体の長時間フォノン振動計算とカーボンナノチューブ量子伝導計算

2 光学異性体化反応のシミュレーション

時間依存第一原理計算法による, 半導体CNTに内包した分子の光応答把握のための光学異性体化反応のシミュレーション

3 マッカイ構造体の電子状態計算

第一原理計算法による, マッカイ構造体の太陽電池応用, 水質浄化応用, 水素貯留材料応用などの可能性を見極めるための電子状態計算

5. 研究計画に沿った利用状況

研究計画ではナノ炭素シミュレーションを,

  • 1) 新エネルギー分野
  • 2) 環境分野
  • 3) 機能材料研究
  • 4) 電子デバイス実装
  • 5) 光反応・構造変化
  • 6) モデル開発
  • などに着目して, 研究開発目標を立てた.
    本年度は, 1) 及び 2) では, マッカイ結晶を利用したタンデム型半導体太陽電池に関し, ホウ素, 窒素ドープにおける半導体電子構造特性を得た. 3) 及び 4) では, コードの最適化により, 原子数の多い長尺ナノチューブ, グラフェンにおいて, 電子伝導の電極の影響を把握することができた. 5) では, ナノチューブ内の分子の光化学反応において, フェムト秒レーザーで効率よい反応を誘起させることが示せた. 6) では, 量子伝導シミュレーションにパデ近似を適用し,少ない積分点で高精度の計算を可能にした. 6 個の研究分野に対し, 本年度は4 つに着手し成果を得ることができた.

    6. 今年度得られた成果, および達成度

    成果

    1-1 昨年度開発した非平衡グリーン関数(NEGF)法を用いた量子伝導シミュレーションでは,電極の接合が弱い場合には膨大な計算時間を要することが判明した.この問題解決として,本年度はパデ近似による解析接続を適用し,少数の積分点でNEGFを高い精度で高速に求める計算手法を開発し,計算時間を3分の1程度に減らすことが可能となった. さらに, パデ近似を適用し,積分点数が無限となる極限での計算結果を推定する手法の開発にも成功した.

    1-2 量子伝導シミュレーションにおいて, 本年度は, 電極をカーボンナノチューブ両端の特定の軌道に接続させると階段状の電圧-電流特性が現れることを確認し, 新しいナノデバイス設計の提案ができた. また, グラフェン平面の2点の電極間の電流が2点間を直線に流れるほかに, 迂回して流れることが明らかになり, グラフェンデバイス基盤に有用な情報が得られた.

    2-1 昨年度は, カーボンナノチューブと光の相互作用の第一原理計算シミュレーションを行い, ナノチューブ内部への光電場浸透を明らかにした. これにより, ナノ チューブに内包された分子を光励起でき, 効率の良い光学異性体化反応を起こす可能性を明らかにした. 本年度は, 内包された分子にナノチューブの外よりフェムト秒レーザーを照射することで光化学反応を誘起させることができることを明らかにし, ナノチューブ内部は光電場を増幅できるデバイス機能を持つことが明らかにした.

    3 昨年度は, 格子サイズの異なるマッカイ結晶では特異なエネルギーギャップが現れ, 多接合型半導体太陽電池への応用が期待できることを示した. 本年度は, ナノ炭素からなるマッカイ結晶においてもホウ素/窒素をドープし, ホール/電子が発生することを電子状態計算から明らかにし, マッカイ結晶太陽電池におけるキャリア性を把握した.

    達成度

    ※年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください. 複数の目標があった場合は, それぞれについて達成度を数値で示してください.

    • [1]ダイヤモンド超伝導体, カーボンナノチューブ量子伝導シミュレーション 70%
    • [2]光学異性体化反応シミュレーション 100%
    • [3]マッカイ構造体の電子状態計算 70%

    7. 計算機資源の利用状況

    計算機資源の利用状況

    ※計画的に計算機資源を利用できているか, 状況を記載してください.

    EX-CRTMDコードを用いたカーボンナノチューブの量子伝導に関する計算では, リソース全体の1/3を計画. 6月に予定の約半分を利用した. 現在, 予定の2割程度を残しているが要求通り消費する予定である.

    TDFTコードを用いた光学異性体反応の計算では, リソース全体の1/3を計画し, 6月に予定の半分を利用. 現在, 予定の2割程度を残すが, 要求どおりの消費予定である. 国際会議における対応のために5,6月及びコードが最適化されたが12月のおいて計算が集中した. 通年では要求どおりの使用量を消費する予定である.

    チューニングによる成果

    ※ベクトル化, 並列化チューニング等, 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください.

    EX-CRTMDコードを用いたカーボンナノチューブの量子伝導に関する計算では, 高精度計算には多くの分点を必要とした. パデ近似を適用し, ベクトル化, 並列化のチューニングをした結果, 計算量を1/3に減らす効果を得ることができた.