地球温暖化予測研究のための高精度気候モデルの開発研究
Development of a high-quality climate model for global warming projection study
野田 彰 (独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境変動領域 地球温暖化予測研究プログラム)
Akira Noda
本研究は, 平成20年度までの地球シミュレータ共同研究プロジェクト「気候システム研究のための高精度大気・海洋・陸面結合大循環モデルの開発」を継続するものである. 当時のプロジェクトでは, 雲を直接解像する全球雲解像像大気モデルならびに中規模渦を直接解像する全球渦解像海洋モデルの開発を含めていたが, 今回は研究の対象を絞り, 温暖化予測のための各種物理モデルの開発を進めながら, 地球環境の変動メカニズムの解明のための研究を展開する
上記プロジェクトの目的を達成するために, 以下の研究開発を行う(複数年計画).
温暖化予測実験のための海氷モデルや凍土モデルを開発する. 寒冷圏に関わるモデルの重要性は年々高まっており, これらを地球シミュレータ上で開発されてきた大気・海洋・陸面結合大循環モデル(CCSR/NIES/FRCGC大気海洋陸面結合大循環モデル:MIROC)に組込み, 気候システムにおける熱や水の循環をより精密に再現できるようにする. 氷床モデル開発はCCSR および JAMSTEC で開発されてきた IcIES を高解像度化するとともに, 今年度からは高解像度氷床モデル開発に着手し, それを用いて温暖化実験を行い南極氷床やグリーンランド氷床の応答の再現を目指す.
MIROCに含まれる, 気候感度に影響を与える雲・降水システム, 放射, 積雪などの物理過程を, 観測データや雲解像モデルとの比較を行いながら, 改良する. その他の大気, 陸面, 海洋の物理スキームについても同様のアプローチにより改良する. 海洋モデルの物理スキームに関しては中規模渦のパラメタリゼーションである層厚拡散法を高度化する. 層厚拡散係数を, 現在の定数値を用いる方法に換えて予報的に評価するスキームを導入する. この新しいスキームの有効性を観測データと比較しながら検証する. また海洋モデルの時間積分法については現在のリープ・フロッグ法を, より計算効率の高いスタガード時間積分法に改良する.
開発したモデルが温暖化予測においてどれ程の気候感度があるか調査する.
さらに, 新・旧バージョンのMIROCを用いて, 古気候の再現や, 季節的な気候状態の再現に重要と考えられる成層圏の波動が温暖化によってどのように変化するかなど, 地球温暖化予測にとって基礎的・新規性のある研究テーマに取り組み, 開発する大循環モデルの気候モデルとしての信頼性を高める. また昨年度の継続として, QBOの再現と地球温暖化の影響をより詳細に解析する. 解像度依存性を調査するために, より高解像度のモデルを用いた実験を行う. 古気候シミュレーションは, 融氷期のシミュレーションを推し進め, 気候変化のメカニズムを解析する.
氷床モデルはグリーンランドの高解像度実験を実施した. 水平解像度5km までであれば非並列化モデルでも比較的実用に耐えることが分かったが, 来年度以降のさらに高解像度のモデルを用いた実験のため, 今後の並列化が必須である.
海洋モデルに関しては, 海洋渦が混合層に与える影響をパラメタライズしてモデルに組み込んだ. 組み込まれた海洋モデルを用いて, 地球シミュレータ上で気候再現実験を実施し, 計算結果を観測データと比較することによりパラメタライズのパフォーマンスを評価した. また海洋モデルの時間積分法を改良して, 地球シミュレータ上で気候再現実験を実施し, 計算効率の向上を確認した. 陸面過程に関しては, 地形と植生の効果を考慮した積雪被覆率スキームを組み込んで, 長期積分が安定して行えるようになった. 今後, 積雪分布パラメタへの依存性を調査する.
・QBO に関連した実験では重力波パラメタリゼーションを用いずともQBO が再現可能な気候モデルを長期積分し, 地球温暖化に伴う重力波活動と QBOの変化を調べた. 温暖化に伴って波動励起と赤道上昇流は共に増えるが, QBOが存在する高度では赤道上昇流の効果が上回る. その結果, 温暖化に伴ってQBO の周期は伸び, 振幅は弱まり, 位相が下部成層圏まで下り難くなる事が判明した. また成層圏を突き抜ける位相速度の速い重力波が多く励起され, 波動を介した運動量輸送により成層圏界面~中間圏の大規模循環場が変調を受ける事が示唆された. この特徴は温暖化に伴って周期の短い降水頻度・強度が増える事に関連していた. 以上の成果を1本の論文としてまとめ, 受理された. その他にも, 高解像度気候モデルを用いた成層圏波動・循環場に関する解析結果を複数の論文としてまとめた. 地球温暖化や積雲対流パラメタリゼーションの違いによるQBOの依存を調べる為, 複数の感度実験を行い, 予定されていた計算の大部分が完了した.
・融氷期のシミュレーションと解析では, 氷期-間氷期の間に考えられるさまざまな時代を想定したシミュレーションを行った. また, 氷期状態を再現するために様々なテストを行い, さまざまな海洋循環場の状態を得た. これらを解析した結果, 現在気候の海水温の再現性と氷期における海洋循環場の再現性の関係性が示唆された. また, 氷床が融けていく際に起こると考えられる, 淡水が海洋に流入するイベントを想定したシミュレーションと解析を推進した. いずれも論文の準備中である. 予定した計算のほとんどを終えた.
年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください.複数の目標があった場合は,それぞれについて達成度を数値で示してください.
※計画的に計算機資源を利用できているか, 状況を記載してください.
年度末に利用が集中しないように, プロジェクト全体で計画的に前倒して利用した.
※ベクトル化, 並列化チューニング等, 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください.
既に, ベクトル化, 並列化を十分に実施してあるモデルを用いているので, 今年度は特にチューニングは実施していない。