平成23年度 地球シミュレータ利用報告会

四次元変分法データ同化システムを用いた海洋環境再現実験及び、観測システム研究のための感度解析・シミュレーション実験

発表資料 (1.2MB)

1. プロジェクト名

四次元変分法データ同化システムを用いた海洋環境再現実験及び、観測システム研究のための感度解析・シミュレーション実験

Improved Ocean State Estimation and Sensitivity Analysis Experiments for the Optimal Observing System, by Using a 4D-VAR Ocean Data Assimilation system.

2. プロジェクト責任者名

増田 周平 (海洋研究開発機構 地球環境変動領域 海洋環境変動研究プログラム)

Shuhei Masuda

3. プロジェクトの目的

多様な海洋観測データを四次元変分法データ同化手法を介して海洋大循環モデルに同化するシステムを用い、海洋環境統合データセットを作成する。作成したデータセットの力学的整合性を最大限活かした気候変動研究を推進する。また、海洋同化システムを応用した結合同化・予報実験、アジョイント感度解析実験を実施することで、気候変動研究、海洋観測システム研究を行う。用いるモデルは前年度までに研究開発された全層海洋データ同化システムおよび結合データ同化システムである。

4. 今年度当初の計画

1) 海洋環境再現実験

(独)海洋研究開発機構で研究開発された四次元変分法海洋データ同化システムを用い、多様な海洋観測データを同化する。8-50年程度の同化ウィンドウで環境再現実験を行うとともに熱・物質輸送量などを診断し、観測事実との整合性などを評価する。

2) データ解析

データ同化手法を用いた気候変動研究。得られた海洋環境統合データセットを用いて再現された季節―経年変動に関する力学解析を行う。また、結合同化システムを用いた同化実験、ハインドキャスト実験を実施するとともに、必要に応じて対照実験としての同化・シミュレーション実験を行い、気候変動研究に資する。

3) 観測システム研究

アジョイント感度解析(同化システムを運用した逆解析)実験を実施し、その結果に基づき観測システム研究を行う。最適な観測システム網を提案するべく観測システムシミュレーション実験などを実施する。

5. 研究計画に沿った利用状況

1) 海洋環境再現実験

1957-2006年の期間で実施していた長期海洋環境再現実験を2009年まで延長し53年間の海洋物理環境の再現実験を行った。また、それに対応する生物化学変数の診断実験も開始した。昨年度に引き続き機構内で編集されたArgoフロートデータ準拠の亜表層2次元流速場を同化する海洋環境再現実験を実施した。その際、最近の観測データまで取り込めるよう同化ウィンドウを2000-2008年と9年間に延長し、イテレーション計算を行った。また、機構内で取得された観測データや気象庁・気象研プロダクトとの相互比較の共同研究に参画するため時間各の短い出力実験などを実施した。

2) データ解析

昨年度に引き続き得られた海洋環境統合データセットを用いて力学解析、観測との比較研究、物質輸送量の評価、予報精度向上研究など、機構内部で部署横断的に解析研究を行った。特に物質輸送の評価には新たなアプローチとしてトレーサー実験環境を導入しテスト実験を実施した。

3) 観測システム研究

太平洋全域を対象としたアジョイント感度解析実験を行った。今年度は緯度経度10度x20度ごとに100m深と1000m深でケーススタディを行い、全球的な水温変化の感度を調べた。

6. 今年度得られた成果、 および達成度

成果

四次元変分法海洋同化システムをもちいて高精度な海洋環境再現データを作成するとともにこれらのデータセットを用い、気候変動研究を推進した。具体的には全球著熱量変化の診断、南極周極流の変動評価、観測された底層CFC分布の力学診断、および生物化学トレーサーの全球分布再現などを実施した。どれも地球規模での海洋環境変動として注目されているトピックであり、成果の一部は国内外の学会や原著論文等で公表されている。観測システム研究では太平洋全域での水温変化のアジョイント感度解析を通して深度や時間スケールごとの感度マップを作成した。また、結合データ同化システムから得られた初期値を用いたシミュレーション実験を行い予報精度向上にむけたいくつかの知見を得た。

達成度

(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください。複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で示してください。)

1) 海洋環境再現実験 : 80%
 2) データ解析 : 90%
 3) 観測システム研究 : 75%

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

コード開発、最適化等は昨年度のシステムを踏襲しているためスムーズに進めることができたが、上半期は震災対応等のため人的・物的リソースが不安定で計画的な資源利用が適わなかった。下半期に入ってからは順調に資源を利用できており、当初計画の数値実験のほとんどを年度内に完了できる状況である。

チューニングによる成果

(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)

今年度はメインの同化システムについての大幅なアップデートはなかったので昨年度の最適化されたコードで運用している。新たに導入した生物化学モデルやトレーサーモデルなどについては専任のSEに依頼し、ベクトル化、並列化チューニングを行うことで計算機資源の有効利用に努めた。

計画的に利用できていない場合、 その理由

緊急実験の要請や電力供給の問題から特に年度前半は当初計画に沿って資源利用できる状況になかった。

8. 新聞、雑誌での掲載記事

プレスリリース
  海洋深層の貯熱量が全球広域で増加 -高精度観測と海洋同化データにより海洋深層の貯熱量長期変動の把握へ前進-
 タイトル:
  Deep ocean heat-content changes estimated from observation and reanalysis product and their influence on sea level change
 著者名:
  纐纈 慎也、土居 知将、河野 健、増田 周平、杉浦 望、佐々木 祐二、豊田 隆寛、五十嵐 弘道、川合 義美、勝又 勝郎、内田 裕、深澤 理郎、淡路 敏之
 毎日新聞3/5朝刊2面掲載。