実地球環境でのマントル・コア活動の数値シミュレーション
Simulation Study on the Dynamics of the Mantle and Core in Earth-like Conditions
浜野 洋三 (海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)
Yozo Hamano
前年度に引きつづき、マントルとコアからなる地球内部システム全体の活動の実体解明を目的として、現在手にできるグローバルな観測量や、復元されている地球の変動史に合致する、より現実的なシミュレーションモデルを構築する。
具体的には、
1) コア対流と地磁気生成過程の高精度シミュレーション
2) プレートや大陸の移動を再現するマントル対流のシミュレーション
3) 地磁気変動によって地殻・マントル内に誘導される電磁場のシミュレーションにもとづく地球内部電気伝導度構造の推定を相互に参照しつつ進める。これらにより、地球内部の動的状態を把握し、将来的な変動の予測にもつなげる。
前年度までの計算コードの高解像度化・高精度化の成果をもとに、粘性をあらわす無次元数であるエクマン数をO(10-7)からO(10-8)、磁気プラントル数をO(10-1)からO(10-2)まで下げた大規模シミュレーションを系統的におこなう。空間解像度は、球関数展開256次から640次程度であり、磁気双極子の拡散時間程度の地磁気変動時系列を得るのに、1000から3000ノード時間を要する。マントルに有限の電気伝導度を与えた条件や、成層構造をとりうる条件でのケーススタディを実行する。長時間の積分によってコアのねじれ振動についてのデータを増やし詳細な解析をおこなう。またコア乱流のモデル化に関する基礎的な研究として、プラントル数・磁気プラントル数ともO(10-2)に下げた熱対流の数値実験をおこなう。
水平15kmの解像度でマントル全体を取り扱い、プレート的な挙動を起こすモデルの長時間積分で見つかっている大規模な変動に焦点を当てる。マントル遷移層に滞留したスラブは十億年スケールで崩落を繰り返し、その際にグローバルな活動の活発化が生じる。イベントの詳細な解析をおこない、プレートの運動方向などに見られる変化を調べて実際に復元されているプレート移動史との比較を実施する。
グローバルな電気伝導度構造推定をおこなうにあたって、表層の海陸分布が電磁誘導に与える効果を明らかにするために、高解像度のモデルを構築してチューニングを実施する。
コア対流においては、割当ノード時間を勘案して、球関数展開256次〜384次のモデルをもちいて、エクマン数10-6程度のパラメータ領域で、前年度と同様の規模の計算をおこなった。マントル対流においては、ケースをしぼって高解像度の長時間積分を行い、イベント解析が可能なデータセットを構築した。地殻・マントル電磁誘導については、計画的な利用はできなかった。
コアの磁気エネルギー密度/運動エネルギー密度比は1000程度と非常に大きいが、これまでそのようなエネルギー密度比を低い粘性パラメータで実現した研究はなかった。今回、エクマン数 4 x 10-6 という比較的低いパラメータ領域で、平均エネルギー密度比50を超す解を発見し、磁場の生成過程を詳細に分析した。回転系特有の、経度方向の波数が大きい流れ構造に加えて、磁場の影響を強く受けた、波数の小さい大規模流れ構造が発達するようすが再現された。
エクマン数 2.5 x 10-7、磁気プラントル数0.1まで下げたダイナモシミュレーションを系統的におこない、地磁気永年変化の発生メカニズムに関する研究をおこなった。数値解における磁気西方移動の伝搬速度の波数・緯度依存性をあきらかにした。また地磁気ジャークに似た磁場変動を見いだした。これらをもとに、地磁気変動の原因を議論し、東西方向の流れに対応するコアの回転角速度の緯度依存性(差分回転)によってコア内の大規模磁場がちぎれる、磁気リコネクションに似たプロセスが、地磁気ジャークの原因のひとつである可能性を指摘した。
コア乱流を理解するための基礎として、プラントル数0.025という、実際の液体金属と比較しうるパラメータ領域で熱対流の計算をおこなった。側壁の影響が小さい、アスペクト比の大きい系での、流れの時空間変動のレイリー数依存性を示し、ロール構造から等方的なセル構造への対流モードの遷移をあきらかにした。またこれらを室内実験のデータと比較した。
数億〜10億年程度の時間間隔で滞留スラブが大規模に崩落しマントルの活動が活発化するケースに着目して、50億年超の時間積分を実施した。スラブの崩落に伴って表面熱流量は時間的に大きく変動するのに対して、コア・マントル境界での熱流量の時間変化は小さいものにとどまることが分かった。地震波トモグラフィーとの比較とともに、可視化手法を工夫しつつイベント解析を進めているところである。
(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください。複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で示してください。)
1) コア対流 : 70%程度
前年度と同程度の粘性パラメータ領域での計算により、いくつかの新しい知見が得られたが、さらに低い粘性パラメータ領域の探索は成功しなかったため。
2) マントル対流 : 50%程度
コアからの熱流量の変動特性について新しい知見が得られたが、詳細なイベント解析は途上であるため。
3) 地殻・マントル電磁誘導 : 20%程度
地殻・マントル電磁誘導については高解像度化の途上であると考えられるため。
上半期において本格的な計算の実行が遅れ、全体として所期の使用量を下回り、割当の1/3程度を残しているが、これからの期間でほぼ使い切る見込みである。
(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)
本年度におこなった計算にもちいたプログラムはほぼ前年度までにチューニングをすませている。スペクトル変換法に基づくコア対流シミュレーションのコードは、一部コードの書き換えをおこない、球関数展開256次、シェビシェフ多項式展開、外核160次、内核64次のケースを16ノードで実行した場合、実効性能比30%近い性能を得ることができている。
上半期において電力事情の問題があったことと、地殻・マントル電磁誘導の計算においてコード開発が滞っていることが理由である。
該当なし。