平成23年度 地球シミュレータ利用報告会

新粘性制御法による超並列ビット演算流体シミュレーション手法の開発

発表資料 (4.4MB)

1. プロジェクト名

新粘性制御法による超並列ビット演算流体シミュレーション手法の開発

Development of a Fluid Simulation Approach by Massively Parallel Bits-operations with a New Viscosity Control Method

2. プロジェクト責任者名

松岡 浩 (東北大学 電気通信研究所)

Hiroshi Matsuoka

3. プロジェクトの目的

大規模並列ベクトル計算機上において高速計算性能を効率よく発揮できると考えられる“格子ガス法超並列計算手法”について、有限長円柱の後流に発生する3次元うずの数値シミュレーションを行い、既に先行研究で得られている実験結果やナビエ・ストークス解法によるシミュレーション結果等と比較することにより、実用的な大規模問題への適用可能性を評価する。 特に、これまで自主開発してきた超並列ビット演算による格子ガス法流体シミュレーションコードに対して、仮想粒子の衝突規則を変化させることによって格子点数を増やさずに流体粘性を変化させる新しい粘性制御法を組み込み、粘性が非常に小さい場合の高レイノルズ数(高Re数)大規模問題をどこまでシミュレーション可能かその限界を追求する。

4. 今年度当初の計画

超並列ビット演算法の計算効率向上

平成22年度完了分なので内容記述は省略。

有限長円柱後流の模擬計算確認 : 平成23年度に実施

流体実験やナビエ・ストークス解法による数値シミュレーション研究の蓄積が進んできた「有限長円柱の後流に発生する3次元渦」の模擬計算を行い、無矛盾を確認する。

新粘性制御法による高Re数状態の模擬 : 平成23年度及び24年度に実施

格子ガス法における仮想粒子の衝突規則を変化させることで格子点数を増加させずに高Re数化を実現できる新しい粘性制御法を組み込み、高Re数化の限界に挑戦する。

5. 研究計画に沿った利用状況

平成23年度は、上記4. に示した研究計画の2年度目であり、以下の利用を行った。

1) 有限長円柱後流の模擬計算確認

平成23年4月から地球シミュレータの利用を開始し、まずは、有限長円柱後流の模擬計算を効率よく行うため、当グループで自主開発中の格子ガス法シミュレーションコードの改良を進めた。その結果、23年6月に、128ノード(1024CPU)で約96.8%という高い並列化効率を得るに至った。しかし、23年5月及び6月の多数ノード利用において予想以上に試行錯誤を繰り返したため、6月末時点までに2,018ノード時間積、すなわち、23年度に割り当てられた利用可能資源量2600ノード時間積の約77.6%を費やしてしまった。このため、平成24年2月に高解像度の多数ノードによる確認計算を行う分を温存することとし、23年7月以降は、“地球シミュレータプロジェクト”とは別の制度を利用して東北大学のベクトル計算機SX-9を用い、中解像度の小数ノードによる長時間計算を実行した。
以上により、「有限長円柱の後流に発生する3次元渦」の模擬計算については、現時点で高解像度計算を除き、各種条件下における模擬計算を実行することができた。

新粘性制御法による高Re数状態の模擬

新しい粘性制御法のうち“多段2体衝突法”については、当該モデルを組み込んだコードを利用して、平成23年6月までにその効果を調べる試計算を完了した。もうひとつの新しい粘性制御法である“負粘性発現衝突法”については、基礎的な試計算をパソコンで実行した。また、流体粘性の制御効果を定量的に把握するための“時間相関係数モニタープログラム”の組込みに向けて、揺動散逸定理の計算式のプログラム化を進めたが、スパコン計算で相関係数の変化を比較対照するまでには至っていない。
以上、地球シミュレータの計画的な利用という観点からは、当初、予想以上にノード時間積を費やしてしまったが、現時点では、残り期間の研究に必要十分である。

6. 今年度得られた成果、 および達成度

成果

1) 有限長円柱後流の模擬計算確認

当グループで自主開発中の格子ガス法シミュレーションコードでは、個々の格子点に関する一連のデータ処理を1ビット幅で実行できる。このため、SX-9や地球シミュレータのベクトル処理プロセッサでは、1回のベクトル命令発行で、64ビット/ワード×256ワード/命令=16384ビット/命令のデータが処理されることから、16384個の格子点に係る計算を1CPUで並列パイプライン的に一括実行できる。このような多数の格子点に関する計算を同一のプロセッサさらには同一のノードで実行できることは、プロセッサ間通信またはノード間通信の相対的頻度を減らせる点でも有利である。本コードの並列化効率は、22年度に72ノード(576CPU)で約92.8%という値を得ていたが、23年度には128ノード(1024CPU)で約96.8%というさらに高い値にまで向上できた。また、有限長円柱の直径と長さをパラメータにして、いくつかの代表的なケースについて模擬計算を行い、Re数が数10程度の状態における後流の過渡変化を得ることができた。ただし、模擬条件の違い等から先行研究との詳細な比較は難しい。

2) 新粘性制御法による高Re数状態の模擬

流体粘性を小さい値に制御して高Re数状態を模擬できる新しい方法のひとつとして、平成22年度に“多段2体衝突法”を考案し、既に格子ガス法シミュレーションコードに組み込んでおり、23年度はこの効果を詳細に調べた。この結果、“多段2体衝突法”を適用することで、格子点を増やすことなく、つまり、計算時間を増加させることなしに、双子渦が発生するRe数領域から、カルマン渦が発生するRe数領域までであれば、シミュレーション可能なRe数を上げることが可能であることを詳細に再確認できた。さらに高いRe数状態を模擬できる新しい方法として、“負粘性発現衝突法”の可能性を探っており、その第1開発ステップとして「静止流体における3次元渦の自律的発生」をパソコン上で実現できた。ただし、実用的な方法にまで開発できるか否かは、24年度も含めた今後の開発結果次第であり、現時点の見通しは不透明である。

達成度

(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください。複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で示してください。)

1) 有限長円柱後流の模擬計算確認 : 90%

典型的なケースについて、中解像度の模擬計算で必要なデータの取得を完了している。ただし、高解像度の模擬計算を平成24年2月実施予定に残している。

2) 新粘性制御法による高Re数状態の模擬 : 80%

新粘性制御法のうち、“多段2体衝突法”については、その効果を調べることまで完了した。“負粘性発現衝突法”については、基礎的な第1開発ステップを確認した。また、これらの方法によって変化する粘性を定量的に把握する“時間相関係数モニタープログラム”の組込みは、現時点で未達成である。ただし、本課題の完了予定は平成24年度であり、平成23年度達成分からみた評価としては、特に大きな遅れはない。

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

平成23年末までに、グループ全体で2,018ノード時間積の利用(23年度の利用可能資源量2600ノード時間積の約77.6%)を終えている。また、上記6に記載したとおり、現時点で残りの期間の研究を計画的に進めるうえで支障はなく順調に推移している。

チューニングによる成果

(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)

前述のとおり、128ノード(1024CPU)で約96.8%という高い並列化効率を達成できた。

計画的に利用できていない場合、その理由

当初、多数ノードによる計算実行でプログラムミスが重なり、不必要なノード時間積を消費したが、23年末の時点では、その後の計画的な利用に支障は生じていない。

8. 新聞、雑誌での掲載記事

該当なし。