実大鉄筋コンクリ-ト造建物の振動台実験の精密・詳細シミュレ-ション解析システムの開発
Developments of Sophisticated Simulation Analysis Method of Actual Reinforced Concrete Building by Shaking Table Test
河西 良幸 (前橋工科大学 大学院工学研究科)
Yoshiyuki Kasai
自動車等の衝突解析に有効性を発揮している陽解法の衝撃解析コードを建物の地震応答解析に応用し、阪神淡路大震災で多発し未解明の鉄筋コンクリート建物の崩壊現象のコンピュータ解析を可能にする研究を行う。そのため、E-ディフェンスで行われた実大鉄筋コンクリート造6階建物の崩壊に近い現象に至った振動台実験のシミュレーション解析を行う。
本研究により、数値振動台として各種構造物の実大振動台実験等にかかる膨大な費用の軽減と効率化が可能となる。
1) 実大鉄筋コンクリ-ト造6階建物に関わる震度6強相当の振動台実験での建物倒壊状況の結果を例に、鉄筋、コンクリ-トの精密な構成則を設定し、衝撃解析プログラムを応用して精密・詳細なシミュレ-ション解析システムを構築し、破壊状況を可視化して確認可能にする。
2) 上記解析システムをベースにして、数値振動実験をシミュレ-ション解析システム上で行えるように関連する数値構成則の詳細構築と検討・改善を平成22年度に継続して発展させる。これにより、建物の重要な因子を変化させた数値実験により耐震性の確認が可能となる。この開発により、今後必要な実大実験等にかかる膨大な費用の軽減を図ることが可能になる。
(1) 地盤上の実大鉄筋コンクリ-ト造6階建物の地震応答解析
(2) 耐震補強有・無の鉄筋コンクリート造3階建物振動台実験のシミュレーション解析
(3) 杭支持された鉄筋コンクリート造24階建物の地震応答解析
(4) 長周期パルス地震に対する免震建物と周辺擁壁との衝突を考慮した地震応答解析
(1) 実大鉄筋コンクリ-ト造6階建物の振動台実験のシミュレーション解析では、加振履歴を考慮することにより実験結果を良くシミュレートする解析結果を得ることができた。また、その解析モデルに振動実験では加力不可能な1.2倍、1.5倍、2.0倍の大きさの地震を入力し、1.5倍では倒壊せず、2.0倍では倒壊する可能性があるとの建物の耐震余裕度を把握することができた。
(2) 振動台実験での実大鉄筋コンクリ-ト造6階建物モデルを、地盤上に設置した地盤建物連成モデルの地震応答解析を実施することができた。工学基盤上に層厚10mの地盤を設定し、工学基盤から表層迄の増幅を考慮した地震動を柱脚固定モデルに入力した地震応答に比べて、地盤下(基盤上)に地震動を入力した地盤建物連成モデルの建物の応答は3割程度小さな結果が得られた。
(3) 耐震補強有・無の鉄筋コンクリート造3階建物の振動台実験のシミュレーション解析により、地震入力に対する建物全体としての動的な耐震補強効果を把握することができ、従来の静的評価に基づく耐震性能評価の妥当性を確認することができた。
(4) 杭支持された鉄筋コンクリート造24階建物の地震応答解析を行って、地盤・杭・建物連成の大規模な鉄筋コンクリート造建物の地震応答解析を実施することができた。このモデルは、鉄筋、コンクリートの有限要素メッシュを別々に作成する手法を用いることにより、大規模モデル作成にかかる作業量を大幅に減らすことができた。また、コンクリートの構成則についても検討を行い、新たな構成則を採用しての解析が実行可能となった。よって本研究で開発されたシステムは、今後も最新の研究成果を反映することが可能であり、柔軟性に富んだシステムとすることができた。
(5) 近年直下型地震で観測されるようになった長周期パルス地震に対する免震建物と、周辺擁壁との衝突を考慮した建物と擁壁・地盤連成の3次元FEMモデルの水平2方向・上 下方向の3方向入力による地震応答解析を実施することができた。建物と擁壁の衝突により、あたかも柔道における「送り足払い」のような現象が生じて建物が回転し、免震装置の性能を低下させる引張力の発生、また自動車衝突時における乗員の「むち打ち」現象のように建物上部に高周波の大きな加速度の発生など衝突に伴う現象が観察され、今後の対策が望まれる。
(6) 2011年9月17-18日に兵庫県立大学で開催された「次世代防災シミュレーションと 構造安全性に関する国際シンポジウム」において前記5. 1) 及び2) (3), (4)の研究論文を発表し、注目を浴びた。
(7) 鉄筋コンクリート造建物の地震応答解析に関しては、すべての鉄筋の配置を考慮した精密なモデル化を行い、地盤連成や衝突現象を考慮した3方向入力の地震応答解析も 可能となり、「数値振動台」と呼び得るレベルに近づいたと評価する。また、前記(2)④、及び、上記(5)で述べた衝突振動は、慣性力・弾塑性力・重力という性質の異なる3つの力が関係した非線形問題であり、縮尺模型の振動台実験は相似則の観点から実施が難しく、また、実大模型の振動台実験は建物と擁壁・地盤連成の大規模模型の製作が困難であることと、実規模の加振力を与えての実験が難しく、本解析で実施したような実大精密モデルの数値シミュレーションが最も有力な評価手法であると考えられる。
概ね100%
ほぼ計画的に計算機資源を利用できた。
そのため、ESC情報システム部からのお願いに従い、昨年12月に約20%程度(600資源時間)を返上することにした。
(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)
計算機スピード向上の要請をいただいたが、ソフト開発会社からの了承が得られず実施できなかった。
想定外の事情による担当者の多忙
2011年6月14日 : 群馬建設新聞「前橋工科大学、RC建物の詳細・精密モデルの地震応答解析に成功」