平成23年度 地球シミュレータ利用報告会

脳動脈瘤等の生体系非定常流体構造連成解析法開発プロジェクト

発表資料 (788KB)

1. プロジェクト名

脳動脈瘤等の生体系非定常流体構造連成解析法開発プロジェクト

Research Project of Biomedical Unsteady Fluid-structure Interaction Analysis for Cerebral Aneurysm and Other Organs

2. プロジェクト責任者名

田沼 唯士 (帝京大学 ジョイントプログラムセンター)

Tadashi Tanuma

3. プロジェクトの目的

脳血管疾患の入院受療率は全疾患中で1位(厚労省平成17年統計)となっている。日本人の死亡率において脳血管疾患は男性で4位、女性で3位(厚労省平成21年統計)となっており、診断精度の向上と死亡率低減に向けた対策に早期に取り組むべき疾患と言える。本プロジェクトでは、心臓の脈動に伴う血流の時間変動に加え、血管流路の3次元的な曲率や分岐及び動脈瘤付近での急激な速度変動等によって生じる渦流などに起因する、脈動より高周期の非定常流れが重畳する場合の血流の流動特性及び血管と動脈瘤壁の応力分布に及ぼす影響について、数値流体力学と解析構造力学を用いて評価する。これにより、脳動脈瘤の発生と増大、破裂のプロセスを時間スケールのスペクトルごとに評価して、現象のメカニズムを定量的に明らかにする。更に他の生体器官の流体関連挙動解析への適用も試みる。

4. 今年度当初の計画

1) 脳動脈瘤症例の選定、医用画像からの解析対象部位情報の抽出と解析モデル作成
2) 流体解析格子作成、境界条件作成、定常及び非定常流体解析

流体解析格子作成と流体解析は鳥居ら1)大島ら2)shiojimaら3)の方法を参考にする。定常解析結果より求まる圧力分布と速度分布を用い、血管及び動脈瘤のFlow Pathを複数部位に分割し局所流線上の運動量の定理及び壁面近傍の速度勾配より血管壁に作用する流体力(壁面接線応力と法線応力)を求める。

3) 動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析(有限要素法)

前項の流体解析の結果を境界条件として動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析を行う。血管系の力学的支持条件とは、佐藤ら4)の研究を参考に、臨床的な観察結果から拘束条件を設定する。

4) 流体構造連成解析の試行 定常及び非定常にて流体構造連成解析の試計算を行う。

5. 研究計画に沿った利用状況

1) 脳動脈瘤症例の選定、医用画像からの解析対象部位情報の抽出と解析モデル作成

脳動脈瘤症例及び呼吸器系症例医療画像データの選定

2) 流体解析格子作成、境界条件作成、定常及び非定常流体解析

計画 1,040ノード時間 12月までの実績0ノード時間 

3) 動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析(有限要素法)

計画 520ノード時間 12月までの実績 49ノード時間(2月までに520時間使用予定)

4) 流体構造連成解析の試行 定常及び非定常にて流体構造連成解析の試計算を行う。

計画 1,040ノード時間 12月までの実績0ノード時間(2月までに1,040ノード時間使用予定)

6. 今年度得られた成果、 および達成度

成果

1) 脳動脈瘤症例の選定、医用画像からの解析対象部位情報の抽出と解析モデル作成

精度の高い流体及び構造解析を行うために必要な高精細なMRI及びCTデータを有する脳動脈瘤312症例の医療画像を選定。脳神経外科専門医と相談の上、今年度の解析対象として典型的な部位に発生した大型脳動脈瘤1例を選定し、解析モデルを作成した。計画の100%達成。

2) 流体解析格子作成、境界条件作成、定常及び非定常流体解析

予備計算用格子(177382 cells)、一次解析用中精細格子(1986787 cells)を作成した。
 医師と相談して、平均的な最大血圧時の流入条件を用いて境界条件を設定した。
 予備流体解析及び一次流体解析を完了して、医師のレビューを受け、外科手術中に血管が透けて目視出来る流動状態に近い解析結果を得たことを確認した。ただし、ES上での本格解析に入るためのソルバーの移植が中断しており、今年度の流体解析の達成度は50%の見込み。

3) 動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析(有限要素法)

前項の流体解析の結果を境界条件として動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析を行っている。脳動脈血管系の細部構造を表現するために格子総数は5,0000,000接点まで増やす。ES上での解析が進んでおり、2月中旬に計画の100%達成見込み。

4) 流体構造連成解析の試行

定常及び非定常にて流体構造連成解析の試計算を行う。今年度は流体解析をES上で実行できないため、連成解析はファイル渡しにて手動で実行。計画の30%達成見込み。

達成度

(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください。複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で示してください。)

1) 脳動脈瘤症例の選定、医用画像からの解析対象部位情報の抽出と解析モデル作成 : 100%

2) 流体解析格子作成、境界条件作成、定常及び非定常流体解析 : 50%

3) 動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析(有限要素法) : 100%

4) 流体構造連成解析の試行 定常及び非定常にて流体構造連成解析の試計算を行う。 : 30%

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

1) 脳動脈瘤症例及び呼吸器系症例医療画像データの選定
2) 流体解析格子作成、境界条件作成、定常及び非定常流体解析

計画 1,040ノード時間 12月までの実績0ノード時間

3) 動脈瘤周辺の血管系の単独構造解析(有限要素法) 

計画 520ノード時間 12月までの実績 49ノード時間(2月までに520時間使用予定)

4) 流体構造連成解析の試行(脳動脈瘤と吸気流解析の合計)

計画 1,040ノード時間 12月までの実績0ノード時間(2月までに1,040ノード時間使用予定)

チューニングによる成果

(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)

FrontISTRの評価解析(既存の解析結果がある解析格子を用いたテスト計算)を実施(4CPUにてベクトル演算率92.49%)

計画的に利用できていない場合、その理由

当初予定した流体解析コード(東北大学コード、ES上にインストール済み)用の脳動脈瘤内部の解析格子生成の難易度が予想以上に高く、流体解析コードを市販コード(Fine/Hexa)に変更したため、中精細格子までは外部計算機で実行した。2012年4月までにはES上で実行可能な流体解析コードを導入する。

8. 新聞、雑誌での掲載記事

該当なし。