地球環境変化に伴う生態系変動の診断と予測に関する研究
Study on the Diagnostics and Projection of Ecosystem Change Associated with Global Change
岸 道郎 (海洋研究開発機構 地球環境変動領域 物質循環研究プログラム)
Michio Kishi
空間解像度や複雑さの異なる複数の海洋生態系モデル、海洋大循環モデルを用いて、現在の気候条件における生態系変動再現実験、及び、温暖化気候における将来予測実験を行う。これら実験を通して、
今年度は、OFESによる高解像度の優位性を生かし、物理変動が生態系・物質循環に及ぼす影響に着目した研究を進め、また、革新プログラムによる現在気候再現、温暖化気候予測研究の進展を受け、海洋生態系変動実験を実施する。さらに、北極海を対象とした領域海洋生態系モデルの開発にも着手する。
引き続き、OFESモデル(1/10度)による化学トレーサー(CFCs, 137Cs等)や生態系の変動過程を、メソスケール(数百km)からサブメソスケール(数十km)の海洋現象に対する生態系の応答を中心に調べるとともに、海氷過程を含む全球OFESモデル(1/2~1/4度)をベースに、化学トレーサーに加え、生態系、栄養塩循環を含む物質循環モデルの開発を進める。特に北太平洋における観測データを用いて、これまでのモデルの改良、生態系・物質循環に関するパラメータ依存性を調べる。
COCO-NEMURO, COCO-MEMモデルをベースとして、海域による海洋生態系の違いや卓越種の再現などを目指し、パラメータ変更やモデル構成の変更を行いながら数値実験を実施し、海洋生態系モデルの改善を図るとともに、生態系変動のプロセスを研究する。平成22年度に引き続きMAREMIP Phase1に参画・連携し相互比較解析を進め、IPCC第五次報告書に貢献する。さらに革新プログラムとの協力によりオフライン版MEMモデルを用いて現在~温暖化気候における生態系変動を予測するためのモデル開発・改良を、数値実験を通して実施する。
既存の海氷海洋結合モデルCOCOに新たに開発する北極海仕様の生態系モデル(Arctic Marine Ecosystem Model)を組込み、海氷縁後退に伴う海洋生態系の応答を物理的側面と生物化学的側面の両方から明らかにする。北極海全域を対象に解像度約25kmのモデルで年々変動実験を行い、海氷縁後退が極域低次生態系に及ぼす影響を調べる。さらに、西部北極海を対象とした渦解像度(約2.5km)モデルにより、陸棚海盆間の渦輸送が生物生産にどのようなインパクトを持つかを明らかにする。また進捗状況により、低次生産だけでなく、高緯度海域における海洋酸性化やサケの回遊経路の変化などに取り組む。
OFES-NPZDモデルによる数値実験結果の解析を進めるとともに、海氷過程を含む全球OFESモデル(1/2~1/4度)をベースに、化学トレーサーに加え、生態系、栄養塩循環を含む物質循環モデルの開発を進めた。
海洋生態系モデルの国際的な相互比較プロジェクトMAREMIP(MARine Ecosystem Model Intercomparison Project)に昨年度に引き続き参画し、Phase1として1985年から2100年までの地球温暖化長期シミュレーションを進めている。
北極海の海氷縁後退に伴う海洋生態系の応答を物理的側面と生物化学的側面の両方から明らかにするために、北極海を対象とした海洋生態系モデルの開発を行った。
全球高解像度海洋モデル(OFES)を用いた生態系実験の結果から、東部赤道太平洋域における栄養塩及びクロロフィル分布の経年変動解析を行い、ENSOに伴う海洋環境の変化が大きく影響することをモデルで示すことができた。海氷過程を含む全球OFESモデルをベースに、化学トレーサーに加え、生態系、栄養塩循環を含む物質循環モデルの開発に着手した。
MAREMIPによるこれまでの実験結果の相互比較、現場観測に基づくデータ(Hirata et al., 2011)との比較を通じて、植物プランクトンの種間競争のメカニズムの解明に取り組んだ。その結果、鍵となる生物地球化学過程を同定し、今後重要となる観測の提言に繋がった。また2011年6月から始まったPhase1の中で、新たな生態系モデルMEM(Shigemitsu et al., submitted:鉄循環と動的最適栄養塩取り込み過程を導入し、二種の沈降粒子と凝集過程により沈降過程を改良)を開発し、1985年から2100年までの地球温暖化実験に着手した。
渦解像海氷海洋結合物理モデルCOCOに低次生態系モデルNEMUROを結合させ、新たに地球シミュレータにて実装した。これまでに西部北極海における植物プランクトンブルームの主要な時空間変動特性の再現に成功し、陸棚海盆境界域で生成される暖水渦が基礎生産に及ぼす影響を明らかにした。
(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください。複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で示してください。)
(i) 高解像度海洋大循環モデルを用いた海洋生態系・物質循環研究 25%
(ii) 海洋生態系プロセスモデリング 75%
(iii) 北極海を対象とした海洋生態系モデルの開発と北極気候システム研究 80%
13,000ノード時間の申請に対して、約4,300ノード時間利用(成果概要提出時)し、利用率は、3割程度。
(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)
該当なし。
モデルのセットアップ及び夏場の節電による影響等により、ジョブ投入が計画通り進まなかったが、年度内にほぼ申請通りの計算をする予定である。
該当なし。