平成23年度 地球シミュレータ利用報告会

渦解像可能な領域大気モデルを用いた深い対流のシミュレーションとその検証

発表資料 (2.5MB)

1. プロジェクト名

渦解像可能な領域大気モデルを用いた深い対流のシミュレーションとその検証

Simulation and Verification of Tropical Deep Convective Clouds Using Eddy-permitting Regional Atmospheric Models

2. プロジェクト責任者名

中村 晃三 (海洋研究開発機構 地球環境変動領域 次世代モデル研究プログラム)

Kozo Nakamura

3. プロジェクトの目的

現在の多くのGCMでは、熱帯域における深い対流活動の空間構造や日変化の位相の再現性の低さが指摘されている。本課題では熱帯域での対流活動の中でも、個々の対流の振る舞いや海陸風・山谷風などの局地循環によって駆動される対流活動などの基礎的な現象の把握及び解明を目指し、渦解像可能な領域大気モデルを用いて再現実験・感度実験・観測データとの比較・検証を行う。また、領域モデルによるデータ同化手法を用いた解析研究に取り組み、領域境界値の精度向上を目指す。更に、深い対流の乱流運動を含む詳細な振舞いを陽に計算する大渦解像シミュレーション(LES)データを活用することで領域気候モデルの高精度化を行う。そして、熱帯域の深い対流を主としたLESによる詳細なデータを基に、領域気候モデルの対流活動に関わる再現性向上を図る。

4. 今年度当初の計画

上半期では、LESに対応した領域版NICAMの開発を行うと同時に、既存のモデルやNICAMにおいても可能な計算負荷の小さな高解像度実験(例えば、小惑星実験等)を進め、数値安定性や雲物理過程に関する基礎的なデータの取得を進め、また、既存の領域気候モデルやストレッチ版NICAMを用いた熱帯海洋大陸周辺域を対象とした特定年の大規模擾乱や熱帯低気圧などの擾乱が顕著でない大規模擾乱の影響の少ない期間を対象として1ヶ月程度の期間を対象とした再現実験を行い、再現性の検証などの基礎的なデータを収集する。  そして、下半期では開発した領域版NICAMによるLESによる熱帯洋上等を想定した深い対流雲の再現及び、海洋大陸周辺域で起こる典型的な日変化を伴う対流活動の再現実験を行う。更に、観測との比較・検証では、LETKFをNICAMベースで導入し、1~2週間程度の期間で解析を試みる。

5. 研究計画に沿った利用状況度

本プロジェクトは、渦解像可能な領域大気モデルの利用とその高精度化をめざしており、「研究計画」には観測と比較した実験やその検証などを含め多くの課題を掲げた。実際に研究が始まると、メンバーの移動など様々な問題が発生したが、本プロジェクトの中心課題である「領域版NICAMの開発」を中心とし、以下のような課題を実行できた。

1) 球面座標系領域版NICAMの開発および試験計算

現在までのところ、この課題ではS系によるチューニングと実験のみ。

2) LESに対応した平面座標系領域版NICAMの開発および試験計算

今年度開発した平板座標系NICAMを用いて、典型的な熱帯対流系のシミュレーションを行った。その中で対流活動の励起や安定な積分のための数値パラメータの設定に関わる試験を行った。これらの課題推進のため2011年12月現在までに98%のES計算資源を消化している。

雲微物理モデルの改良

現在までのところ、この課題ではS系によるチューニングと実験のみ。

6. 今年度得られた成果、 および達成度

成果

1) 球面座標系領域版NICAMの開発および試験計算

研究計画に則り、従来の全球版NICAMをシュミット変換によって一部の領域のみを高解像度とした実験を進めた。また、昨年度は浅水方程式系モデルで検証を行っていた領域版NICAMのプロトタイプが完成した。全球版NICAMでは全球を10枚の菱形で覆っているが、領域版NICAMではこのうち1つの菱形のみを計算対象とすることが出来る。
 領域版NICAMを用いて、日本周辺や海洋大陸域を対象として試験解析を行った。

2) LESに対応した平面座標系領域版NICAMの開発および試験計算

研究計画に則り、従来の球面座標系NICAMを平板座標系でも動作可能となる様に計算コードの改訂を行った。昨年度までにすでに終了している格子平均乱流モデル(スマゴリンスキモデル)とともに用いることで本課題の目的の1つである深い対流系のLESを行う環境がいよいよ実現した。開発したこのLES対応NICAMを用いて、現在、熱帯域で発生する典型的な積乱雲システムを対象事例として試験解析を行っている。

3) 雲微物理モデルの改良

暖かな雨のためのビン法を組み込んだCReSSを用いて雲を含む境界層の再現実験を行い、モデルの改良を進めている。今年度は、安定度に関する観測結果のまとめと理論的な考察を行った。

達成度

(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100%として数値で示してください。複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で示してください。)

1) 球面座標系領域版NICAMの開発および試験計算 : 80%(12月時点)
 2) LESに対応した平面座標系領域版NICAMの開発および試験計算 : 80%(12月時点)
 3) 雲微物理モデルの改良 : 50%

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

本研究課題の中心課題である「平板格子系NICAMの開発とそれを用いた熱帯対流系のLESの遂行」に関して、モデル自体の開発とその物理的、数値的パラメータの設定試験を順調に進めており、本研究課題に割り当てられた計算資源の内の残り(およそ350ノード積)も年度末までには消化する見込みである。

チューニングによる成果

(ベクトル化、並列化チューニング等、計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載してください。)

該当なし。

計画的に利用できていない場合、その理由

該当なし。

8. 新聞、雑誌での掲載記事

該当なし。