全地球弾性応答シミュレーション
Global Elastic Response Simulation
坪井 誠司 (海洋研究開発機構 地球情報研究センター)
Seiji Tsuboi
地震波形インバージョン解析による地球内部三次元構造推定のために、グローバルスケールの三次元速度構造を考慮した高解像度波動伝播シミュレーションを行う。波動伝播シミュレーション手法としては、内部構造インバージョンと直接結びつくDSM法と、現時点で地球シミュレータにより到達しうる理論地震波形の精度を検証するためにスペクトル要素法との、二つの数値計算手法を用いる。
ES2では、これまでに127ノード(=1014CPU)を用いて、現在のプログラムで十分な性能を出すことが出来ることを検証できた。さらに、CPUあたりのメモリ量を増やすことにより、91ノードで127ノードの場合と同程度の精度の計算を、実現可能な計算時間で実行できることもわかっている。今年度は、127ノードを用いた計算で2011年東北地方太平洋沖地震の震源モデルについて異なったモデルによって理論波形の比較を行い、破壊過程の違いが、観測波形からどこまで解析可能かを検証することを当初の計画とした。
127ノードを用いた計算により2011年東北地方太平洋沖地震の震源モデルについて異なったモデルが理論波形に及ぼす影響を評価する研究は、今年度の前半までに順調に利用を進めて計算を終えることができた。地球内部構造推定については、当初の予定にはなかった地球中心核の構造推定について、127ノードを用いた全球を伝わる地震波計算を複数のモデルに対して実行することが必要となった。地球中心核の構造推定には全球を伝わる地震波の計算が必須であり、127ノードを用いる大規模計算が複数必要となるために、結果としては、計算機資源の多くを使い、今年度前期で与えられた資源をほぼ使い切ることになった。
2011年東北地方太平洋沖地震の震源モデルについて異なったモデルが理論波形に及ぼす影響を評価し、最新の地殻変動データを考慮に入れた震源過程モデルは観測波形をより精度よく説明することができることを示した。また、モデルの違いは十分観測波形から解析可能であることがわかった。
地球の核マントル境界について、既存の不均質構造モデルを用いて計算したS波と核マントル境界で反射するScS波との間の理論走時差を様々な震央距離について観測値と比較した。その結果、既存のモデルでは観測された走時差を説明できないことがわかった。
(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100% / 複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で記載)
東北沖地震の震源モデルに対する理論地震波形計算 80%
地球内部構造推定 50%
計算機資源は比較的利用が容易である前半に東北沖地震の震源モデルに関する大規模計算を集中して行い、ほぼ計画的に資源を利用できた。一方で、地球内部構造推定に関する計算は、モデルの修正による理論波形計算に予想以上に資源を使ってしまい、結果的に計算資源が不足する状況となってしまった。
(ベクトル化, 並列化チューニング等, 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載)
今年度はチューニングについては大きな成果はないが、引き続き、127ノードを用いる大規模計算では実行効率が20%近い値を記録できている。
計算規模が大きい場合は、モデルの修正を繰り返すときに、容易に資源の上限に達することがある。利用期間の途中で資源の再申請ができる仕組みがあるとよいと思う。
NHK メガクウェイク 地震波伝播シミュレーション画像