平成24年度 地球シミュレータ利用報告会

実地球環境でのマントル・コア活動の数値シミュレーション

発表資料 (616KB)

1. プロジェクト名

実地球環境でのマントル・コア活動の数値シミュレーション

Simulation Study on the Dynamics of the Mantle and Core in Earth-like Conditions

2. プロジェクト責任者名

浜野 洋三 (海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)

Yozo Hamano

3. プロジェクトの目的

前年度に引きつづき,マントルとコアからなる地球内部システム全体の活動の実体解明を目的として,現在手にできるグローバルな観測量や,復元されている地球の変動史に合致する,より現実的なシミュレーションモデルを構築する。
具体的には,
 1) コア対流と地磁気生成過程の高精度シミュレーション
 2) プレートや大陸の移動を再現するマントル対流のシミュレーション
 3) 地磁気変動によって地殻・マントル内に誘導される電磁場のシミュレーションにもとづく地球内部電気伝導度構造の推定を相互に参照しつつ進める。これらにより,地球内部の動的状態を把握し,将来的な変動の予測にもつなげる。

4. 今年度当初の計画

1) コア対流

地球ダイナモをよりよく再現するためには,モデル流体の粘性を可能な限り低く抑える必要がある。前年度までの計算コードの高解像度化・高精度化の成果をもとに,粘性をあらわす無次元数であるエクマン数を10-7,磁気プラントル数を10-1まで下げた大規模シミュレーションを系統的におこなう。空間解像度は,球関数展開250次から400次程度であり,磁気双極子の拡散時間程度の地磁気変動時系列を得るのに,数百から1000ノード時間を要する。長時間の積分によって数年から数万年にいたる地磁気変動の特性を再現し,物理メカニズムを明らかにする。更にコアの対流を熱対流と内核の成長に伴う組成対流からなる二重拡散対流系として取り扱い,地震波速度構造から示唆されている外核上層の安定成層構造が地磁気変動に与える影響を調べる。調査結果に基づき,磁場の永年変化から安定成層の存在を地震波観測と独立に確認できる可能性があるかを検証する。またコア乱流の基礎過程を明らかにする目的で,矩形の箱を満たす液体金属の熱対流シミュレーションをおこなう。

2) マントル対流

水平15 km の解像度でマントル全体を取り扱い,沈み込んだスラブに特徴的な滞留構造や大規模な上昇プルームの3次元的な発達史を明らかにする。数億から十億年の時間積分をおこなうため,ケースごとに数百ノード時間が必要である。

3) 地殻・マントル電磁誘導

地表での磁場観測データから,マントルのグローバルな電気伝導度構造推定をおこなう。表層の海陸分布が電磁誘導に与える効果を明らかにするためには,展開次数128 次以上の計算が必要である。

5. 研究計画に沿った利用状況

コア対流においては、ダイナモシミュレーションでは中規模計算でパラメータサーベイをおこなった。エクマン数はそれほど小さくない領域で、ケースの数を多くすることで振る舞いを確立するほうに資源を使った。マントル対流においては、岩石の相図を考慮しマグマの生成を扱うため細かいタイムステップを必要とする計算に進み、二次元矩形モデルの利用を主とした。地殻・マントル電磁誘導については、グローバルな構造の一歩手前として三次元領域モデルでの扱いを主とした。

6. 今年度得られた成果、 および達成度

成果

1) コア対流

ダイナモシミュレーションにおいて、熱対流と組成対流を二重拡散対流として同時に取り扱うようにコードを改良した。そのコードを用いて、エクマン数を3×10-4(パイロットケースなのでやや大き目)、熱プラントル数0.1、組成プラントル数1.0、磁気プラントル数3.0 としてダイナモシミュレーションを実施した。パラメータサーベイの結果、双極子的なダイナモと非双極子的なダイナモが得られたが、どちらが実現するかは組成によるレイリー数と熱によるレイリー数の大小関係によって決まることが分かった。
 実際の液体金属において熱プラントル数は10-2、磁気プラントル数は10-6と小さいのが特徴で、それほど小さな値を用いることのできないダイナモシミュレーションとの間をつなぐ必要がある。矩形領域内での液体金属の熱対流シミュレーションにおいて、熱プラントル数を実際の物性値である0.025、磁気プラントル数を0.025から10-4まで小さくして、磁場の影響下での熱対流の性質を調べた。室内実験で得られている対流パターンとその時間変動を再現することに成功した。

2) マントル対流

マントルにおけるマグマの生成とそれに伴う放射性熱源の移動を考慮したシミュレーションを実現し、地球型惑星一般に適用できる進化モデルを構築した。融解固化を伴うため細かいタイムステップが必要であり、現状では二次元矩形モデルであるが、マグマオーシャンに相当する状態から、地殻の形成、層構造の発達、沈み込みや上昇プルームの間欠的な発生、など、50億年におよぶ構造発達史をシミュレートした。このモデルではコアとの熱的結合も考慮し、コアの活動度の長時間変動に対応するデータを得た。

3) 地殻・マントル電磁誘導

地磁気データを利用してオーストラリア大陸下マントルの三次元電気伝導度構造の推定をおこなった。その結果、オーストラリア東側下にあたる領域のマントル遷移層が著しい高電気伝導異常を示すことがわかった。

達成度

(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100% / 複数の目標があった場合は,それぞれについて達成度を数値で記載)

1) コア対流 70%
 2) マントル対流 60%
 3) 地殻・マントル電磁誘導 60%

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

全体として所期の使用量を下回っているが、これからの期間でほぼ使い切る見込みである。

チューニングによる成果

(ベクトル化、 並列化チューニング等、 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載)

大規模計算にもちいたプログラムはほぼチューニングをすませている。スペクトル変換法に基づくコア対流シミュレーションのコードは、球関数展開256次、シェビシェフ多項式展開、外核160次、内核64次のケースを16ノードで実行した場合、実効性能比30%近い性能を得ることができている。

計画的に利用できていない場合、 その理由

コア対流シミュレーションではパラメータサーベイに時間を費やしていて、これまでは大規模計算の回数が少なかったため。また、マントル対流シミュレーションでは長時間を要するが二次元モデル、地殻・マントル電磁誘導では三次元だが領域モデル、での計算が主体となったため。

新聞、雑誌での掲載記事

該当なし。