平成24年度 地球シミュレータ利用報告会

火山ダイナミクスの数値シミュレーション

発表資料 (2.3MB)

1. プロジェクト名

火山ダイナミクスの数値シミュレーション

Numerical Simulations of the Dynamics of Volcanic Phenomena

2. プロジェクト責任者名

小屋口 剛博 (東京大学地震研究所)

Takehiro Koyaguchi

3. プロジェクトの目的

本プロジェクトでは、地球内部のマグマ発生から地表におけるマグマ噴出までの火山現象を、相変化・相分離・熱輸送・乱流を伴う流体力学的問題として数値コードを開発し、火山現象の物理過程に関する理解を進める。また、将来的に、数値シミュレーションに基づいた降灰被害等を予測する火山防災上のツール開発を目指す。

4. 今年度当初の計画

今年度は、大気中を上昇する火山噴煙の挙動に焦点を当て、以下の3つの研究を進める。

a) 風の効果を含めた火山噴煙ダイナミックスのパラメータスタディ

大気中の風速を変えた場合の噴煙高度の変化を測定する。

b) 火山灰分離を伴う火山噴煙ダイナミックスの数値コード開発

昨年度までに開発したトレーサー粒子計算を地球シミュレータに実装し、火山灰降灰の大規模計算に着手する。また、a) の風の効果も同時に計算することで、風が火山灰堆積分布に与える影響を調べる。

c) 実際の噴火事例の再現

a), b) の研究を踏まえ、野外観測データが豊富な2011年霧島山新燃岳噴火事例に関し、数値シミュレーションによる再現を試み、観測データとの比較を行う。

5. 研究計画に沿った利用状況

年度前半は、a) の風の効果に関するパラメータスタディを集中して行い、コンスタントに計算を実行した。また、並行してb) の火山灰分離の効果を含めたモデル構築を行い、今年度後半から本格的な大規模計算をコンスタントに実行した。c) の2011年新燃岳噴火事例シミュレーションは、年度中盤に集中して行い、モデルの検証を完了した。以上より、研究計画に沿った地球シミュレータの利用ができた。

6. 今年度得られた成果、 および達成度

成果

a) 風の効果を含めた火山噴煙ダイナミックスのパラメータスタディ

大気中の風を初期条件として入れた場合に、噴煙高度が風のない場合よりも低下する様子を計算によって捉えた。シミュレーション結果から噴煙内の濃度分布を測定したところ、風速が強まるに従い噴煙内に取り込まれる大気が増加する様子を観察した。大気の取込み量が増加すると、それらを上空に運ぶため余分なエネルギーが必要となり、結果として噴煙高度が低下することが分かった。また、風の効果を含めた単純な1次元噴煙高度モデルに必要な経験パラメータの実効的な値を決定することに成功し、その値がこれまで仮定されていた値よりも小さいことを明らかにした。

b) 火山灰分離を伴う火山噴煙ダイナミックスの数値コード開発

火山噴煙の流体モデルから粒子へと一方的な作用を考慮した「マーカー粒子」を含むモデルを開発し、地球シミュレータでの大規模計算を行なった。計算の結果、噴煙が上昇する過程で、粒子サイズによって異なる高度で噴煙から分離する「分級作用」を再現することに成功した。(a)の風の条件と組み合わせた計算を行なったところ、風がある場では、火口付近に馬蹄型の堆積分布が存在する可能性を初めて捉えた。また、風向が高さによって変化する場合、上空で風に流される噴煙の方向と火山灰の堆積分布軸が大きく異なることを捉えることに成功した。

c) 実際の噴火事例の再現

これまでに得られている霧島山新燃岳2011年噴火のマグマ物性や噴出条件・大気状態の最新データを用い噴煙挙動の再現を試みた。シミュレーション結果から得られた噴煙高度は気象レーダー観測から得られた高度と定量的に良く一致した。また、トレーサー粒子の堆積分布軸は、野外観察データと一致し、モデルの妥当性が確認できた。

達成度

(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100% / 複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で記載)

a) 風の効果を含めた火山噴煙ダイナミックスのパラメータスタディ 90%
b) 火山灰分離を伴う火山噴煙ダイナミックスの数値コード開発 80%
c) 実際の噴火事例の再現 100%

7. 計算機資源の利用状況

計算機資源の利用状況

年間を通し、ノード時間・記憶容量の計算機資源を効率的に利用できた。ノード時間に関しては、12月末で約70%の使用量となっており、年度末に向けて適性な使用ペースとなっていることが分かる。

チューニングによる成果

(ベクトル化、 並列化チューニング等、 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載)

主に実行している風の効果を含めた流体計算コードは、前年度までにベクトル化・並列化チューニングを十分に行っているものをベースとしている。今年度実装したトレーサー粒子計算部の計算量は上記の流体計算部に比べ小さいため、ベクトル化率・並列化率を低下することなく効率的に計算を行えた。ピーク性能比率は平均して20%前後まで到達しており、計算機資源を十分に有効利用していると考えられる。

計画的に利用できていない場合、その理由

該当なし。

8. 新聞、雑誌での掲載記事

該当なし。