宇宙・地球表層・地球内部の相関モデリング
Space and Earth System Modeling
草野 完也 (海洋研究開発機構 システム地球ラボ 宇宙・地球表層・地球内部の相関モデリングラボユニット)
Kanya Kusano
地球システムは内部(地殻、マントル、コア)、表層(大気海洋)および外部(宇宙)が互いに影響を及ぼしながら変動進化する相関システムである。本研究は、JAMSTECシステム地球ラボ「宇宙・地球表層・地球内部の相関モデリングラボユニット」研究の一環として、複合相関地球システムの変動をとらえる先進的なシミュレーションの開発を目指すものである。本プロジェクトの第1の目的は、太陽黒点活動と太陽フレア爆発の機構解明とその予測を行うと共に、地球環境へのそれらの影響を解明し長期的な環境変動の理解に役立てるための先進的なシミュレーション研究を推進することにある。このため、超水滴雲微物理モデル、雲解像モデル、大気海洋結合全球モデル、電磁流体力学モデルを利用したシミュレーション研究を行うと共に、それらの成果を総合することによりマルチスケールシステムとして宇宙地球環境のダイナミクスを理解し長期的な環境変動の理解に貢献するシミュレーション研究を行う。第2の目的は、地球深部に取り込まれる水の影響を取り込んだマントル対流シミュレーションや先進的な地球ダイナモシミュレーション研究と協力し、宇宙・地球表層・地球内部を包括して理解する枠組みを構築すると共に、これらの研究を総合して全球凍結など地球史における大規模環境変動のメカニズムを明らかにすることである。
地球大気の様々なパラメタにおける雲核形成と宇宙線による電離の影響をモデル計算によって検証する。特に、実際の観測条件において雲核数の変化が雲降水システムに与える影響をシステマティックに解析することにより、雲核生成率の変化によって雲降水システムの双安定状態が生まれるとする仮説を検証する。
太陽フレアの発生条件を様々な太陽表面磁場に関する3次元電磁流体シミュレーションをシステマティックに行うことによって明らかにする。特に、大規模な磁場の捻じれと小規模な磁場の変化の相互作用によってフレアが発生するという仮説を検証する。さらに、磁場観測からフレア発生予測を行う可能性について検討する。
大気海洋結合大循環モデルCFESを使って、エアロゾル量の変化による輻射・雲寿命・降水などの変化を取り扱えるようモデルの改良を行う。これを用いて、宇宙地球環境結合モデルで調べられた雲核生成率の変化の気候に対する影響をシステマティックなシミュレーションによって明らかにする。可能であれば全球凍結のような大規模環境変動が雲核変化によって生じる可能性について検討する。
超水滴モデルの開発を進めると共に、雲核数の変化によって雲降水システムが如何に応答するかを観測された実際の気象場において系統的に調べる計算を計画的に実施している。また、太陽フレア爆発の再現シミュレーションを様々な条件で系統的に実施し、世界的にも例の無い3次元電磁流体シミュレーションのデータベースを構築した。本年度前半はこのデータベースの解析を進めた。また、雲核数の変化による気候変動に関しては、当初の予定を変更し、小型モデルを先行して開発することで、全球凍結のモデル検証を行うこととした。
太陽フレアの発生条件を系統的なシミュレーションを通して明らかにすることができた。まず、太陽コロナ磁場の3次元構造を、大規模な磁場ループのシア角、小規模擾乱磁場の水平角及び磁束など、少数のパラメタで特徴づけると共に、それらのパラメタ空間を多数の3次元電磁流体シミュレーション(図1)によってサーベーした。これにより、世界的にも類の無い3次元電磁流体力学データベースを構築した。このデータベースをもとにフレア発生の条件を探ったところ、シア角が大きく、擾乱磁場が大規模磁場のポテンシャル成分及び非ポテンシャル成分に反対するときフレアが発生することを初めて明らかにした(図2)。この成果は太陽フレアの発生を磁場観測から実現できる可能性を示唆していることから、宇宙天気予報に大きく貢献するものであり、プレスリリースを実施した。 雲モデルに関しては雲降水システムの雲核数依存性を系統的に調べる実験を行った。RICOプロジェクトによる観測場を与えると共に雲核数を変化させる実験を、昨年度より大きなシステムで実施した。その結果、雲核数の変化によって降水の活発な状態から不活発な状態へ遷移することを再確認した。これは雲降水システムが双安定性を有することを示唆していることから、系統的なパラメタ―サーベーを通して雲降水システムの遷移過程がどのような条件で生じるかを探るための解析を行った。


図2 (左) 太陽磁場モデルと (右) シミュレーションで見出されたフレア発生のパラメタ領域
(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100% / 複数の目標があった場合は、それぞれについて達成度を数値で記載)
70%
本年度は雲モデルの計算を先行して行なうと共に、関連する実験を他のシステムを用いて進めた。一方、太陽モデルに関しては昨年度の計算データの解析を継続したため、計算を年度後半に実施することとした。また、地球環境モデルに関しては研究計画を見直し小型モデルの計算を先行したため、例年に比べ資源利用に幾分遅れが見られた。

図3
(ベクトル化、 並列化チューニング等、 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載)
超水滴法を雲解像モデルCReSSに導入した先進的な雲モデルは地球シミュレータへの最適化が行われており、128ノードでベクトル化率 99.54%, 並列化率99.977%を達成している。
太陽フレアモデルに関しては昨年度構築したデータベースの解析に予想以上の時間を要したため、新たな計算の実施が遅れた。また、地球環境モデルに関しては、当初の計画を変更し小型モデルによる事前実験を先行して行ったため、資源利用に幾分遅れが見られた。
2012年11月3日 : 朝日新聞 「太陽フレア発生条件解明 名大など 数年内に“予報”」できるかも(図4)」
2012年11月3日 : 中日新聞、東京新聞 「太陽フレア発生条件解明 名大グループ 地球への影響予測も(図5)」
その他各紙
日経サイエンス 2012年8月号 「雲と太陽 深い関係」
天文ガイド 2013年1月号 「ニュース 太陽フレアの原因となる磁場構造を解明」
ナショナル・ジオグラフィックス・ニュース 「太陽フレアの予測可能に」
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=00020121107002
サイエンスポータル 「太陽フレアの予測可能に」
http://scienceportal.jp/news/daily/1211/1211071.html
アストロアーツ 「太陽フレアの発生原因となる磁場構造を解明」
http://www.astroarts.co.jp/news/2012/11/06flare/index-j.shtml


図4 2012年11月3日 : 朝日新聞 図5 2012年11月3日 : 中日新聞