脳動脈瘤等の生体系非定常流体構造連成解析法開発プロジェクト
Research Project of Biomedical Unsteady Fluid-structure Interaction Analysis for Cerebral Aneurysm and Other Organs
田沼 唯士 (帝京大学 ジョイントプログラムセンター)
Tadashi Tanuma
脳血管疾患の入院受療率は全疾患中で1位(厚労省平成20年統計)となっている。日本人の死亡率において脳血管疾患は男性で4位、女性で3位(厚労省平成21年統計)となっており、診断精度の向上と死亡率低減に向けた対策に早期に取り組むべき疾患と言える。本プロジェクトでは、心臓の脈動に伴う血流の時間変動に加え、血管流路の3次元的な曲率や分岐及び動脈瘤付近での急激な速度変動等によって生じる渦流などに起因する、脈動より高周期の非定常流れが重畳する場合の血流の流動特性及び血管と動脈瘤壁の応力分布に及ぼす影響について、数値流体力学と解析構造力学を用いて評価する。これにより、脳動脈瘤の発生と増大、破裂のプロセスを時間スケールのスペクトルごとに評価して、現象のメカニズムを定量的に明らかにする。更に他の生体器官の流体関連挙動解析への適用も試みる。
平成24年度 合計2,600ノード時間
5) 脳動脈瘤流体構造連成定常解析 500ノード時間
全体及び脳動脈瘤細部の流体力及び血管壁応力の詳細解析
6) 流体構造連成非定常解析
鳥居ら1) 及び船崎ら5) の研究を参考に、複数の症例について解析を実施する。
6)-1 脳動脈瘤解析 1,300ノード時間
6)-2 鼻腔から咽頭にかけての吸気流解析 800ノード時間
平成24年度計画 合計2,600ノード時間
5) 脳動脈瘤流体構造連成定常解析 計画 500ノード時間
11月までの実績 220ノード時間
6) 流体構造連成非定常解析
6)-1 脳動脈瘤解析 1,300ノード時間
11月までの実績 240ノード時間
6)-2 鼻腔から咽頭にかけての吸気流解析 800ノード時間
11月までの実績 0ノード時間
全体及び脳動脈瘤細部の流体力及び血管壁応力の詳細解析を実施した。MRI画像から作成した3次元ボリュームデータは血管及び脳動脈瘤内部の流体力と血管及び脳動脈瘤外部の脳圧及び血管壁及び脳動脈瘤壁の変形によって生じた応力がバランスしている状態における形状である。この状態の形状から作成したFEM格子を用いて内部流体力を境界条件として構造解析を実施すると血管壁及び脳動脈瘤壁の変形が重畳して正しい解析ができない。この問題点の対策として、MRI画像から作成した3次元形状が結果として実現できる初期形状を推定して有限要素法構造解析を繰り返すことにより、血管壁及び脳動脈瘤壁に内部流体力と外部脳圧が負荷されている状態で、MRI計測された3次元形状をほぼ再現することができた。2月中旬までに計画の100%達成の見込み。
6)-1 脳動脈瘤解析
典型的な動脈血流の静圧脈動(血圧の時間変動)モデルデータを作成して非定常解析を実施した。解析結果から時間平均値と時間変動の振幅(0.5×(最大値―最小値))を求め、材料力学で一般的に使用される疲労限度線図を作成した。線図にはヒト動脈瘤壁(大動脈瘤)の引張試験による破断強度計測値(文献値)を用いた推定疲労限界線を記入し、今回解析したケース(手術により治療済み)の脳動脈瘤壁が流体力によって破損(破断または亀裂の発生と進展による出血)するリスクを定量的に予測できる可能性を示した。更に解析された時間変動応力のパワースペクトルを求め、心臓の脈動及びそれに近い低次周波数成分が支配的であることを示した。2月中旬までに計画の100%達成の見込み。
6)-2 鼻腔から咽頭にかけての呼吸気流解析
睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気による仕事の効率低下だけでなく、睡眠中に脳に供給される血液中の酸素濃度が断続的に低下することによる脳血管障害を引き起こすとして、加圧マスクを用いた積極的な治療(CPAP)が行われるようになってきた。一方、鼻腔形状に疾患のある患者の一部は使用に伴う息苦しさからCPAPマスクを使用することが出来ないことがあり、鼻腔狭窄部の手術の必要性を定量的に判断するための呼吸気流解析を実施した。
X線CTにて撮影した健全鼻腔3例と鼻腔気流通路部が狭窄している症例2例の3次元ボリュームデータを作成した。CPAPマスクは工業用X線CTにより3次元形状を計測した。鼻腔とマスクの3次元データをSTL形式のデータとして統合して、流体解析格子を生成した。11月までに前述した5例の流体解析(予備解析)を完了している。2月中旬までに計画の60%達成の見込み(健常者に対して鼻腔疾患がある場合にCPAPがどの程度息苦しくなるかを、圧力損失の比較により定量的に示す予定)。
(年度当初の研究計画を全て達成した場合を100% / 複数の目標があった場合は,それぞれについて達成度を数値で記載)
平成24年度計画 合計2,600ノード時間
6)-1 脳動脈瘤解析 1,300ノード時間
11月までの実績 240ノード時間
2月までの実績 1,300ノード時間
(ベクトル化, 並列化チューニング等, 計算機資源を有効利用するために行ったこととその効果を記載)
構造解析プログラムFrontISTRのチューニング作業の結果、64ノードにてベクトル化率96.717%, 並列化率99.8641%を達成した。
粘弾性体の解析精度を複数の解析プログラムを用いて比較評価する作業に時間を要しました。各解析法の解は完全には一致しませんが、解析精度の範囲を推定して示すことで再現性のある結果と考察を導く見通しが得られました。
1) 2013年度の日本機械学会バイオエンジニアリング講演会にて予定している講演の一部で本プロジェクトを紹介する予定です。
2) 2013年度中に日本機械学会等の機械系ジャーナルに論文を1件、医学系の学会講演会に口頭発表を1件予定しています。