更新:2010年08月11日

地球流体シミュレーション研究グループについて

地球流体シミュレーション研究グループは、海洋や大気など地球流体分野への高解像度・大規模シミュレーションの応用を通じて、全球規模の気候の形成および変動に海洋が果たす役割を解明すべく、計算地球科学の最先端に挑戦しています。

地球シミュレータの中にある、もう一つの海と空

図1

図1: 大気海洋結合モデルCFESによる全球シミュレーションの結果(積分19年目2月の月平均値)。上から、250 hPa面での風、降水量、海面水温、1500 m深での流速。【クリックすると大きな図が見られます】

流体力学や熱力学の法則に基づいて、海洋や大気の大規模な変動を支配する方程式系を記述し、数値計算用にプログラムしたものを『大循環モデル』と呼びます。我々のグループでは、当機構の地球環境変動領域や国内外の研究機関と協力して、地球シミュレータ向けに大規模並列化・高速化された海洋大循環モデルOFES、大気大循環モデルAFES、および大気海洋結合モデルCFESの開発・改良を行うとともに、これらを活用したシミュレーション研究を実施しています。

海洋や大気の状態を知り、その仕組みを研究するため、当機構を初め世界中の機関が日夜観測を続けています。しかし、研究対象によっては、現在の観測網では時間的にも空間的にも不十分な場合がありますし、そもそも測定が困難な量もあります。そこで、仮想的な海洋や大気をコンピュータの中に組み立て、観測では得られない情報を生み出すことにより、地球の仕組みを知るのに重要な役割を果たすのが大循環モデルを用いた数値シミュレーションです。例えば、我々のグループがOFESを用いて行った、過去50年間に渡る準全球海洋渦解像シミュレーション(水平解像度10 km)の結果は、観測を補完する貴重なデータセットとして、世界中の多くの研究者に利用されています。また、他の研究分野とは異なり、実際の地球では『実験』が行えません。そのため、コンピュータの中の海洋や大気で様々に条件を変える『数値実験』を通じて、複雑に絡み合った地球の仕組みの本質に迫ることも、シミュレーション研究の重要な役割の一つです。

黒潮の小さな渦を解像する

図2

図2: 相対渦度(× 10-5 s-1:回転の向きと大きさを表す量)【クリックすると大きな図が見られます】

近年の衛星観測などから100 km程度の中規模渦の中に更に小さな数 km程度の小さな渦やフィラメント状(サブメソスケール現象)が見つかり、少なくとも海洋表層の黒潮などの海流に影響を与えているのではないかと考えられるようになりました。そこで、超高解像度の海洋大循環モデルOFESを用いて、数km規模のサブメソスケール現象を再現できる北太平洋シミュレーションに挑戦しています。水平解像度3 kmを用いたところ、黒潮や対馬暖流に沿って渦やフィラメント状のサブメソスケール現象が表現できるようになりました(図2)。

メキシコ湾流の役割を探る

図3

図3: CFESの年平均した大気の上昇風速(赤ほど強い)と海流の速度(赤ほど速い)【クリックすると大きな図が見られます】

メキシコ湾流の熱は中緯度で大気を暖め、強い上昇気流を生み出していることが、最近の衛星観測や大気大循環モデルAFESの計算から明らかになりました (Natureに掲載)。このような大気海洋結合現象を詳しく調べるため、大気海洋結合モデルCFESを用いて、地球全体の大気と海洋の流れを高解像度(大気50 km、海洋25 km格子)で計算しています。図3は、CFESで再現されたメキシコ湾流の流れとその上空の上昇気流です。深さ1,000 mに達するメキシコ湾流が大西洋の西岸を北上し、その上空には上昇気流が高度1万mにまで延びている様子が再現されています。