マルチスケールモデリング研究グループ (MSSG)

Last Update : 2012.01.10

私たちが目指すモデルは、全球から領域、都市まで扱えるようなモデルです

  • 大気、海洋、陸面や植生、海氷、大気化学などの複雑な相互作用を扱え
  • “超高解像度”シミュレーションが可能なモデルであること。
  • 高精度計算スキームを開発し、数値計算精度の飛躍的な向上を目指し
  • 地球シミュレータを“使い倒せる”超高速モデルを開発しています。

気象や気候現象には、様々な時空間スケールの現象が複雑に相互作用を及ぼしあって成り立っていると考えられています。全球では全球スケールの現象、 領域では領域スケールの現象、都市では都市に特有なスケールの現象を考えてモデルを開発する必要があります。これらのスケールは、単一スケールとして存在するのではなく、 複数のスケールの現象が互いに影響を及ぼしあっているので、複数のスケール間の相互作用を捕らえることができるモデルを開発する必要があります。 気象や気候現象のスケール間相互作用は、その重要性が多くの知見において示唆されているにも関わらず、まだわからないことがたくさんあります。 異なるスケールをシームレスに扱うにはどのような課題を克服していく必要があるのか、についての検討も含めて研究開発を進めています。

図1.ターゲットとする空間と時間の階層性

大気、海洋、陸面や植生、海氷、大気化学などの複雑な相互作用を扱えるモデル構築を目指します。

100kmから数1000kmの水平空間スケールを対象とした場合、“鉛直方向の圧力傾度力と重力がつりあう”という静力学平衡状態の近似がよく成り立つことが知られています。しかし、このスケールでは、 気象、気候現象の時空間スケールとも関連しますが、 地球システムを構成する様々な要素を取り入れてシミュレーションを行う必要があります。大気、海洋など、 構成要素ひとつひとつのシステム間の相互作用を考えた結合モデルを開発しています。 

これまでに、地球シミュレータ上で、私たちが開発したモデルを用いて、

  • 非静力学・大気・海洋結合モデルによる台風の進路・強度予測シミュレーション【日本領域,水平2.78km, 76層】
  • 全球・非静力学・大気大循環モデルによるシミュレーション【水平2.9km、鉛直32層】
  • 日本領域・非静力学・大気大循環モデルによる台風進路・強度予測シミュレーション【水平1.13km, 鉛直96層】
  • 北太平洋域・海洋大循環モデルによるシミュレーション【現実の海底地形,2.75kmメッシュ、鉛直48層】
  • 東京湾、駿河湾、銚子沖領域における海洋季節進行シミュレーション【水平2.5km、鉛直40層】
  • 日本領域、冬季・寒気吹き出しのシミュレーション 【水平1.3km, 鉛直32層】
  • 都市域(大手町域)における流れのシミュレーション【水平8m,鉛直32層】

などのシミュレーションを行い、モデルを検証してきました。(【】内は、解像度を示します。)

今後は、超高解像度における、より長い時間スケールの予測シミュレーションにも挑戦していきます。

図2.シミュレーション結果の例


"超高解像度"シミュレーションが可能なモデルを開発します。

台風や梅雨時における集中豪雨、ダウンバーストや、都市型降雨など、局所的に激しい変化のある現象は、私たちの生活に直接深刻な影響を与えます。 これらの現象を予測するためには、少なくとも、雲ひとつひとつの生成単位を扱えるような解像度(100m程度の解像度)が必要であるといわれています。 地球シミュレータの出現によって、これらの現象を、現象をとりまくより広い領域のなかで、より厳密に扱うことのできる環境が整ってきました。積雲、積乱雲の生成や発達、維持などをより詳細に検討することで、 私たちの社会生活に密接につながる気象、気候現象の予測精度向上に繋がることが期待できます。
超高解像度シミュレーションは、格子サイズを小さくするだけでなく、格子のサイズに見合った詳細スケールの物理現象をどのように捉えるか、 というモデルの研究開発が重要です。私たちのグループでは、特に

  • マイクロスケールからメソスケールの雲生成過程や降雨過程
  • 数mから数kmスケールの大気海洋相互作用の物理
  • 数mスケールの接地境界層の物理

に着目して、新しい物理過程モデルの研究開発を進めています。

図3.雲粒の成長を正確に予測するシミュレーション


高精度計算スキームを開発し、数値計算精度の飛躍的な向上を目指します。

計算機上でシミュレーションを行う際には、物理方程式を"離散化"して、プログラムコードとして記述しなければなりません。 その際に、どのような離散化手法を選択するかが、シミュレーション結果の精度を大きく左右します。
一般に、高精度の計算を行おうとすると、計算量が膨大に増えます。しかし、各メッシュごとに、どのような情報を、どのように計算するか、 を工夫することで、計算量は多少増えるけれども、そのデメリットを受け入れたとしても余りあるほど計算精度を飛躍的に向上させることができる例があります。 そのひとつがCIP法です。私たちは、それらの知見をヒントに、高精度計算が可能な、かつ計算効率が高い、数値計算手法を研究開発しています。

図4.二次精度有限差分法(FDS)とCIPの移流実験結果。左列は初期値、中列と右列は各計算手法で計算した結果を示 します。初期値のままの形を保ったまま計算できるほうが精度のよい計算手法です。


地球シミュレータを"使い倒せる"超高速モデルを開発します。

複数の現象、複数のスケールの相互作用まで考慮したシミュレーションを対象とすると、必然的に、超大規模な計算が必要となります。 地球シミュレータをもってしても、その計算性能を最大限に引き出したシミュレーションを行わなければ、時間がかかりすぎて、結果を得ることが困難になってしまいます。 また、世界に誇るパワーのスーパーコンピュータがあるのですから、そのパワーを駆使して("使い倒して")、そのありがたみを十二分に味わいたいものです。
地球シミュレータを"使い倒せる"超並列・超高速計算を可能にするには、地球シミュレータの計算性能に最適なシミュレーションコードを設計、開発する必要があります。 私たちは、地球シミュレータの理論ピーク性能比約60%、並列効率99.99%を達成する非静力・大気・海洋結合コードの開発に成功しています。 これは、大気・海洋結合モデルとして、世界に先駆けて達成された計算性能であるといえます。

図5.地球シミュレータの平均性能値と各モデルの性能