黒潮続流域における海洋環境の十年規模変動は、日本近海の水産資源の変動と密接に関連しているのに加え、大気海洋相互作用を通じて、北太平洋の気候変動に積極的な役割を果たしている可能性が近年の研究から示唆されている。
本研究では、主に海洋循環モデル(OFES及び領域モデル)を用いて、黒潮続流フロントの過去40年における変動を、続流に伴うジェットの空間構造とその 時間発展に注目して調べた。従来の北太平洋十年規模変動の研究で用いられてきた観測データと数値モデルは、観測点数と計算機資源の制約のため、100km スケールの海洋フロントを解像しない。
高解像度海洋モデルOFESが、過去53年の現実的な強制で積分された(経年変化外力ラン)ことにより、数十年の期間にわたる海洋フロント変動の研究が初めて可能になった。
OFES経年変化外力ランを解析した結果、黒潮続流ジェットの変動は、流軸の南北移動とジェットの強さの変動で特徴づけられることがわかった。前者の変動の時系列は1980年前後のジャンプを示し、アリューシャン低気圧の強弱と4-5年の遅れで最も良く相関し、1976/77年の気候レジームシフトの変動と整合的であった。一方、後者の時系列は約10年周期の規則的な変動を示す。何れの変動の時系列も、OFESと同様の風強制を与えた線形ロスビー波の解析解による予測と妥当な一致を示し、大気の大規模スケール(~1000km)の強制が、海洋のロスビー波によって西に運ばれ、黒潮続流域の応答をもたらすという従来の知見を支持した。しかしながら、黒潮続流変動の空間分布は線形ロスビー波応答と大きく異なり、南北に滑らかな大気強制の分布と対照的に、平均場の黒潮続流フロントの狭い緯度帯に集中する。
領域海洋モデルを用いた理想的な数値実験の結果から、変動のフロント域への集中は、渦位移流と渦・平均場相互作用による海洋の非線形効果によることが示唆された。さらに経年変化を持たない気候値外力で積分されOFESの結果にも、経年変化外力ランの結果に良く似た南北パターンと時間スケールを持つ変動が見られたことから、海洋の内部力学によるフロント変動の固有モードが存在して、風の経年変化がそれらの固有モードを増幅/励起するメカニズムの可能性が示唆された。