「持続可能な開発に関する世界サミット」参加報告

8月29日から9月4日まで、海洋科学技術センター、地球フロンティア研究システム、地球シミュレータが上記サミットに参加し、事業を紹介致しました。サミットの背景と展望と共に、我々の今後の貢献についてご説明致します

展示場があるウブンツ村の入り口



本会議場の様子を写すウブンツ村の大スクリーン


日本パビリオン


ジャパンパビリオン内展示ブースの様子


日本パビリオンを訪問された小泉総理大臣

 アフリカで開催された環境会議

  「わたしたちはこの苦境から脱する道を10年前にリオデジャネイロで開催された地球サミットで達した合意によって見出したかに見えた。しかし、その後の進展はわたしたちが期待したよりも遅かった」「今わたしたちは、これをただすチャンスを再び与えられた。」(アナン国連事務総長の言葉より;出典:外交フォーラム第170号)

  "People, Planet and Prosperity".8月の末から9月の初旬に開催された「ヨハネスブルグサミット」の標語である。1992年6月にブラジルのリオデジャネイロにおいて開催された通称「地球サミット(国連環境開発会議)」から10年後に「リオ10」と称して、南アフリカの首都、ヨハネスブルグでこの「持続可能な開発に関する世界首脳会議」は開催された。

  21世紀の世界の安定と繁栄はアフリカ問題の解決なくしてはありえないと言われるように、世界のグローバル化が進み、水や大気が地球全体を循環するように、環境問題、貧困、健康問題等も地球を回る。人口問題、食料問題、保健衛生、水不足、住居問題等を念頭に置き、貧困撲滅、開発途上国への貢献を意識した上での資源保護、経済発展、保健衛生、エネルギー問題等を検討するため、地球上の様々な問題が集中しているアフリカで、サミットは開催された。

  経済的利益が優先的に討議されがちな環境関係の国際会議がアフリカで開催されたことにより、論点はより複雑化したが、水、エネルギー、保健衛生、農業生物の多様性の5テーマ及びこれらのすべてにまたがる分野横断的課題により議論がなされることとなった。


日本の参加

 
日本はよく、ODA資金支出が世界1位にもかかわらず、国際社会での貢献が分かりにくいといわれる。京都議定書批准に対するイニシアティブに見られるように、持続可能な開発のために地球規模で戦略、責任、経験、情報を共有するという「グローバルシェアリング」の概念をこの会議中にも打ち出すなど、環境に関しては、過去の公害、科学技術の発展等の経験を生かし、積極的な参加体制を国際社会に示したかった。このような背景の中、サミットの本会合が開催されている市内のサントン国際会議場から約5Km離れた運動競技場に設営されたエジプト語で「連帯」の語源を持つ「ウブンツ村」に、各国の展示が並ぶ本展示場以外で、ホスト国である南アフリカと並び唯一独自のテント(ジャパンパビリオン)を設けたのが日本である。

  このジャパンパビリオンの中の、「ヨハネスブルグサミット実施計画」へ地球観測の案件を取り込む働きかけに成功した宇宙開発事業団の展示ブースの中で、地球フロンティア研究システム、地球シミュレータセンター、海洋科学技術センターは事業を紹介した。

  展示期間中に開催されたセミナーでは、文部科学省主催の「地球環境に関する科学技術の貢献」というセッションにおいて、幸田シャーミン氏の総合司会のもと、地球シミュレータセンターの佐久間グループリーダー、堀田フロンティア研究推進室長により、それぞれ「地球シミュレータを用いた地球変動予測の改善」及び「海洋観測:ARGO計画(高度海洋監視システム)」の講演を行った。

  また、「持続可能な開発のための地球観測」のセッションにおいては、「気候変動の把握」及び「海洋観測の強化」という題目で、佐久間グループリーダ、海洋観測研究部の深澤研究主幹が講演を行った。会議中は小泉首相を始め、川口外務大臣、各国大臣やアフリカの子供たち等、さまざまな人々がブースを訪れた。

セミナー風景


地球シミュレーターの説明をお聞きになる若松総務省副大臣


「みらい」の説明をお聞きになる川口外務大臣

サミットへの参加の意義と今後

  本会議場での6番目の議題である分野横断的課題の中では、意思決定のための科学技術及び情報と能力向上のテーマが討議され、持続可能な発展を進めるためには科学技術は何ができるかが、まず最初に話し合われたという。54ページにわたる実行計画には、水循環、気候変動、生態系、大気、温暖化、海洋研究、地球観測、国際協力等、地球フロンティアの全領域、地球シミュレータセンター、そして宇宙開発事業団、海洋科学技術センターが関わっている事項が盛り込まれている。

  環境会議の最高峰であるヨハネスブルグサミットで、世界にはまだまだ解決しなければならない問題が残っていることを再確認した。この合意書は世界の殆どのリーダーが合意した地球のためのフレームワーク。各国の参加者により強調されたのは、「議論から実行へ」。この実行計画をどう解釈し活用するかは、我々がどれだけ、地球、そして未来に対する責任を感じ、行動するかに掛かっている気がした。

  地球フロンティア研究システム、地球シミュレータセンターは、地球観測フロンティア研究システムとの合同で、それぞれ、プロセス研究、シミュレーション、観測研究という3機能の連携により、地球を1つのシステムとして捉え、地球の全ての変動を可能な限り予測するという壮大なミッションがある。この人類社会の持続的発展や、より豊かな社会生活の構築に役立つための活動が期待されており、これはまさに、サミットの標語であった"People, Planet, and Prosperity" と相重なる目標である。

  サミットでの日本の取り組みである「小泉構想」の中にも、地球環境のモニタリング、気候変動、生物多様性、安全な水等に関する活動の推進が盛り込まれている。また、「現在のレベルの科学技術を用いて、今私たちにできることは存在する。だが、私たちがこれまで以上に研究に適切な投資をし、科学が進歩すれば、より多くの解決策をもたらしてくれるであろう。」(出典:外交フォーラム第170号)というアナン事務総長の言葉にも勇気づけられる。

  科学技術の進歩、正確な予測によりもたらされるであろう社会の恩恵。地球変動の予測という大きな重いミッションは、社会基盤、政策の基盤となるのであろう。我々が貢献できる課題は今後も山積みであることを痛感した。設立より5年目を迎えた地球フロンティアでは、文部科学省による「人・自然・共生プロジェクト」が始動し、領域を越えた研究活動が盛んになる。また、世界最速のコンピュータ、地球シミュレータも今年3月に始動した。今後いっそう、地球変動予測の実現のために、活動を展開していきたい。