研究者のHP



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>>No 30

No 30
伊藤研究員と石島研究員の研究を紹介します
  人類は火を使うことを覚え、他の生物にはない能力を手に入れてきました。開拓時には 野焼きが利用されていました。アフリカ、中南米、東南アジアなど熱帯域の森林やサバンナ地帯では 大規模な火災が発生しています。シベリアや北米では地球温暖化の影響による森林火災の増加が懸念 されています。こうしたバイオマス燃焼では、二酸化炭素や一酸化炭素のほかエアロゾルなどの微量 成分が大気中に放出されます。それらの物質や二次的に光化学生成される対流圏オゾンなどは、大気 の化学過程や気候変動に大きな影響を与えています。その最新の研究成果は9月に南アフリカで開催さ れたIGAC/CACGP/WMO合同シンポジウムで発表されました。(伊藤彰記)
  19世紀の産業革命以後、人間活動によって二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、 亜酸化窒素(N2O)等の温室効果気体の大気中濃度が増大してきました。それ故、地球温暖化やそれに伴う気 候変動など地球環境へ悪影響が及ぶことが懸念されています。N2Oは温室効果能力がCO2の300倍もあり、 さらにオゾン層の破壊にも関与しているため、近年その研究は大変重要視されています。地球環境フロン ティア研究センターでは、全球モデルを用いた数値シミュレーションを行うことによりN2Oの全球循環の把 握と放出源の定量化を目指しています。(石島健太郎)

No 29
10月に着任した庭野将徳ポスドク研究員を紹介します。
 庭野ポスドク研究員は、これまでは成層圏寒冷化・対流圏温暖化において重要な役割を果たす、成層圏の水蒸気が対流圏から成層圏へどのように輸送されるのか? というラグランジュ的な輸送過程の問題に取り組んで来ました。
大学院では、観測が難しかった上部対流圏から下部成層圏の水蒸気量を長期に渡り観測することに成功したアメリカの衛星搭載測器(UARS/HALOE)で得られた水蒸気とメタンのデータを利用し下部成層圏におけるラグランジュ的な上昇流の季節変動・経年変動を明らかにし、下部成層圏における輸送過程および力学場の理解に貢献してきました。また、京都大学でのポスドク研究員時代は、熱帯対流圏界面域の巻雲、エアロゾル、鉛直流など対流圏界面域の水蒸気量を支配する各要素の地域性・時間変動を調べてき ました。今後は、これまで用いてきた研究手法や方法論を活かし関東域における光化学オキシダ ント予報を念頭においた領域大気化学天気予報システムの構築を行い、光化学オキシダント発生における輸送過程の役割を明らかにしていく予定です。


No 28
 6月12日〜17日にプラハで「The Acid Rain 2005 Conference」が開催され、40カ国以上/600名以 上の科学者が集まりました。当プログラムからは、朱、Pochanart、顔各研究員、大原SLが参加しました。 この会議は5年ごとに開催され、前回はつくばで、また次回2010年の北京では、当プログラムに以前所 属していた王自発氏が議長を務めます。


 この会議での議論は年々発展しており、酸性雨の原因や影響に 関する問題から始まり、これらの問題の緩和策とその結 果、また現在ではその他の汚染物質の影響についても議 論が行われており、これを受け、次回の会議名は「Acid Rain and Air Pollution」とすることが提案されています。酸性雨問題はヨーロッパや北アメ リカ地域で70年代に発生し、魚類や森林に悪影響を及ぼしました。現在これらの地域での硫 酸・窒素排出量は減少し、多くの場所では土壌や水の酸化が止まり生態系も回復し始めてい ます。しかし一方、中国、日本、インドを始め他の地域では硫酸・窒素排出量は急増しており、 人体、淡水、陸域生態系に深刻な影響与えています。そのため、これらの地域での更なる研究 や政策の策定が必要となっています。




No 27
パトラ研究員は2005年1月16日から20日までサンディエゴで開催されたAGU Chapman Conference on The Science and Technology of Carbon Sequestrationに出席しました。従来の会議とは異なり、全ての発表が自然または人為起源の炭素吸収源の検証、評価による炭素循環に関する研究の応用を目的として進められました。
海洋堆積物や生物圏などの自然の炭素吸収源と油田や地殻の人為起源の吸収源の強制的な増加の問題について詳しく議論し、複数の方法で大気中の二酸化炭素の増加を制御しなければならないという意見で一致しました。京都議定書の発行に基づき、参加国は公約を果たす義務が課せられており、既に、大気中の二酸化炭素の増加を緩和するための炭素の固定に関する科学技術は開発されています。近い将来、炭素固定技術は確立されるかもしれませんが、海洋生物へ影響を与えずに二酸化炭素を吸収させる方法など、長期的な影響は分かっていません。また、各国によるカーボンクレジットの立証はもう一つの深刻な問題で、二酸化炭素の逆モデル、予測モデルの研究を通して貢献することができると思われます。


No 26
今年から新たに着任した入江仁士博士およびドナルド・ルーカス博士を紹介します。
入江博士は3月まで国立環境研究所において、北極オゾン層を破壊するプロセスの中で中心的な役割を果たす雲(極成層圏雲)がどのように形成するのかという問題に取り組んでいました。
この研究の主な特色は環境省の人工衛星搭載大気センサ(ADEOS/ILAS)のデータと雲物理モデルを組み合わせてきたことです。このような経験を活かし、地球環境フロンティア研究センターでは、人工衛星データの解析を柱として大気組成の時間的・空間的変動を調べ、地球規模の環境問題の対策への貢献を目指したい、とのことです。ルーカス博士は5月の着任前まではマサチューセッツ工科大学において、重要な生物起源硫黄化合物であるDMS(硫化ジメチル)に関する研究を様々なコンピュータモデルを用いて行なっていました。地球環境フロンティア研究センターでは、エアロゾルの粒径分布を考慮した全球三次元化学気候モデルを用い、対流圏における二次エアロゾル量の推測を行なう計画です。


No 25

 全球化学輸送モデリンググループでは、対流圏オゾンが地域的な大気汚染と地球規模の気候とに及ぼす影響の相関関係の定量化をめざしています。対流圏オゾンは二酸化炭素とメタンに次いで重要な温室効果気体ですが、過去100年の濃度増加(3〜4倍)は二酸化炭素とメタンを遥かにしのぎます。この濃度増加は人間活動によるものと推定されますが、地表付近で発生する光化学スモッグ中のオゾンの増加という側面も併せ持っており、人々の健康や農産物の収穫量にも影響しています。2001年春に西太平洋で行われたNASAのTRACE-P航空機観測では、東アジア起源の非常に汚染された空気をキャッチしました。化学輸送モデルを用いて観測データを詳細に解析したワイルド研究員は、高気圧に覆われた晴天時には中国において光化学スモッグ中のオゾン生成が促進され、曇天時には地球規模の気候への影響が大きくなることを示しました。この結果は地域的な大気汚染と地球規模の気候との複雑な関係を示しており、今後、より高解像度の化学輸送モデルを用いることで多くの知見が得られるかもしれません。

No 24

 大気組成データ解析グループでは、欧州・北米・アジア3大陸上でのオゾン変動を研究しています。近年のシミュレーションでは、東アジアのオゾン濃度レベルは、3大陸でのオゾン前駆体放出量によって決まる「北半球のバックグラウンド濃度」に、地域規模で起きる光化学的オゾン生成分が上乗せされて決まると考えられており、これらの寄与を観測データ側から推定する方法を確立することが必要です。Naja研究員は、各大陸上でのオゾンゾンデデータについて、測定された気塊が大陸上に滞在した日数と到来した方向に基づき解析を行いました。結果、1990年以降欧州では、オゾン前駆体である窒素酸化物放出量の減少を受け、境界層内で作られるオゾン量が急減したことがわかりました。しかしながら下部対流圏でのオゾン濃度レベル自体に減少がみられないのは、北米で放出された前駆体が大陸間輸送される量が多くなり、窒素酸化物減少の効果を打ち消してしまったためと考えられます。日本上空の下部対流圏オゾン量には、晩春〜夏に中国からの輸送が大きく影響するだけでなく、年間を通じて欧州からの輸送も重要とわかりました。こうした長距離輸送に関する観測証拠をもとに各大陸でのバックグラウンド濃度およびオゾン環境基準を決定することが重要です。

No 23

農耕地は、亜酸化窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)、アンモニア(NH3)、メタン(CH4)をはじめとする大気微量成分の重要な発生源です。東・東南・南アジアの農業には、この問題と関連して考慮すべき特有の条件があります。世界の農耕地面積の36%を占めるに過ぎないこれらの地域が、窒素肥料消費量では世界の半分以上を占めます。また、CH4の発生源である水田については、世界の面積の約90%が存在します。そこで、エミッションインベントリサブグループの顔暁元研究員は、これらの地域の農耕地からのN2O、NO、NH3、CH4発生量評価の精緻化を試みています。肥料の使用状況、土壌特性、水利、気候条件などの因子と大気微量成分発生量の関係を詳しく解析した上で、農産物収穫量や肥料使用量に関する各国の統計資料も駆使して、国別(中国とインドについては省または州単位)に発生量を評価しました。現在、土地利用の変化、人口増加、経済発展を考慮に入れた将来予測を試みています。

No 22
   
急速な経済発展を続ける東アジアでは、大気汚染物質が大量に放出されており、今後も放出量が増加し続けると予想されていま す。その影響は、地球温暖化、森林破壊等の自然環境変化、農業生産性の低下、健康被害など多岐にわたることでしょう。今まさに私たちは、東アジアでの広域大気汚染を長期にわたって観測する体制を整えて、その変動メカニズムを解明すべき機に達しています。そこで、文部科学省の人・自然・地球共生プロジェクトの一環で、大気組成観測のためのタスクチームが結成されました。まずは、今年度の終わりからオゾンと一酸化炭素の連続観測を中国の人口過密地域で開始する予定です。シベリアの人里離れた地域でも同様の観測を行い、東アジアにおける大気のバックグランド状態も探ります。データが不足するこれらの地域での観測は、大気化学輸送モデルの検証と精緻化に役立ち、東アジアの広域大気汚染の将来を予測する上で極めて重要な活動と信じています。

No 21

Patra研究員とMaksyutovサブグループリーダーは、世界各地のCO2濃度観測データから地域規模の発生・吸収量(フラックス)を評価する逆問題に取り組んでいます。現在の観測点の配置は濃度の長期変動検出を目指したもので、地域規模のフラックス評価には向いていません。京都議定書に基づき温室効果気体の放出を減らし、植物による吸収を増やすことで変化するCO2フラックスを検出するためには、それに適した観測網構築が必要です。そこで「増加」最適化法という新しい手法を開発し、現在展開中の観測網のどこに新しい観測地点を設けるとフラックス評価がより確かになるのか検討しました。その結果、南米・アフリカ・アジア大陸に新たな観測点を置くとよいことが分かりました。この手法は最適な観測網を提案する従来の方法よりも計算負荷が軽いため、15種類の大気輸送モデルを逆問題に利用でき、各輸送モデルが有する不確定性を打ち消すことができます。以上の成果は、今後のCO2観測計画で活かされる予定です。

No 20

国際気象学・大気科学協会/大気化学および地球規模汚染委員会(IAMAS/CACGP)第10回シンポジウムと国際地球大気化学研究計画(IGAC)第7回科学会議を兼ねた国際会議「地球システムにおける大気化学:地域的汚染から地球変動まで」が、9月18〜25日にギリシア・クレタ島で開催された。 温室効果気体、オキシダント、酸性物質、エアロゾルなど対流圏に存在する大気組成の自然変動と人為的変動、それらが地球変動に及ぼす影響を議論する包括的な本会議に、秋元肇領域長以下11名が参加し、それぞれ最新の研究成果発表を行った。 航空機・船舶・地上観測を総動員した野外集中観測は近年世界各地で実施され、アジア・西太平洋域の活動では日本の研究グループが重要な役割を担っていることが俯瞰できた。 それらの観測データは原則的に公開され、化学輸送モデルの検証・精緻化に大いに資している。なお、会期中CACGP open discussionが開かれ、秋元領域長が4年間務めたCACGP議長をAnne Thompson博士(NASA/GSFC)に譲った。

No 19

4月29日-5月3日のゴールデンウィークの真っ直中にホノルルで開かれた"Air Pollution as a Climate Forcing: Workshop"に領域長の秋元が出席した。会場はハワイ大学のEast West Centerの会議室。NASA, NOAA, EPAなどのスポンサーと並んでIPRCの共催で、IPRCのスタッフが100名余りの参加者の世話をしてくれた。テーマは二酸化炭素以外の地球温暖化関連物質であるメタン、オゾン、エアロゾルといった大気汚染物質と気候変動との関係で、大気化学、対策技術、健康影響にまでわたる幅広い範囲での発表が行われた。会議の合間にはフロンティアのIPRC勤務の日本人全員とお会いし、またレセプションではDirectorのDr. McCrearyと話ができ、これまで普段は領域の違いからほとんど知ることがなかったIPRCに直に触れることができたのも大きな収穫だった。

No 18

アジア大陸上で発生した大気汚染物質は、どのようにして西太平洋域へと流出しているのだろうか?この疑問に答えるため、宇宙開発事業団は国内外の研究者と協力し、航空機を用いた集中観測The Pacific Exploration of Asian Continental Emission phase - A (PEACE-A )を1 月6 日から23 日にかけて実施した。  期間中、当領域から滝川雅之研究員が鹿児島の観測基地に赴いて化学天気予報を提供し、観測機の航路決定に多大な貢献をした。同研究員が開発した予報システムは、約30 種の化学種の大気中への放出・移流拡散・光化学反応過程を大気大循環モデルに組み込んだもので、光化学オキシダントや硫酸エアロゾルおよびそれらの前駆物質のグローバルな濃度分布を4日先まで予測する。寒冷前線通過にともなう汚染物質の流出も予報し、見事的中させた。


No 17

10 月よりロシア人のレオニド・ユルガノフ博士が新たに着任。 大気微量成分のリモートセンシングが専門である彼は、ここ数 年、米国・カナダに滞在し、対流圏大気汚染物質衛星センサー Measurements Of Pollution In The Troposphere (MOPITT ) のデータ検証チームで活躍していた。対流圏化学成分の衛星観 測は現在急速に伸びつつある分野であり、各国の大気化学者が 技術開発と科学的利用にしのぎを削っている。 MOPITT ではCO とCH4 の全球的濃度分布が導出可能となり、これら微量成 分の放出源や長距離輸送過程が明らかにされつつある。ユルガ ノフ博士自身はNO2 など他の大気汚染物質のリモートセンシ ングにも挑戦中で、今後、地球環境フロンティアの化学輸送モデル 開発研究チームと協力してモデルと衛星データの相互検証を行 う予定である。

No 16

6 月にパリで開かれたWorkshop on emissions of chemical species and aerosols に秋元領域長、大原サブリーダー、顔研究員、山地推進スタッフが出席し、エミッションインベントリー・サブグループで初めてとなるプレゼンテーションを行った。
9 月3 日には、米アルゴンヌ研究所のストリーツ博士を招き、セミナー講演を行った。本領域では、ストリーツ博士と共同してアジア域の高解像度エミッションインベントリーの作成を目指している。
また7 月にインスブルックで開催された2001IAMAS 国際会議には秋元、Wild 、滝川、Zhang 、Pochanart 、金谷、Najaの7 人が参加した。
同領域ではまた、11 月19 、20 日に横浜研究所で開催する大気組成変動シンポジウム−観測とモデルの統合化をめざして−の準備を進めている。