研究者のHP






海洋生態系モデル研究グループ
図: 親潮水域における30年前と現在の物理〜生物過程の模式図。上図は30年前の状況を示す。活発な鉛直混合によって中深層から表層へ多くの鉄が供給され、春に大規模な植物プランクトンブルーミングが発生し、動物プランクトン現存量も高い。下図は現在の状況を示す。成層化が進んだことで鉛直混合が弱まり中深層から表層への鉄の供給量が減少、その結果植物プランクトン生産が減少し、動物プランクトン現存量も低下する。
このグループは、地球温暖化予測モデルの精度を向上させることを目標として、気候変動に対する海洋の低次生態系の関係について研究を行っています。その一環として親潮水域の海洋環境および生態系の長期変動の実態を明らかにし両者の関係を解明しました。その結果、親潮水域の冬季の中深層の溶存酸素量はこの30年間、減少トレンドを持つことが分かりました。これは同水域で冬季の鉛直混合が衰退したことを示唆します。同期間、表層の塩分低下も確認され、このことから表層の塩分低下に関連して成層が強まり冬季の鉛直混合が衰退したと考えられます。2月〜8月の新生産や春のクロロフィル濃度、ケイ藻現存量もこの30年間で減少していることが分かりました。さらに植物プランクトンを餌とする動物プランクトン現存量も減少していました。鉄は植物プランクトン生産に対して重要な役割を果たしています。その鉄は親潮水域では冬季の鉛直混合によって中深層から表層へ供給されることが分かっています。従ってこの30年間に冬季の鉛直混合が衰退することによって、中深層から表層への鉄の供給量が減少し、その結果として植物プランクトン生産が減少し、さらに動物プランクトンの現存量も減少したと考えられます。

図: 次元生態系物質循環結合モデルNEMURO。植物プランクトン2グループ、動物プランクトン3グループ、栄養塩4成分、沈降粒子3成分、溶存有機物、炭酸系の16コンポーネントが組み込まれている。

海洋生態系に対する温暖化の影響、および、生態系の変化が海洋物質循環や海洋によるCO2吸収を予測するために、プランクトンの動態や栄養塩循環を陽に表現した新しい生態系-海洋物質循環モデルを作成する必要があります。北太平洋海洋科学機関(PICES)のモデリングワークショップにおいて生態系モデルNEMUROを開発し、炭素循環と栄養塩循環を結合させた全球3次元モデル(水平分解能1度)を開発しました。このモデルを用いて、亜寒帯生態系に対するカイアシ類の季節鉛直移住の役割を明らかにしました(Aitaら, 2003)。
図:1983年南大西洋のグリニッチ子午面断面(AJAX)におけるフロン11の貯留量(mol/m2)とフロン11の濃度分布 (pmol/kg)とポテンシャル密度(実線)のモデルと観測の比較。(a)の陰を付けたものはDutay et al. (2002)で紹介された13グループのモデルの範囲。
地球シミュレーター上の超高分解海洋循環モデル(水平分解能1/10度)を用いて、フロンの濃度分布に対する中規模渦の効果を理解するために、海洋中のフロン濃度分布のシミュレーションを行っています。モデルはフロン貯留量の分布をよく再現し、モデルから見積もられた1994年の全海洋CFC総量5.1x 108molは、WOCEの観測で見積もられた5.5 ± 1.2 x 108molと一致しました。また、これらの結果は、今までの粗モデルでは出来なかった1航海の観測などの地域スケールの分布に対する研究にも超高分解海洋循環モデルが使えることを示しました。