研究者のHP




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>>No 30

No 30
稲冨素子研究員を紹介します
  昨年8月から生態系変動予測研究プログラムで研究を始めています。前任地の岐阜大学流域圏 科学研究センターは博士課程から所属しており、森林生態系の炭素循環に関する研究を行っていました。博 士論文研究は土壌から放出される二酸化炭素と土壌によって酸化されるメタンが降雨に由来する窒素量の増 加によってどのように変化するのか調べていました。
調査地での窒素施肥の様子
調査地での窒素施肥の様子
散布機で林床に窒素施肥をして、森林生態系に入る窒素量を人工的に増加させ、 土壌からの二酸化炭素・メタンフラックスを測定しました。フロンティアでは、観測中心の研究から一転、 陸域生態系の炭素循環モデルに窒素循環とメタン動態を組み込む研究をしています。これまでコンピュータ プログラムなど使用したことありませんでしたが、研究員・スタッフのご支援の下、楽しく研究を進めております。 研究成果の一部として、2006年1月iLEAPSにて森林生態系の温室効果ガス (二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素)の収支の評価について発表をしました。

No 29
7月に着任した石井励一郎研究員を紹介します。
 前任地の京都の総合地球環境学研究所では、琵琶湖集水域の人間活動が富栄養 化や種の絶滅など水域生態系に与える影響モデルの研究をしていましたが、これまでの研究の関心の中心は生物多様性の維持機構についての理論的研究で、対象は高等植物や造礁サンゴなどの一次生産者である固着性生物でした。光環境の変化に対する生物の形態や生活史形質の適応、送粉者・植食者との相互作用など を介した新しい多種共存のメカニズムの発見や、人間活動がこれらの群集の生産や組成に与える影響の評価の研究を行ってきました。
いずれのテーマでも私自身 は数理的手法を主に用いるのですが、野外調査や、分子生物学的手法を用いる仲 間に囲まれ、生物のさまざまなスケールでの生態(いきざま)を実際に見る機会に恵まれてきたおかげで、常に観察される現象に根ざしたモデリングを心がけるようになりました。フロンティアでは、気候変動が植物個体の応答に始まる直接的・間接的経路を介してどのように大陸スケールの植生変化という巨視的な現象として現れるのかを探りながら、植生変動予測モデルの構築へとつなげていきたいと考えています。これは衛星観測に対応した大きい時空間スケールでの生態学的現象のモデリングという私にとっての新たなチャレンジでもあります。


No 28
2005年4月に生態系変動予測研究プログラムに着任された笹岡晃征ポスドク研究員を紹介します。
 フロンティア着任前は宇宙航空研究開発機構(旧宇宙開発事業団)地球観測利用推進センターにおいて、 ADEOSU衛星搭載のグローバルイメージャ(GLI)の解析研究チームに所属し、海色リモートセンシングを用い た海洋植物プランクトン、基礎生産の時空間変動分布メカニズムに関する研究を行っていました。博士論文研 究(北海道大学大学院水産科学研究科)では、亜寒帯太平洋において、衛星と海洋観測を組み合わせた海洋植物 プランクトン及び基礎生産の時空間分布変動解析を行い、北西北太 平洋海域においてもエルニーニョ等の気候変動によって、その物理 的な擾乱が海洋にも影響を及ぼし、生物生産の変動にも大きく影響 していることを明らかにしました。

 気候変動が及ぼす炭素循環や海洋生態系への影響を解明するため、海洋における二酸化炭素の 交換量や基礎生産量を正確に見積もることが必要です。当プログラムにおける研究では、衛星 データから海洋の二酸化炭素分圧や基礎生産等を推定し、季節変動及び経年変化を明らかにしま す。さらに、これらの衛星データを生態系モデル等の結果と比較したり、モデルの入力パラメー タに用いたりして、生態系変動予測研究への新しい方法論を展開したいと考えています。


No 27
2004年4月より、生態系変動予測研究プログラムに加わった、加藤知道研究員を紹介します。
フロンティア着任前は、筑波大学生物科学研究科に所属しており、博士論文研究として青海チベット高原の草原生態系における炭素動態について調べていました。その間には、4回ほど現地に赴き、渦相関法やチャンバー法を用いて地表面―大気間のCO2フラックスを測定していました。標高3,200 mの高地での作業は、酸素が薄いためにすぐに息苦しくなったり、疲れてしまったりと大変なこともありました。しかし、だんだん慣れてくると、食事はおいしいし、景色は良いし(すぐ飽きますが)、チベット族などとのふれあいもあり、フィールドでの生活はなかなか楽しいものでした。
フロンティアでは、今までの観測中心の研究から一転して、気候―陸域炭素結合モデルの開発と、それを用いた地球温暖化の予測をテーマに研究をしています。この研究は、気候・大気・海洋の組成、陸・海の生態系が相互に影響を与えながら変化していくのをシミュレートできる、地球システム統合モデルの開発の一部を担っています。これまで、Unixなどほとんど使ったことのない私としては、地球シミュレータをはじめとする大型計算機を使うことで、苦労することが多々あると思いますが、研究員・スタッフの皆様の協力の下、着実に研究を進めていきたいと思います。

 



No 26

2004年4月より、生態系変動予測研究プログラムに加わった、小林秀樹研究員を紹介します。2004年3月に学位を取得し、4月から生態系変動予測研究プログラムで研究を始めています。大学学部では、物理学科で物性物理学を勉強し、大学院では、工学分野の研究室でリモートセンシングによる陸上植生のモニタリング方法について研究してきました。現在は、生態系分野のプログラムで研究する機会をいただき、自分自身の知見をさらに広げようと考えています。博士課程では、東南アジアで森林火災などによって発生する煙が、植物の光合成に必要な日射をどの程度減少させ、さらにその減少が植物の純一次生産量の増減にどのように寄与するかについて、衛星データを用いて広域に評価しました。東アジア・東南アジアの大気汚染はほかの地域と比べても特に深刻です。したがって、この影響による日射環境の変化は、長期的にみて植物の炭素吸収量にも影響を及ぼす可能性があります。生態系変動予測研究プログラムでは、グループリーダーのデニス・ダイ博士とともにアジア全域で日射量の変化と植物の炭素吸収量との関係を調べていく予定です。



No 25

海洋生物過程モデル研究グループが取り組んでいるプロジェクトを紹介します。
  同グループでは、2003年度より地球環境研究総合推進費を受け、東北区水産研究所等との協力のもと西部北太平洋における海洋生態系変動のメカニズム解明をめざした研究をスタートしました。
  本研究では過去50年間に採集された動物プランクトン標本(収集者である小達博士にちなんで通称Odate Collection)の解析が中心となります。Odate Collectionの他には50年以上にわたるプランクトンデータは世界でも米国のスクリップス研究所、イギリスのハーディ研究所が有するのみです。これらの研究所と協力し海域毎のメカニズムを比較することにより、半球スケールの気候ー海洋生態系変動のパターンが明らかになることが期待されます。また本研究で良い結果を出すことにより、近年予算的に軽視されつつある地道なモニタリングの継続の重要性をアピールできればと思います。

No 24

伊藤研究員による出張報告をご紹介します。

10月21〜22日に岐阜県高山市で開催された森林生態系の炭素収支に関するワークショップに参加しました。京都議定書でも森林吸収源が扱われているように、現在の重要なテーマです。会場近くの乗鞍岳山麓にある観測サイトでは岐阜大学および産業技術総合研究所グループによる10年間の継続観測が実施されています。生態系の微妙な変化を何年も観察し続けるのは大変な仕事で、そのため生態系モデルの結果を検証することは一般には難しいのです。このサイトでは貴重な長期データが得られているため、相当の確かさでモデルを動かすことができ、今回発表したその内容も幸い良い反応が得られました。終了後は参加者全員で観測サイトを訪れて更なる議論に花を咲かせました。標高1420mの現地はもう紅葉に彩られていました。


No 23

4月より、生態系予測研究領域に加わった、 鈴木力英研究員を紹介します。

3月までは地球環境フロンティア研究センターの水循環変動予測研究プログラムに所属していましたが、この4月から生態系変動予測研究プログラムに移籍しました。研究対象は、植物と気候システムの関係です。植物の分布は気候によって強く支配されていることはよく知られています。しかし、その季節変化や経年変化まで含めると、未知の部分がたくさんあります。また、植物の活動によって大気中に放出される水蒸気、吸収される二酸化炭素は、地球全体の気候で見ると莫大な量となり、地球全体の気候を左右しています。このような、植物と気候システムとの関係を理解することは、地球変動を知る上での要点であると考えます。水循環変動予測研究プログラムで得てきた知見を元に、人工衛星によって観測された植物のデータや、そのほか最新の気象データを利用することによって、今後は、植物からみた気候システムの研究を進めていきたいと思います。

No 22

12月に我々の領域に着任した佐藤永(さとうひさし)研究員をご紹介いたします。

フロンティア着任前は、九州大学において植物の繁殖生態を研究してまいりました。最近2〜3年は、植物の性表現における大きな多様性が、どのように進化し、いかに維持されているのかについて理論的な検討を行ってきました。フロンティアでは、文部科学省による「人・自然・地球共生プロジェクト課題2:地球温暖化予測結合モデルの開発」の一員として、気候変動に伴う植生帯移動をモデル化することを職務としています。正確な予測モデルが構築できるほど生態学という学問は煮詰まっていないのが現状ではありますが、なるべくリーズナブルなモデルを作るべく、試行錯誤していきたいと思います。特に、近い将来に大規模な変化が起きると考えられている寒帯林は、未来の地球環境に甚大な影響を与えうるため、その動態予測は緊急の課題となっています。そこで、寒帯林における植生動態について、種子の分散過程、定着過程に着目した解析を進めてまいります。

No 21

千葉研究員による、北極海調査の報告を紹介します。

海洋科学技術センターとカナダ漁業海洋省による共同プロジェクトJoint Western ArcticClimate Study(JWACS)に参加、9/1-10/10の間調査船「みらい」に乗船、西部北極海にてプランクトンの調査を実施しました。生物分野の参加者はプランクトンの他にもヴィルス、バクテリアから魚類、海洋ほ乳類にいたるまでの専門家が集い、それぞれに生物量分布/組成を調べました。後日それらのデータを解析することにより、複雑な様相をみせるこの海域の物理/化学環境に応じてプランクトンを中心とした海洋生態系がどのように変化するのか、その過程が明らかになるでしょう。10月に入ってからちょっと荒れたものの海況はおおむね良好、食事もすばらしく、まずは快適な航海でありました。

No 20

2002年4月にグループリーダーとなったデニス・ダイ博士を紹介する。

ダイ博士は2000年6月に生態系地理分布モデル研究グループのサブリーダーとして生態系変動予想領域に参加した。 フロンティアに参加する前はアメリカ合衆国のボストン大学(BU)の教授で、衛星リモートセンシング、陸域生態学、生物気象学の優れた背景を持って、フロンティアに息吹を吹き込んでくれた。「主な興味は陸域生態系と全球スケール気候システム間の相互関係、また、それらがどのようにお互いのそれぞれの変化に対して応答していくかということの理解を深めること。」とダイ博士は語る。ダイ博士の最近の研究は北半球の雪面被覆の動態とその植生成長活動との関係を検証することにある。ダイ博士によると、「我々の研究で、北半球の雪面被覆の春季消滅がここ何十年かで2週間ほど早くなってきたことを明らかにした。この傾向は、より長い成長期と、高緯度植生による大気中二酸化炭素のより多くの取込みの可能性や、直接的に地表エネルギーバランスを変化させることによる気候への影響に関与している。」

No 19

3月のフロンティア合同シンポジウムにおいては、安岡領域長の総括に加え、伊藤研究員が植物と土壌の地球上の炭素循環における役割について、田所研究員らが最近数十年間に起こっている海洋生態系の変化について発表を行った。 生物/生態系というのは一般の方々にとって身近で入りやすい話題ということもあってか、アンケート結果にも現れているように我々の研究テーマに対する聴衆の反応は上々であった。
そんな中、4月から小埜研究員、久保研究員がそれぞれ北海道区水産研究所、北海道大学へと転任となり、ただでさえ少ない当領域の常駐メンバーが6人になってしまい寂しい限りである。
生態系領域の研究を理解していく上で、大切なのは、生物は環境変化に対して常に受的なのではなく、生態系の変化がまた地球環境を変化させるということである。例えば海洋による大気中の二酸化炭素の吸収能力はプランクトンの働きによって左右される。しかし、物理/化学の分野と比べて生態系変動のしくみにまだ不明な点が多いために地球環境変動の予測が難しくなっているのも事実である。 少人数ながらも、私達のやらねばならないことは沢山あるようだ。

No 18

1 月25 〜29 日に北海道根室市および横浜研究所で2002PICES (North Pacific Marine Science Organization )MODEL TASK TEAM WORKSHOP が開かれた。本領域からは千葉・田所研究員が参加した。根室市では2 年前に続き2 回目のワークショップである。 前回のワークショップではNEMURO (Northpacific Ecosystem Model Understanding Regional Oceanography )モデルが開発されている。これは海洋の物理場に植物・動物プランクトンを組み込んだ鉛直一次元数値モデルである。 以前にも海洋の物理場に低次栄養段階の生物を組み込んだ鉛直一次元モデルは開発されていたが、NEMURO モデルでは植物・動物プランクトンを小型種と大型種に区分し、さらに大型動物プランクトンの鉛直移動を取り入れたことによって一歩進んだモデルとなった。 今回のワークショップでは、NEMURO モデルにさらに高次栄養段階の生物を組み込むことによって、現実の海洋生態系を忠実に再現するモデルを構築することを目標とした。その結果、重要なプラントン捕食者であるニシンおよびサンマが組み込まれたモデルが完成し、NEMURO ・FISH (For Including Saury and Herring )と名付けられた。 このモデルは一般に公開され、各国の研究者が北太平洋の生態系変動を理解するのに役立てられる予定である。

No 17

2001 年1 月に当領域に着任した西村貴司研究員の研究のフィールドで あった北海道の知床の森について紹介します。  知床にある遠音別岳の亜高山帯(標高500-600M )ではアカエゾマツとトドマツが沢山 見られます。アカエゾマツは成長が遅い代わりに、トドマツよ り3 倍も長生きしますが、何も起きなければ、トドマツばかり が増えます。知床は冬にたくさん雪が降って、強い季節風が吹 き、毎年いくつかの木が折れますが、被害は2 種類の木で異な ります。アカエゾマツは硬くて強いのに、トドマツは弱くて特 に小さなうちはすぐに折れます。雪や風がトドマツを間引いて くれるお陰で、アカエゾマツは森の中からなくならずにいられ ます。森林を維持しているしくみはとても微妙です。雪の量や 風の強さは毎年大きく変わりますが、近年は異常気象が増えて います。木の寿命はとても永いので、すぐには影響ないでしょ うが、将来は森の様子がすっかり変わるのかも知れません。

No 16

7 月にアムステルダムで開催されたGlobal Change OpenScience Conference にダイ、伊藤、千葉の3 人の研究員が参加した。1500 名以上の参加者がつどい、政治、経済等学際的な内容も含む地球変動研究全般の現状と成果に関する発表が行われた。我々の領域からは、衛星データを利用した雪氷変動が陸域の植生に与える影響の評価、陸域の生態系炭素循環モデルを用いた炭素収支の環境依存性の評価、日本海低次生態系の10 年スケール変動の解析、について計3 件の発表を行った。会議の終わりには、地球システム研究推進の緊急性を世界に向けてアピールする「アムステルダム宣言」がなされた。
また、我々の領域では、衛星観測による気候変動の検知に関する研究を強化する一環として、領域サーバECRP と衛星データ解析システムの導入した。新システムの導入により、以降衛星による全球スケールのデータを利用した生態系変動予測のためのモデル構築、プロセス研究の強化をはかることができるようになると期待される。