ここ数年における研究により、シベリアタイガ帯の典型的な陸域(数kmスケール)での熱・水交換の特性、地表層における水の蓄積、流出の特性が明らかになってきた。2000
年にはこれらの基本的過程や地域特性の知見を元に、地上観測を増強しまた航空機を利用し立体的観測を実施する。
レナ川沿いのタイガ帯は約70 %がタイガ森林であり、他は裸地、草地、湖・河川などの水体である。森林の中で最も卓越している樹種は「カラ松」であり、他の数種類が存在する。また同じ樹種でも、森林密度、樹高、樹木の年齢は森林によって異なる。これらの陸域状態の違いは、季節変化・日変化を起こす大気フォーシングに対する水・エネルギーの応答の差異に表れる。大気陸域系ではその多様性が反映されながらも、独自に非線形なダイナミック応答をしながら一種独特の特性を維持する。
時間推移の中でも、この大気陸域系はある特徴を持つ。冬期から春期にかけて存在する高アルベドの積雪は水の循環リズム、そして一定程度エネルギーの循環を制御する。また、気温が上昇し、凍土が融解すると、落葉樹には葉がつき、蒸散を通じて水熱交換過程に大きく作用し始める。積雪の形成・消滅と森林の着葉が水・エネルギー循環のリズムを制御するが陸面の種類によって大きく異なることが分かっている。
そこで我々は次の問に答えることを考え観測を計画した。
(1) この地域の陸域は大気フォーシングに対してどのような応答を示し、水熱交換にどのような特性があり、また多様性が存在しているか?
(2) 大気陸域系での水・エネルギー状態は季節推移の中で各時期どのような特性を持ち、またどのような時間変化を示し、それに積雪・森林はいかなる影響を及ぼしているのか?
(3) 現存する種々の一次元水熱交換モデル、大気モデルはシベリアに適用できるか?
2000 年には次の4 つの新しい方策をとる。観測の概要を図1
に示した。
(1) パッチスケールでの水・エネルギー交換の地上観測を、レナ川左岸と右岸の森林、草地のタワー・マストが計5
箇所、広域簡易観測点を4 ヶ所に増やす。(2)
広域の顕熱・潜熱(水蒸気輸送量)などを測定し、水蒸気をサン
プリングするために航空機観測を行う。
(3) ゾンデ観測をヤクーツク周辺4 ヶ所で増強する。
(4) 多様なデータを基に一次元水・熱交換モデル、大気モデルの有用性と再現性を調べる。
観測領域はヤクーツク市の北側であり、スパースカヤとアラス帯に位置するティングルーを含む地域であり、観測期間の中心は2000
年4 月から6月であり、積雪期、融雪期、森林の開葉前、開葉後を含む。その内4月10日から6月20日頃にかけて航空機観測を実施する。
図1 :2000 年集中観測の概念図

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