RESEARCHERS FRONTIER Newsletter No.10 Mar.2000 

研 究 者 紹 介

遠藤伸彦
遠藤 伸彦
水循環予測研究領域

Dr. Nobuhiko Endoh

Hydrological Cycle Research Program
 1998年10月1日に水循環予測研究領域に赴任してきました。
広域水循環グループに所属し、主にチベット高原とその周辺地域の熱・水循環の解析に取り組んでいます。
チベット高原の存在がモンスーン循環の形成・維持に重要なことはよく知られている事実ですが、チベット高原上での熱・水循環については解明すべきことが多いのが現状です。1993 年のCREQ と1996 年からのGAME/TIBET と二回のプロジェクト観測から、春季には顕熱フラックスによる大気加熱だけでなく地表付近の凍土の融解に、一方モンスーン季には地表面蒸発にエネルギーが消費されることを明らかにしました。また、日中に可降水量が減少し、夜間に可降水量が増加するとともに大気下層で水蒸気が蓄積される現象が観測され、既存データの解析などから熱的局地循環による水蒸気輸送に関連した現象である可能性を示唆する結果が得られつつあります。
またチベット高原内の熱・水循環だけでなく、アジアモンスーンの季節進行の理解という大きな課題の中で、チベット高原と熱帯循環、中高緯度偏西風循環の相互作用を解明してゆきたいと考えています。

吉村純
吉村 純
地球温暖化予測研究領域

Mr. Jun Yoshimura
Global Warming Research Program
昨年4 月より、地球温暖化予測研究領域に参加しています。それ以前は気象研究所で、気候モデルを用いてエルニーニョや台風についての研究をしていました。現在の研究テーマは、気象研時代から取り組んできたもので、地球温暖化にともなって熱帯低気圧(台風を含む)の発生数や強度などがどのように変化するか、というものです。これまでの研究では、高分解能の大気大循環モデルを用いた数値実験において、全球的には熱帯低気圧の発生数が減少するという結果が一貫して得られています。地域的には発生数が増加する海域もあるかもしれませんし、また、熱帯低気圧にともなう風や雨の最大強度は全球的に見ても増加する可能性があります。近い将来、地球シミュレータを使って、今よりずっと高分解能の数値実験を行なった場合、同様な結果が得られるのか、それとも異なった結果が出てくるのか、大いに関心を持っています。この分野はまだまだ未解明のことだらけですが、気候モデルを用いていろいろ工夫した数値実験を行なうことにより(もちろん観測データも欠かせませんが)、かなり多くのことを理解できるのではないかと期待して、ワクワクしております。
 私は、社会に役立つ研究者でありたい、と思っています。現在の研究テーマを選んだ理由も、温暖化した地球がどういうものかというイメージを(一部だけでも)描くことにより、温暖化抑制に向けた現代文明の大転換を促したい、という気持ちがあったからです。ときどき、環境NGO 活動にもボランティアとして参加しています。遠い将来は、経済学的な見地から、現代文明の大転換そのもののイメージを描くことを研究テーマにしてみたいと夢見ています。


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