昨年は地球フロンティアにとって大きな出来事がいくつもありました。
地球フロンティア研究システムにおけるモデル統合化領域は、良きにつけ悪しきにつけ、モデル開発に関係する様々な分野と協力し開発を推進して行く新たな試みであると思います。先端的な大循環モデルとしての気候モデルを組織的に開発/改良することは一大事業ととらえることができ、モデル統合化領域は正にその様な事業に一年前からゼロからの取り組みを始めました。この新たな試みが成功するために最も大切なことは、気候研究における具体的な研究目的に対する明確な動機付けが共有されていることであると思います。この点に関して、我々はまず気候専門分野の研究者と他分野からの研究者との間に"人的ネットワーク"を確立し内部勉強会等を通じて目的の共有という事をまず目指して来ました。幸いにして快く賛同してくれる人が現れ、今までゆっくりではありますが、着実に歩んで来ました。
最近では、東京大学気候システム研究センター(CCSR)と国立環境研究所(NIES)と共同研究契約を結び、大気大循環モデルと結合モデルの開発に一段と拍車がかかりました。また地球シミュレータ開発センターとも協力関係を密にして、共通の課題である大循環モデルの高速化に向って進んでいます。現在の研究活動は大きく3つのグループに分類でき、以下に簡単な紹介を行います。
(1)結合モデル開発
このグループでは、以下の3つの事が同時にグループ1,2および3で行われています。グループ1はCCSR/NIESの大気大循環モデルの高解像度化を進めるグループで、例えば、雲―放射過程、サブグリッドスケールのパラメタリゼーションやそれらに関係するパラメターの調整を行っています。グループ2では自由表面を直接的に計算する海洋モデルMOM3を使った高解像度計算の準備を進めています。自由表面を直接的に計算するという機能は塩分評価やデータ同化研究のみならず、高解像度モデルにおいて時間のかかる繰り返し演算を含むポアソン方程式を使わなくてすむという数値計算上の利点があります。また、複雑な結合モデルの振る舞いは内部の細かなモデル化に大変敏感なため、グループ3では今までの経験がある中程度の解像度から開発を始めました。
(2)次世代モデルの開発
我々が取り組み始めた問題としては以下のものがあります。
1)流れが持つラグランジュ的特性を良く表現できる移流スキームの開発。とりわけ、CIP法に注目し海洋モデルにそのスキームを適用しようとしています。我々はこのスキームの導入によりトレーサー場がかなり改良されることを期待しています。
2)緯度―経度座標を用いる高解像計算を行うにあたり避けられない問題の一つに、経度方向の格子点間隔が極に近づくにつれますます小さくなるという事実があります。このような欠点のない新しいダイナミカルコアーとして、現在球面を準等間隔の格子点で一様に覆う格子点系の開発を進めています。(図A,B)
3)雲解像モデル。今はチームを立ち上げつつある時期なので、現段階では特記すべき事はありません。
(3)海洋データ同化
大切な目標の一つに、色々な気候研究に役立つ比較的信頼性の高い海洋データセットを作成するという事があります。現在はデータ同化プロセスの核となる海洋モデルMOM3のアジョイントコードを開発しています。アジョイント法において同化は力学的に整合性のとれた形で行われますので、この手法はそうでない場合におけるデータの力学的不整合から生じるノイズを抑える巧みな方法であると言えます。
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