RESEARCHERS FRONTIER Newsletter No.11 July.2000 

研 究 者 紹 介

千葉早苗
千葉 早苗
生態系変動予測研究領域

Dr. Sanae Chiba

Ecosystem Change Research Program
 2000年4月に生態系変動領域の海洋生物過程モデルグループに着任しました。この春大学を卒業したてのほやほやの新人です。大学では南極海のプランクトン群集構造の変動要因について、主としてフィールドワークに基づき汐まみれになって研究してきました。フロンティアでは、日本周辺を含む北太平洋に舞台を移し、過去に蓄積されたデータを収集、整備、解析することにより、プランクトンを中心とした海洋生態系が十年?数十年間の環境変動に応じてどのように変化するのかを明らかにしていきます。研究海域や手法が変わっても大きなゴールは同じ「生態系と地球環境の相互作用のプロセスを探ること」です。 
  生態系は環境変動に対して敏感に反応しますが、その反応は常に受け身ではなく、生物活動によって環境もまた変化します。非常に大きい時間スケールの例をあげれば、数十億年前に登場し、光合成により地球の大気を酸素で満たし、現存する生命を有害な紫外線から守るオゾン層の形成に貢献したのは「ラン藻」という小さな海の生き物です。こうした生物活動による環境へのフィードバック効果を考慮することなしには、より現実的な地球変動モデルを構築することはむずかしいでしょう。
 実は私は研究の道に進む以前は海洋研究所で事務スタッフとして勤務していたという変わった経歴の持ち主です。他の研究者の方々に比べ長年の回り道をしてきたことになりますが、その間に多くの貴重な「拾いもの」をしました。 その経験が今科学をするうえでも私の力となっています。学会や論文で難解な専門用語で議論することだけが仕事ならば、私は科学者であることにさほど魅力を感じません。しかし、研究を通じて一般の方々に向かいあい地球の自然や生命の妙を伝えることができれば、それが変わり種である私の使命だと思っています。S.J.Gouldのように素晴らしくはできないだろうけれど。
 最後に経験から一言「芸は身を助く」よ。

久保拓弥
久保 拓弥
生態系変動予測研究領域

Dr. Takuya Kubo
Ecosystem Change Research Program
 「生態系アーキテクチャーモデル」 グループの研究目的は 三次元構造 (アーキテクチャー) をもつ 陸上植物の群集動態のモデリングです。 複雑なアーキテクチャーをもつ有機物である樹木と それらからなる樹木集団の 計算機モデル化を 私は研究しています。
 光合成や炭素固定に関する微視的な植物生理学の実験的研究と リモートセンシングで観察されるような巨視的な植物分布変動を つなげて理解する上で、 このような構造と機能の動態の解明は 本質的です。 なぜならば、 この中間的なスケイルにおける 植物個体間の相互作用 (例えば、光・水・栄養塩類・空間をめぐる資源競争) によって、 いかなる生理的特性をもつ樹木種が この惑星表面において その地理的分布を拡大しうるのか 決定されるからです。
 野外調査の観測結果に基づいて 私が計算機内に構築している 樹木/森林動態シミュレイターは 「樹木たちが成長するにつれて 群集内の局所環境はどう変化していくか」 「そのような自律的な変動環境の中で, どの樹木種が卓越してくるのか」 といった 生態学的な問題の解明を目指しています。 そのためには、 野外データー処理の統計学的手法・ オブジェクト指向プログラミング・ 三次元視覚化技術などが 重要になります。
 


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