Researchers FRONTIERNewsletter No.12 Oct.2000

研究者紹介

李氏写真 李 亨模
Dr.Hyungmoh Yih
地球温暖化予測研究領域


 夏の初め、およそ3ヶ月前に地球温暖化予測研究領域の古気候研究グループに加わりました。以来、暑さとともに机の上には海氷関連の文書がどんどん山積みされるようになりました。私は、地球の気候システムの中で海氷が果す役割について研究しています。

 このテーマに興味を持ったきっかけは、カナダのバンクーバー島沖の沿岸循環について研究する間、海洋沿岸部に流入する真水の重要性を認識したことにあります。さらに南極大陸周辺の海氷の前進・後退、季節的な凍結と融解を知ったことで、モチベーションはいっそう高まりました。幸運にも、私は数値モデルという方法で興味を追及する機会が与えられました。ウェッデル海で砕氷船を用いた現地調査と流速計を係留維持する機会も得ました。私はこのような過去の経験を生かして、地球温暖化予測研究領域の研究に役立てたいと思います。皆で研究活動の新しい芽を育てれば、いつの日か感謝祭を祝えられることでしょう。

 私はよく田町駅で電車を降り、あるサンドイッチ屋の前をよく通ります。その店では何種類かのサンドイッチを扱っていましたが、どれもその中身から名前がつけられています。そこで私は時々こう考えます。「海氷は大気と海洋の間に挟まれている。我々は、地球の気候システムを研究するため、海氷を挟んだ二つの媒体を結合しようとしている。とすると、地球の気候システムは海氷気候システムという名前になるな・・・」と。

Wild氏写真 ジェームス・オリバー・ワイルド
大気組成変動研究領域


 オゾンは、温室効果ガスであるという点からも、またOHラジカル濃度をコントロールしそれに伴い対流圏に存在する他の気体成分の酸化に間接的に関わるという点からも、重要な大気組成成分といえます。さらにオゾンはそれ自身強力な酸化能をもっており、地表近くで多くの動植物に害を及ぼしうる汚染物質でもあります。対流圏では自然起源によっても生成しますが、近年の対流圏オゾン濃度が前世紀のものより増加していることから、人類の進歩と工業化の副産物として放出された窒素酸化物、炭化水素などからの生成が大きく寄与していることが示唆されています。工業化の進んだ都市域でオゾンによって光化学スモッグが引き起こされることを大半の人は知っていますが、オゾンの生成は局所的な現象にとどまらず、より広い地域に影響を与えていること、そして最終的には地球全体に渡って大気酸化のバランスに影響していることを知っている人はずっと少ないでしょう。私たちは大気の酸化能をどのように変えているのでしょうか? 気候にはどのように影響するのでしょうか? 将来、都市部の空気の質や農作物の収穫量にはどんなインパクトがあるでしょう? 大気中におけるオキシダント生成・消失速度の変動幅は非常に大きく、気象的なプロセスとの結合が複雑であることから、これらの疑問に取り組むには、解像度の高い化学輸送モデル(CTM)を使用する必要があります。

 私は、FRSGCの大気組成プログラムの一環として、対流圏化学を詳細に取り扱うことのできる完成度の高いCTMを用い、短寿命の化学物質が気候に対し重要な間接的効果をもたらすことを論証しようとしています。また、オゾンとその前駆物質に関する主要大陸間の長距離輸送についても研究しています。近年、中国における急速な発展と工業化、自家用車の普及が、米国の都市部で進められている大気質改善計画を帳消しにするのではという懸念の声があがっています。これらの影響が遠く離れた北アメリカにまで及ぶとしたら、日本への影響はさらに重大だということになるでしょう!

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