RESEARCHERS Frontier Newsletter No.13 Jan.2001


研究者紹介



高橋氏顔写真

高橋 純



Jun Takahashi

国際北極圏研究センター

99年3月よりFrontier/IARCに参加している高橋です。現在、極域での高密度水輸送機構について数値モデルを用いた研究を行っています。

 北極海沿岸域では開氷域での海面冷却により高密度水が形成され、何らかの機構によりこれらの水が海盆方向へと運ばれ、北極海の中・深層水となると考えられています。
 このような高密度水の輸送機構は北極海の中・深層循環や、特徴的な冷たい塩分躍層の維持に密接に関連しており、その機構の解明は重要であります。このような機構の一つとして陸棚斜面上での中規模渦による高密度水の輸送が考えられます。特に渦流に着目し、海底直上の層のみに運動があるものとした簡単な数値モデルを用いて実験を行ったところ、渦流の非線形性と層構造に起因する背景渦位の効果により中規模渦が岸から離れ、海盆方向への速度を有することが示されました。

 これは渦を誘起し得る岬状の海底地形や傾圧不安定と組み合わせて考えた場合、中規模渦の高密度水輸送への寄与を表すものと考えています。また高密度水輸送機構として、海底境界層でのエクマン輸送も重要であると考えられます。現在、北極海を想定した大循環モデルにより、この効果を実験する準備をしております。これらの研究により全球モデルでの高密度水輸送のパラメーター化、輸送機構の解明へ貢献したいと考えています。





富田氏顔写真

富田 浩文



Hirofumi Tomita

モデル統合化領域

 1999年 4月にモデル統合化研究領域に着任しました。大学では、単純な系での熱流体力学(ベナール対流等)を研究していましたが、地球流体力学にも非常に興味がありました。

 現在、次世代モデル研究グループで次世代気候モデルのダイナミカルコア(流体力学部分)の研究開発をしています。大気大循環モデルの力学過程は、今のところスペクトル法という手法で解かれるのが主流です。この方法は、計算精度の面では他の手法を圧倒していますが、高解像度化したときに計算効率が極端に悪化することが指摘されています。

 そこで、スペクトル法の代わりに地球を適当なメッシュで覆い尽くして計算する格子法という手法を用いますが、単純な緯度経度格子 では、極の付近に経線が集中して、やはり効率的な計算が出来ません。問題の抜本的解決として、球面を出来るだけ一様に覆う格子を考えます。その一つとして、正二十面体格子があります。現在、私は、この正二十面体格子に焦点を当てて、全球のダイナミカルコアを開発しています。この格子法では、未だ長期の気候計算の実績がなく、まだまだ、多くの問題を抱えていますが、着実に良い方向に向かっていると確信しています。





野中氏顔写真

野中 正見



Masami Nonaka

国際太平洋研究センター

亜熱帯循環域で海表面から表層下へ沈み込んだ海水の一部は熱帯域へ、更には赤道域へと 輸送されるものと考えられている。この中緯度域と熱帯域とを結びつける海洋循環は、海 洋亜表層のトリチウムや塩分の分布から示唆され、太平洋熱帯域の海洋構造の形成に大き な役割を果たすものと考えられている。平均場への影響と同時に、北太平洋における十年/ 数十年規模の大気海洋の変動に伴う海水温偏差が、この海洋循環によって赤道域へ伝播し、 赤道域の十年/数十年規模の海表面水温偏差を作る可能性も示されている。エルニーニョ現 象にも見られるように、赤道域の海表面水温偏差は大気場の変動を励起し、地球規模の気 候に影響を及ぼす可能性がある。

 そこでこの中緯度域と熱帯域を結ぶ海洋循環に注目して、中緯度域と熱帯域の海水交換経 路、それに伴う北太平洋から赤道域への温度偏差の伝播、また、この循環の強弱の十年規 模の変化と赤道域の温度場の関係等について、現実に近い海洋循環場を数値的に再現する 海洋大循環モデルを用いて研究を行ってきています。

このように、十年/数十年規模の気候 変動における海洋の役割、特にある場所に生じた温度偏差が海洋を通じて遠隔地へ伝播す ることが気候変動へ及ぼす影響に興味を持って研究を行っています。



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