RESEACHERS Frontier Newsletter No.15 Jul.2001


研究者紹介



パトラ氏顔写真
プラビール パトラ

大気組成変動予測研究領域
 FRSGCにおいて私は大気輸送モデルや逆計算手法を用いた全球炭素循環に焦点をあてて研究を行っています。この研究は、国際的な研究活動(TransCom-3プロジェクト)の一環として、またFRSGCの地球変動の予測という目標に沿った我々独自の研究課題という二つの側面から進められています。

 我々は現在TransCom-3の参加者によって提供されたCO2輸送モデルの計算結果と大気中CO2濃度の観測データを利用し、逆計算手法によって推定された局所的な炭素フラックスの評価を行っています。これによりCO2発生源の不確定さを明らかし、その改善のための方策の検討を目指しています。

 さらに、我々は温室効果ガスの季節変動、年々変動、および長期的な経年変動についても解析を進めています。数種類のガスの長期的な経年変動や空間的変動について調べるために、衛星による観測データを解析中です。これらの解析データは、様々な大気循環パターンが微量ガスの分布に対して果たす役割を研究するために役立つでしょう。

 私はこれまでに大気科学に関連する様々な研究活動に携わってきました。これには、大気と海洋環境中の様々な微量ガス(CH4、N2O、およびいくつかのハロゲン化合物など)の観測とモデリング、数値予報モデルを利用した熱帯低気圧のシミュレーション、大気のテレコネクションとEOF解析の研究、などが含まれます。そしてもちろんこの中のいくつかについては、現在も興味を持っています。




福富氏顔写真
福富 慶樹

水循環予測研究領域
 私は2001年2月より水循環予測研究領域に参加しており、アジア太平洋およびユーラシア大陸域の大気水循環過程の長期変動に興味を持って解析に取り組んでいます。

 ユーラシア大陸上の水循環過程はその地域の気候のみならず、地球上のさまざまな気候サブシステムに影響を与える重要な要素であると認識されています。とりわけ、アジア太平洋域の気候 (ENSOやモンスーンを含む) や、大西洋域の気候など個々のシステムと活発な相互作用をしていると考えられています。そこで、我々はこの広大な大陸上の水循環の特徴とその変動に対して役割を果たす要因に注目しています。

 降水は陸域においても気候変動の代表的な指標の一つですが、その変動をもたらす要因を追及していくことが、上記の結合系を明らかにしていく上で重要です。例えば、年々の少雨や多雨イベントの発生は、大気のテレコネクションによって生成される特定の構造を持つ大規模大気循環場に密接に関係し、そのような大気循環場は水蒸気の輸送や集積量を変化させ、降水--蒸発過程を通した地域的な水バランスの変調を引き起こすと考えられます。

 我々の目下の課題は、このような一連のプロセスの定量化と、それに影響を及ぼす大規模大気循環場の特定です。これを達成するため、大気客観解析データや衛星観測データをベースにした統計的および力学的手法を用いて、特に経年変動時間スケールのユーラシア域の水収支と他の気候サブシステムとの関係について解析を進めています。






地球科学技術推進機構[ESTO]の事業紹介

海洋における炭素循環モデリングのための生物物理フィードバック機構

 地球機構では1988年より科学技術庁(現文部科学省)からの研究委託を受け、関係機関の協力によりその結果を報告してきました(2003年まで継続中)。陸面と海面に到達する太陽エネルギーの殆どは熱エネルギーに変換されますが、その大部分は光化学・生物化学過程を通じて全地球の炭素の循環に影響を与えます。海洋の植物プランクトンのために海洋表層では太陽エネルギーの鉛直下方への伝達が妨げられ、そのために海洋循環が変わる可能性があります。我々は人工衛星データから見積った植物プランクトン量を数値モデルに組みこみ、太陽放射エネルギーの放射伝達過程に関する数値実験を行いました。その結果をJGOFS国際共同観測データと比較したところ、植物プランクトンが光合成を行うために海洋表層に熱を蓄積すること、また熱帯太平洋の乱流混合層の厚さを変化させ、赤道潜流を強化する可能性があることを示しました。(Nakamoto et al., 2000: Geophys. Res. Letter, Vol.27, No.6, 747-750;Nakamoto et al., in Press. Geophys. Res. Letter.)



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