地球シミュレータ特集


地球フロンティアと同じ敷地内に建設中の地球シミュレータと名付けられた超大型コンピューターの完成が3 月 に迫っています。今月号では、地球シミュレータに関わる地球フロンティアの活動等についてご紹介致します。

このコーナーでは、松野システム長により、地球シミュレータの必要性、期待される効果などをご紹介いたします。

地球シミュレータでより確かな温暖化予測を

松野太郎(地球フロンティア研究システム システム長)

 球温暖化防止の為、二酸化炭素(CO2 )など温室効果ガスの放出を削減することを決めた「京都議定書」が間もなく批准され発効される事になりました。 地球温暖化など地球環境問題の特色は、未だ被害が現実のものとなっていないにもかかわらず、専門科学者の描く未来の姿によって社会が行動を起こしている事です。

 このように重大な社会の意志決定の根拠となる温暖化の科学的予測を支えているのがコンピュータを駆使した気候モデルによる将来の気候のシミュレーションです。

 しかし地球温暖化予測の確度はまだ不充分です。 原因の一つは気候を支配する様々なプロセス、例えば雲による日射の反射や積乱雲(入道雲)の発生・発達などについての知識が不充分で、モデルの中で正しく表現されていないからです。

 この欠陥をなくすには、これら個々のプロセスについての知識をより確かなものにすることは当然として、それと同時にモデルの解像度を高くすることも必要です。 10 年前の温暖化予測に用いられたモデルのほとんどは500kmのメッシュでした。 これではせいぜい低気圧を覆う雲の塊を表す程度で細長く延びた前線の雲は表せません。

 現在は、メッシュ間隔が100から200km 程度ですから前線は何とかなりますが夏に集中豪雨を起こす数10km の積乱雲は直接表現できません。 100km の格子ではその範囲の平均気温・湿度の上下の差から気層の不安定の度を調べ、経験則によって積乱雲の発生と強さを算出するという方法(パラメタリゼーション)をとるほかないのです。

 間もなく完成する地球シミュレータは、現在のスーパーコンピュータの数100 倍(少し前の1,000 倍)の計算速度を持っています。 超並列計算機の為理論ピーク性能通りには行きませんが、それでもメッシュ間隔10km 程度で全地球を覆うことが可能となると思われます。 気象研究所のグループは20kmメッシュのモデルを開発し、台風や梅雨をより良く表現しようと計画しています。 しかし、まだこの段階では積雲はパラメタライズして扱わなければなりません。

 そこで地球フロンティアでは、将来計算機能力が更に向上することに期待して、5 km メッシュで積乱雲を直接計算する気候モデルを開発することを目指し、現在それに向けた様々な研究と準備をしています。 この状況を分かりやすくするよう図を描いてみました。

 一方、これと別に海洋モデルも10kmメッシュを目標にしています。 そうすれば、現在の200km 程度のメッシュではパラメタライズされている100km 以下の大きさの「中規模渦」を直接表現し、渦による熱や塩分の輸送を曖昧さなく取り入れられると期待しています。 これと中解像度の大気モデルを結合したモデルで温暖化実験を行うことにより、現在論点となっている温暖化に伴い北大西洋北部の沈み込みが弱まるか否か、という重要な問いにも信頼できる答えを出したいと考えています。


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