プレス発表特集

今号では、今年度プレス発表を行った研究についてとりまとめてご紹介致します。



大陸間をわたるオゾン汚染
-東アジアの大気汚染物質が地球温暖化を促進-



秋元領域長をはじめとする大気組成変動予測研究領域では、地球温暖化の原因の一つとされているオゾンに関して、生成や広がり方についての研究発表を行いました。


秋元 肇(大気組成変動予測研究領域 領域長)


境大気汚染というとこれまでは酸性雨をはじめとして、中国の汚染が日本にやってくるという話を聞かされた方が多かったと思いますが、最近はアジアの汚染がアメリカに、アメリカの汚染がヨーロッパに、ヨーロ ッパの汚染がアジアに影響するという大陸間をわたる大気汚染が注目されています。

 地球フロンティア・大気組成変動予測研究領域では、早くからこの問題に着目し研究を続けてきましたが、オリバー・ワイルド研究員との最近の研究により、東アジア・北米・ヨーロッパの各大陸で放出される大気汚 染物質(窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素)から大気中で生成するオゾンが、大陸間を長距離輸送されて他の大陸にまで影響を与えることが明らかにされました。

図1 東アジア排出量変化

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東アジアからのオゾン前駆体物質の排出量を10%増加させた時のオゾンの高度方向を積算した平均 濃度(ppt )と、緯度方向を積算した平均濃度(ppt )の増加(平均値)。影響は北米、ヨーロッパに及び、 特に北米への影響が強い。


 地球大気のオゾンの約90%は成層圏に存在し、対流圏に存在するのは残りの10%程にすぎませんが、対流圏のオゾンは特に上空で温室効果ガスとして地球温暖化に大きな影響を与えるだけでなく、地表付近のオ ゾンは人間の健康をそこない、森林衰退や農作物の収穫量の減少をもたらす有害大気汚染物質です。


 特にこの研究では東アジアから放出された大気汚染物質から生成されるオゾンは効率よく対流圏上部に運ばれた 後、偏西風に乗って容易に北米、ヨーロッパにまで到達し、地球温暖化を促進することが明らかになりました(図1 参照)。

 一方、ヨーロッパで放出された大気汚染物質から生成されたオゾンは比較的低空を輸送され、東アジアの地表付近のオゾン汚染を促進することが分かりました。またアメリカから放出された大気汚染物質によるオゾン は、東アジアからの場合とヨーロッパからの場合のちょうど中間的な振る舞いをし、大西洋が太平洋やユーラシア大陸に比べて距離が短いこともあって、対流圏中部を中心にヨーロッパに大きな影響を与えることが明らかになりました。


図2 ヨーロッパのオゾン増加が東アジア(札幌)に与える影響


 またこの研究から、図2 に示されるように例えばヨーロッパから東アジアに長距離輸送されるオゾン濃度は春が最も高く、次いで秋に高いことが分かりました。北半球のリモートな地点では地表付近のオゾン濃度は一般に春に ピークとなることが知られていますが、その主な原因がこうした大陸間をわたるオゾンによることも明らかになりました。

 本研究の成果は昨年11 月16 日発行のアメリカ地球物理学会誌「Journal ofGeophysical Research 」に掲載されています。

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