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スリランカ政府は現在、決断を下すべき状況におかれています。スリランカは電力の60%を石油や石炭による火力発電より安価な、水力発電によってまかなっています。政府はマハウェリ川にさらにダムを建造することにより水力発電を拡大したいと考えています。
タラワケレ付近に候補地が2カ所あり、そのうち一方は潜在的な水力発電能力が大きい(125 MW)ものの、他方より資金および環境面でのコストが大きくなります。もう一方の候補地は潜在的発電能力は小さい(90 MW)ものの、社会的および環境面でのコストも小さく抑えられます。スリランカ政府は、このうちいずれかを選択するにあたっては、開発費用、開発便益、およびリスクを慎重に検討する必要があります。なお、このプロジェクトは日本政府からの借款による融資を受けて進められることとなっています。
新たなダムが収益をあげられる見込みについての評価は従来から、歴史的な河川流量と降水量の記録に基づいて行われてきました。現在、科学的見地は地球温暖化が実際に進行中であるということで一致していますが、このような温暖化現象はスリランカでも確実に発生しています。河川流域の住民や河川担当者は水源や水流での水量が減少していると実感しています。歴史的な河川流量に基づいて建造された既存の貯水池が一杯になったことは、過去20年間でわずか3度しかありません。年ごとの大きな変動はあるものの、マハウェリ川の流量は実際に減少しつつあるのです。 しかし、流量のこの減少は森林破壊、沈泥、環境悪化、貯水池の建造、気候変動のいずれに起因するものなのでしょうか?これに対する答えが緊急に求められています。実際に降水量も減少しているため、気候変動が関連していることは確かです。この傾向は継続するのか?これは可逆的な現象なのか?洪水と干ばつの頻度に変化はあるのか?エルニーニョなどの気候の変化がどのような役割を持つのか?10年以上の長い周期の気候変動が発生するのか?など河川担当者にとっては依然として多くの疑問が残ります。 これらの疑問は、政策立案者、河川担当者、農家、および一般の人々にとって気候変動が重大な課題となる好例です。従来の水資源計画に対するアプローチは安定した気候を前提にしたものでした。しかし現在では、リスクにそなえて最適化するための方法は有効ではありません。貯水池の運営に利用されるガイドラインも怪しいものです。もはや誰も過去の歴史に基づいて行動することができなくなっているのです。
地球フロンティア研究システムで行われているような研究こそ、これらの疑問に解答をもたらすことができます。最新の気候モデリング研究を利用する上で特に困難なのは、250キロメートル規模のグローバル・モデルから、わずか数キロ規模のマハウェリ盆地で発生する事象を解釈する必要がある点です。例えば、スリランカは東西わずか270キロ、南北は400キロしかなく、最新のグローバル気候モデルのわずか4格子内に収まってしまいます。しかしこれらの格子内で気候はそれぞれ非常に多様です。したがって、スリランカが700の格子に分割されることになる、地球シミュレータを利用しての高精度の研究が特に有用となります。 マハウェリ川盆地から眺めれば、気候の変化と変動により、河川担当者が非常に大きな課題を抱えているのが具体的に実感できます。社会全体にとって重要な意味を持つ水文のばらつきと変化を理解するためには、気候と環境について十分に小さな規模で理解することが不可欠です。環境の変化を予測し、気候変動に適応する我々の能力をうまく活用するためには、気候と水文学に関する研究を発展させると同時に、水資源の設計、管理運営、および政策を作成する上でのパラダイム・シフトが必要なのです。しかし、これらの変化はまだ起きていません。今年、スリランカは規模の大きい方のダムを建築することを決めました。
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