領域ニュース
−その1−


高谷康太郎研究員が、大気科学ジャーナルに発表した「東西非一様な基本場中における停滞性及び移動性準地衡擾乱の位相依存性のない『波の活動度』フラックスの定式化」の論文で、2002年山本・正野論文賞を日本気象学会より受賞しました。これまでの「波の活動度フラックス」は、天候に大きな影響を及ぼす東西非一様な西風中のロスビー波束の3次元的な伝播の様子を、時間平均せずには、正しく表現出来ませんでした。高谷研究員は、この欠点を克服する、新しい「波の活動度」を導入し、波束伝播とその平均場への効果をスナップショットとして表現できるフラックスの定式化に世界で初めて成功しました。この成果は、地球流体力学への寄与が期待されるだけでなく、既に大気海洋関係の研究コミューニテイでは気象変動現象の解析ツールとして活用されています。実際、この新しい表現形式は、気象庁の月例気候診断においても過去3年以上にわたって使用され、その有効性・実用性が高く評価されて来ました。

水循環予測研究領域

11月6-7日のGAME国際サイエンスパネルの会議(東京)に安成、木村、藤吉、増田、沖が出席し、モンスーンに関する領域気候モデルの会議の開催、年々変動議論の為の1997〜2001年の5年間の気象データの収集、共有が決まりました。10月29〜30日のGAMETropicsのワークショップ(タイ、チェンライ)に安成、増田、沖が出席しました。水資源予測の科学的基礎を重点目標にし、アジアの研究人材養成の重要性が強調されました。9月30日〜10月1日にアメリカメリーランド州で開催された全球土壌水分プロジェクト(GSWP)のキックオフワークショップに沖、本谷が参加し、共通の気象データセットを用いた陸面過程シミュレーションによるモデル比較実験と、今後行われるより長期間のシミュレーションのための戦略が議論されました。

10月29〜31日に東京で開かれた「東アジアにおけるメソ対流系と豪雨・豪雪に関する国際会議」で、梅雨前線帯で観測されたメソ擾乱のシミュレーション結果を中村が発表しました。

地球温暖化予測研究領域

古気候グループのウィン・リー・チャン研究員を紹介します。

ウィン・リー・チャン研究員

個人的には、ロンドン大学で進めていた簡易な放射や対流プロセスを含む恒星大気の数値モデルに興味があります。日本で働き始めてから、研究は我々の星「地球」に、より近くなってきました。

地球温暖化予測研究領域の古気候グループのメンバーとしては、大陸変動の結果として起こる塩水の北大西洋への流出量が、気候にどのような影響を与えるのか研究を進めています。プリンストン大学地球流体力学研究所(GFDL)で開発されたR15大気モデルと、コックス海洋モデルから構成される大気海洋結合モデルを数千年間走らせ、地形の変動による気候への影響を調べるための実験データを得ることができました。

現在は、北大西洋の熱塩循環における地中海流出水とアガラス海流のそれぞれの役割と、それらが地球全体の海洋循環と気候に与える影響を研究しています。

大気組成変動予測研究領域

Patra研究員とMaksyutovサブグループリーダーは、世界各地のCO2濃度観測データから地域規模の発生・吸収量(フラックス)を評価する逆問題に取り組んでいます。現在の観測点の配置は濃度の長期変動検出を目指したもので、地域規模のフラックス評価には向いていません。京都議定書に基づき温室効果気体の放出を減らし、植物による吸収を増やすことで変化するCO2フラックスを検出するためには、それに適した観測網構築が必要です。そこで「増加」最適化法という新しい手法を開発し、現在展開中の観測網のどこに新しい観測地点を設けるとフラックス評価がより確かになるのか検討しました。その結果、南米・アフリカ・アジア大陸に新たな観測点を置くとよいことが分かりました。この手法は最適な観測網を提案する従来の方法よりも計算負荷が軽いため、15種類の大気輸送モデルを逆問題に利用でき、各輸送モデルが有する不確定性を打ち消すことができます。以上の成果は、今後のCO2観測計画で活かされる予定です。



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