シベリアの積雪・凍土・森林と気候

シベリアはその自然環境の特徴から、その環境変化は、地球環境にさまざまな影響を及ぼすと言われています。大畑グループリーダーにより、シベリアが地球環境に果たす役割についてご紹介いたします。

大畑哲夫(地球観測フロンティア研究システム       
水循環観測研究領域グループリーダー)


シベリアのタイガ帯の積雪。
森林のないところは日射を良く反射する。

シベリアは年平均気温が0℃以下であるため、永久凍土が分布し冬期を中心として積雪に覆われるとともに、タイガと呼ばれる大森林帯が分布しています。これらがこの地域の気候形成に強く関わっていますが、そのメカニズムはかなり複雑です。

温暖化による凍土・積雪の変化を通しての気候へのフィードバックは目を離せない現象です。凍土は水の流れを表層に限定し水循環、ひいてはエネルギー循環を規制する重要な気候因子です。既に温暖化のため凍土南部では地温上昇が大きく面積が減少していると考えられています。このような変化は表層の乾燥化、植生の脆弱化をもたらし水資源にも影響を及ぼすことが懸念されています。積雪面積減少は、温暖化を加速する効果があるといわれていますがそれがどのようなメカニズムを通じ、また程度かということも評価しなければいけません。

観測研究対象地域

森林も重要な気候要素です。そもそもここに森林がなかったら、春期を中心に気温が現在より8−12度低いであろう、「極端に寒いシベリア」になる、というある研究者の大気大循環モデルの計算結果が出ています。これはこの地域のみならず、南方、日本にも影響を及ぼします。森林がなければシベリアの地表面のアルベド(日射の反射率)は積雪の数値80%になってしまい、20%の日射しか吸収できなくなるためです。しかし、現在は、色の濃い大森林帯があるために地表面のアルベドは30%と低く保たれ、70%を吸収しているのでシベリアの気温は暖かく保たれています。森林伐採・火災で森林面積が減少すれば、「極端に寒いシベリア」に近づくでしょう。逆に植林するとより暖かいシベリアになっていくでしょう。両方のケースとも炭素循環に影響を及ぼすため、実際に地球が向く方向についてはこれらも含め総合的に評価しなければなりません。


研究対象地域の断面の概念図と水循環

広大な面積を占めるシベリアゆえ、変化はシベリアのみならず広域に影響します。そのため、そこで起こる諸過程を把握し、変化を十分監視するとともにモデルを用いて変動性を議論する必要があります。

陸面水循環過程グループは、このような事実を主要な背景の一つとして、シベリア地域、南部のモンゴルに観測網を配置し、水熱交換・水循環過程、積雪凍土の長期観測に基づく多元的な観測研究を実施しています。

参考文献
大畑哲夫(1996): 積雪と凍土「大気水圏科学からみた地球温暖化」(半田暢彦編)、名古屋大学出版会、227-240.


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