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| カナダ海盆200メートル深におけるケイ酸塩の変動。各年の標準偏差も示しています。 |
海洋場の観測は非常に限られていましたが、最近公開された旧ソ連の化学データを解析して、海洋変動を見出しました。カナダ海盆では太平洋から流入した太平洋水に加えて、シベリア陸棚からの河川水に含まれるケイ酸塩が100メートル深に最大値を作ります。100メートル以深では大西洋水の値に低下していくので、200メートル深のケイ酸塩の時系列をとると(図4)、その増減は密度面の下降上昇を表わします。極渦の強弱に対応して、ケイ酸塩が減少増加し、密度面が上下し、予想された海洋の上下変動が見出されました。
極渦の強弱とそれにともなう気温の上下によって、海氷分布と海洋循環が変動することがわかりました。他の要素では冬季の熱バランスには長波放射が一番重要でしょう。旧ソ連の雲量データは快晴の減少(すなわち雲量の増加)を示しています(図5)。 この影響は最近30年間で5ワット/平方メートルの海洋への熱フラックス増加となり、海氷面積減少によるアルベド(日射の反射率)低下の効果と同程度です。さらに海氷減少が海面からの蒸発をうながし、雲を増やすことも充分考えられます。
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| 北極海を回遊するキャンプから計測された快晴(雲量0−2)時間の四季節における割合。3年移動平均をほどこして います。 |
気候モデルを用いた温暖化実験では高緯度域の気温上昇が再現され、海氷減少の進行をもって、モデルの再現性を検証することが多いのですが、雲量や海洋循環まで含めた検証は行われていないので、今後の重要な研究課題です。将来予測のためには、海氷分布から大気場へのフィードバックの理解が鍵となるでしょう。特に夏季の応答を調べることや、夏季の海氷面積変動が冬季には厚さの変動になって残っている効果を考慮することが新たな展開をもたらすかもしれません。
参考文献
Ikeda, M., Wang, J., and A. Makshtas, 2003: Importance of clouds to the decaying
trend in the Arctic ice cover. J. Meteorol. Soc. Japan (in press).

Polyakov, I. V., and M. A. Johnson, 2000: Arctic decadal and inter-decadal
variability, Geophys. Res. Lett., 27, 4097-4100.

Thompson, D. W. J. and J. M. Wallace, 1998: The Arctic Oscillation signature
in the wintertime geopotential height and temperature fields. Geophys. Res.
Lett., 25, 1297-1300.

Wang, J., and Ikeda, M., 2000: Arctic oscillation and Arctic sea iceoscillation,
Geophys. Res. Lett., 27, 1287-1290. |