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冬の天候から夏の天候をつなぐ北極域雪氷圏
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| 北極が地球規模の気候変動に与える影響を山崎・立花両研究員がご説明いたします。 |
| 山崎孝治・立花義裕(地球フロンティア研究システム国際北極圏研究センター) |

冬季北大西洋に気候学的に存在 するアイスランド低気圧とアゾレス高気圧がともに強まったり弱まったりする現象を北大西洋振動(NAO)[例えば、Hurrell,1995]とよび、ヨーロッパの冬の天候を支配する現象として古くから知られていました。最近、有名になった北極域と中緯度域のシーソー現象の北極振動(AO) [Thompson and Wallace, 1998]とNAO は、太平洋域を除けば、ほとんど同じものです。アイスランド低気圧を含む北極域の気圧が深まるときをNAO/AOが正といいます。NAO/AOが正のときはユーラシア北部で気温が上昇し、大西洋・ヨーロッパ域では移動性の低気圧活動が北偏し降水量も変動します。NAO/AOには正のトレ ンドがあり地球温暖化との関係が議論されています。
冬のNAOは引続く春・夏の大気循環にどのような影響をもたらすでし ょうか。図1上は冬(12,1,2月)の NAOと初春(2, 3, 4 月)の500hPa 高度場との線形回帰図ですが、NAO的シーソーパターンがまだ見えています。NAO自身は持続性はありませんが、NAOの影響は初夏の循環にもはっきりと現われることがわかりました。図1下は冬のNAOと初夏(5, 6, 7月)の500hPa高度の線形回帰図ですが、冬のNAOが正であれば北極域で高度が下がり中緯度で高度が上がる傾向にあることがわかります。特にオホーツク海北部の正の偏差は顕著です。海面気圧でも パターンは同様でオホーツク海高気圧が強まります。AOでも同様な傾向がみえます。 |



| 図1 |
(左)冬(12, 1, 2月平均)のNAO 指標と初春(2, 3,4月平均)の500hPa高度との線形回帰図。色は相関係数を示し、90%,95%,
99%の有意水準を示す。
(右)上と同様の初夏(5, 6, 7月平均)に対する図。 |
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これは北日本では冷夏をもたらします。
大気循環自身は1ヶ月を超えるような予測可能性は持っていませんから、 図1に見られる関係は大気以外のもっと長期の記憶を持つものによってもたらされたと考えられます。そこで積雪被覆率、海氷、海面水温との関係を調べてみました(図2)。NAOが正であると初春(2, 3, 4月)にヨーロッパ・中央アジアで雪が少なくバレンツ海・グリーンランド海で海氷が少なくなります。シベリアにシグナルが見られないのはこの地域では雪が解けるのが5月以降だからでしょう。雪の多寡は、春に雪が解けても土壌水分量
に影響を与え、蒸発・降水・顕熱 輸送過程を通して大気の加熱に影響を与えると考えられます。初夏になるとヨーロッパの雪は解けてしまいシグナルはなくなりますが北極海の海氷や東シベリアの雪に影響が残っています。 |
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| 図2 |
(左)冬のNAO指標と初春(2, 3, 4月)の積雪被覆率(陸地上の色)、海氷(海洋上の色)及び海面
水温(海洋上の等値線)との相関係数分布図。
(右)初夏(5, 6, 7月)に対する上と同じ図。 |
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参考文献
Hurrell, J. W., 1995: Decadal trends in the North Atlantic Oscillation: Regional
temperatures and precipitation. Science, 269, 676-679.

Thompson, D. W. J. and J. M. Wallace, 1998: The Arctic Oscillation signature
in the wintertime geopotential height and temperature fields. Geophys. Res.
Lett., 25, 1297-1300. |
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