領域ニュース

本領域には、現在、2人の客員研究員が滞在中です。9月から6ヶ月の予定で滞在しているBhaskar Rao教授はインド、アンドラ大学気象海洋学部長の要職にあり、積雲パラメタリゼーション、熱帯低気圧のシミュレーション、アジアモンスーンに関する研究の第一人者です。数値モデルの専門家として気候変動を解明する為、様々な数値モデルを構築、改善しており、昨年度の滞在時に行っていた大気大循環モデルの改良に加えて、気象の領域モデルの発展に引き続き貢献しています。12月より3か月間の予定で滞在しているHendrikus Wicher Ter Maat氏は領域の長身記録を塗り替え、2メートルを超える偉丈夫です。オランダのWageningen大学Alterra研究所で、若手研究員としてアフリカ、ブラジル、ヨーロッパ地域の領域モデルの構築・開発に従事して来ました。本領域にあっては海洋性気候変動の影響を被る太平洋やインド洋周辺地域等でのリージョナルな気候変動予測とその応用のため、領域モデルとグローバルモデルの接点部分について、 鋭意、開発に努めています。両者ともに桜花の季節までの滞在ですが、本領域の研究への貢献が大いに期待されています。



鈴木研究員による出張報告をご紹介します。
2002年12月6〜10日にサンフランシスコで開催された、American Geophysical Union(AGU )の2002年秋季大会に参加しました。会場の一 角の無線LANのコーナーから日本のニュースをチェックすると、関東地方では12月としては珍しい大雪とのこと。地中海性気候に位置し、冬でも比較的暖かなサンフランシスコに、その時期に滞在できたことを密かに喜ぶことにしました。写真は、無料ビールのサービスもあった、ポスターによる研究発表の会場です。広大な会場には、専門分野ごとの区画が作られています。伝統的な専門分野の他に、分野間を横断的につなぐ新しい分野が目立っていたことが印象的です。各ポスターの前には発表者が立ち、他の研究者と熱い議論を交わしていました。私の主な興味は地球を広く覆う植物の状態についてです。地球観測衛星などから得られた植物分布データを元にした多数の挑戦的研究が行われており、最先端の研究動向に関する情報を仕入れることできました。
   

炭素循環研究グループでは、高解像度の海洋大循環モデルを用いたトレーサー実験を行っています。海洋に吸収された二酸化炭素は、大規模な海洋循環によって輸送されるだけでなく、西岸境界流や中規模渦によって再分配されるためその挙動を理解することが不可欠です。これまでに緯度経度0.25度の解像度のモデルによる仮想トレーサーの実験により、深層で渦活動による大きな鉛直混合が起こること、高緯度域で吸収された物質が外洋域だけでなく西岸境界流によっても熱帯域に運ばれることなどを再現し、学会で発表しました。現在、気候変動予測研究領域と地球シミュレータセンターの共同で開発された超高解像度モデル(水平0.1度)に、トレーサーとしてフロンを用いた実験を開始したところであり、より詳細な輸送過程を調べることが可能となります。地球シミュレータによって、物理過程だけでなく海洋の物質輸送研究にも新たな展開が期待されます。


急速な経済発展を続ける東アジアでは、大気汚染物質が大量に放出されており、今後も放出量が増加し続けると予想されていま す。その影響は、地球温暖化、森林破壊等の自然環境変化、農業生産性の低下、健康被害など多岐にわたることでしょう。

今まさに私たちは、東アジアでの広域大気汚染を長期にわたって観測する体制を整えて、その変動メカニズムを解明すべき機に達しています。そこで、文部科学省の人・自然・地球共生プロジェクトの一環で、大気組成観測のためのタスクチームが結成されました。まずは、今年度の終わりからオゾンと一酸化炭素の連続観測を中国の人口過密地域で開始する予定です。シベリアの人里離れた地域でも同様の観測を行い、東アジアにおける大気のバックグランド状態も探ります。データが不足するこれらの地域での観測は、大気化学輸送モデルの検証と精緻化に役立ち、東アジアの広域大気汚染の将来を予測する上で極めて重要な活動と信じています。