| 領域ニュース |
気候変動予測研究領域 |
平成15年10月1日より、我々の領域に加わった、寺坂晴夫研究員をご紹介いたします。
東芝から気候変動予測研究領域に出向してまいりました。私は、大学では機械工学を専攻し、東芝入社後は沸騰水型原子炉や高速増殖炉などを主にした原子力工学分野や上水道処理などの公共事業分野における熱流動現象の研究に従事していました。また、3年程前からは東北大学流体科学研究所において大規模数値流体解析とその可視化についての研究を行っていました。これからは気候変動予測研究領域の研究テーマである、日本沿海予測可能性実験(Japan
Coastal Ocean Predictability Experiment:JCOPE)の高度化などに取組んでいく予定です。前述のように一貫して工学畑を歩んできましたので、理学系の分野の研究をするのは実はこれが初めてになります。こちらに来てから、感心すること、驚くこと、また逆に違和感を覚えることなど毎日が新しい発見の連続ですが、この初心を忘れず少しでも地球フロンティア研究システムの活動に貢献できますよう頑張っていきたいと思います。 |
水循環予測研究領域 |
| 陸面過程は陸域での大気下端のエネルギーや水の出入りを担い、植物の光合成活動によって蒸発散量と共に二酸化炭素(CO2)の出入りもコントロールするなど、気候モデルで欠かすことのできない部分の一つです。陸面水文モデルMATSIRO(Minimal
Advanced Treatments of Surface Interaction and Runoff)は、必要なプロセスをできるだけシンプルにモデル化することを目指して気候研究用に開発されました(Takata,
Emori and Watanabe, 2003)。MATSIROでは熱・水収支を植生表面と地表面で計算します。積雪の有無によって熱・水収支が大きく変化するため、積雪のある部分/無い部分に分けて熱・水収支を計算します。その時サブグリッドスケールの積雪被覆率は積雪量から推定します。積雪の反射率も熱収支への影響が大きいため積雪経過時間と雪温を考慮して算定します。植生の蒸散には簡単な光合成モデルを用い、土壌は多層にして凍土を表現できるようにしました。流出には単純化した地形を考慮したモデルを用いています。高田サブリーダーらはツンドラ域の観測データを用いてこのモデルを検証し、熱・水・CO2フラックスに対する主なパラメタの感度を調査しました。本谷研究員らは全球データセットを用いて地球規模の水収支を検証し、降水量補正の効果について調査しています。これらの研究から陸面プロセスの理解を深め、水循環における陸面過程の役割を明らかにしていきます。 |
地球温暖化予測研究領域 |
| 夏から秋にかけて、地球温暖化予測研究領域では、学会等各種研究集会に多くの研究者が参加しました。台風、梅雨、冬季降雪、雲のフィードバック効果といった温暖化の重要課題について活発に議論がなされました。また、世界でも類のない渦解像全球海洋モデルによるフロンシミュレーションが行われ、いままで表現できなかった西岸境界域と沿岸域における人為起源二酸化炭素の吸収過程を研究することができるようになりました。古気候では、新生代第四紀について、10万年の超長期数値シミュレーションが可能な先端的な大気・海洋・氷床結合モデルを開発し、最終氷期末期の気候状態再現を試みたことを発表しました。また、氷期終焉の原因についても発表しました。新生代第三紀については、パナマ地峡の開閉に関する気候モデル感度実験の結果を発表しました。この実験によって、パナマ地峡が開いていると、深層水の形成海域が北大西洋から北太平洋に替わり、熱塩循環が北太平洋で活発になり、北大西洋で不活発になることが初めて見出されました。これらの研究成果は、今後の気候モデルの開発と、地球温暖化予測の精度向上に役立つものと期待されます。 |
大気組成変動予測研究領域 |
| 大気組成データ解析グループでは、欧州・北米・アジア3大陸上でのオゾン変動を研究しています。近年のシミュレーションでは、東アジアのオゾン濃度レベルは、3大陸でのオゾン前駆体放出量によって決まる「北半球のバックグラウンド濃度」に、地域規模で起きる光化学的オゾン生成分が上乗せされて決まると考えられており、これらの寄与を観測データ側から推定する方法を確立することが必要です。Naja研究員は、各大陸上でのオゾンゾンデデータについて、測定された気塊が大陸上に滞在した日数と到来した方向に基づき解析を行いました。結果、1990年以降欧州では、オゾン前駆体である窒素酸化物放出量の減少を受け、境界層内で作られるオゾン量が急減したことがわかりました。しかしながら下部対流圏でのオゾン濃度レベル自体に減少がみられないのは、北米で放出された前駆体が大陸間輸送される量が多くなり、窒素酸化物減少の効果を打ち消してしまったためと考えられます。日本上空の下部対流圏オゾン量には、晩春〜夏に中国からの輸送が大きく影響するだけでなく、年間を通じて欧州からの輸送も重要とわかりました。こうした長距離輸送に関する観測証拠をもとに各大陸でのバックグラウンド濃度およびオゾン環境基準を決定することが重要です。 |
生態系変動予測研究領域 |
伊藤研究員による出張報告をご紹介します。
10月21〜22日に岐阜県高山市で開催された森林生態系の炭素収支に関するワークショップに参加しました。京都議定書でも森林吸収源が扱われているように、現在の重要なテーマです。会場近くの乗鞍岳山麓にある観測サイトでは岐阜大学および産業技術総合研究所グループによる10年間の継続観測が実施されています。生態系の微妙な変化を何年も観察し続けるのは大変な仕事で、そのため生態系モデルの結果を検証することは一般には難しいのです。このサイトでは貴重な長期データが得られているため、相当の確かさでモデルを動かすことができ、今回発表したその内容も幸い良い反応が得られました。終了後は参加者全員で観測サイトを訪れて更なる議論に花を咲かせました。標高1420mの現地はもう紅葉に彩られていました。 |
モデル統合化領域 |
| 去る10月26−29日、イギリス・ケンブリッジにおいて国際地球圏生物圏計画(IGBP)のコアプロジェクト「地球規模の解析・解釈・モデリング(GAIM)」の特別委員会年次会合が、各国から計20数名の参加者を得て開催され、地球フロンティアからは阿部彩子(温暖化研究領域)、河宮未知生(モデル統合化領域)が参加しました。会合では、IGBP以外も含めた地球環境研究に関する国際プロジェクト全般に対してIGBP/GAIMが今後果たしていくべき役割、また地球システムモデルに対する人間活動の導入について重点的に議論が交わされました。上記のうち特に2番目の話題など「いかがわしい」と感じる向きもあるでしょうが、今後IPCC第4次報告書においても3作業部会間の横断的研究の重要性が強調されることが予想され、こうしたテーマにもバランスのとれた態度で取り組んでいくことが必要となるでしょう。また次回の会合を日本で開催することも検討されました。国際的な研究プロジェクトにおいてわが国の貢献を示す上で良い契機となり得るので、実現に向け努力していきたいと思います。 |
国際太平洋研究センター |
地球シミュレータセンター(ESC)とIPRCとの連携が進みつつあります。Kevin Hamilton教授が初夏にESCを訪れ、さらにその後、ESCの大淵研究員、高橋研究員がIPRCに来訪し、ESC大気大循環モデル出力の解析が協力して進められています。ESC海洋大循環モデルの出力は、IPRCが運営するAPDRC(Asia-Pacific
Data-Research Center)のサーバ上に転送され、モデル出力への簡便アクセスが可能になりました。
10月に二人のポスドク研究員を迎ました。東京大学より移ってきた古恵亮研究員は赤道域の亜表層流力学の研究に、ドイツのUniversität
Karlsruheより転任してきたMarkus Stowasser研究員は大循環モデルを用いた気候変動の研究に取り組む予定です。
研究の進展としては、まず、北赤道海流の黒潮とミンダナオ海流への分岐に北東モンスーンが重要な役割を担っていることを示しました。また、インド洋ダイポールが全球気候システムに影響を与えていることを示唆しました。大気波動擾乱の赤道域から赤道域外への遷移と、それに続く、総観規模波列の負偏差域での台風形成を、衛星観測資料から捉えました。 |
国際北極圏研究センター |
CAMP-FRSGC合同ワークショップ開催報告
米国国立科学財団(NSF)の助成プロジェクト「北極の気候:モデリングとプロセス」(CAMP)と地球フロンティア研究システム(FRSGC)の合同ワークショップが、6月10日と11月5日に海洋科学技術センター横浜研究所で開催されました。第一の会議では、国際北極圏研究センター(IARC)の科学者とFRSGCのモデル研究者および他の研究機関の科学者が参加し、共同研究、特に地球シミュレータを用いた共同研究の可能性について話し合いました。その結果、地球シミュレータを用いた全球海洋モデルの計算、解析を共同で研究することになりました。第二の会議では、その共同研究の進捗状況が報告されました。全球海洋モデル計算の結果、北極海の物理過程、例えば大西洋水層や高密度水塊の形成について有益な結果が得られました。FRSGCとCAMP/IARCの本共同研究の最終目標は、全球大気海洋海氷結合モデルを用いて、高緯度の大気ー海洋系固有の10年規模振動がもたらす海洋ー海氷偏差の気候変動への役割を解明することです。また、IARCは、FRSGCと気象研究所および気象庁が進めている高解像度全球大気モデルを用いた極端な現象の解明にも、共同研究することになりました。特に、IARCは高緯度である北極圏の極端な現象の解明に携わります。 |