領域ニュース
気候変動予測研究領域
京都大学防災研究所ホームページ
http://www.dpac.dpri.kyoto-u.ac.jp/mukou/meeting-03.html) より
 2003年10月30-31日に京都大学宇治キャンパス木質ホールにおいて防災研究所特定研究集会「対流圏長周期変動と異常気象」(研究代表者:向川均助教授)が開催されました。ここ最近の世界各地で発生する異常気象の出現頻度やその規模は、それ以前の様相とは異なることが指摘されています。また、地球温暖化現象に伴い対流圏の循環が大きく変わりつつあることも認識されつつあります。本研究集会では、このような異常気象の実態を把握し、異常気象を引き起こす原因である対流圏長周期変動のメカニズムを解明することを目的としています。地球フロンティアからは他の領域も含め多くの研究発表がありました。当領域からは中村尚グループリーダーをはじめ、本田明治研究員、山根省三研究員、高谷康太郎研究員が参加し、オホーツク海高気圧の形成過程やアリューシャン低気圧、シベリア高気圧の季節内変動について発表を行いました。全国から参加した多くの研究者の間で気候変動について活発な議論がなされ、2003年夏の異常気象についても検討が行われました。
水循環予測研究領域
 雲・降水過程グループでは、エアロゾルの間接効果を実験的に実証するために、岩手県の仙人峠にある釜石鉱山の立坑(深さ約450m)を利用して、準実スケールの雲物理実験を複数の研究機関と合同で毎年行っています。本年も11月末に実験を行いましたが、本実験では上昇速度と雲凝結核の両方を変えるので、本グループが作成した詳細雲物理モデル及びそれに基づいて開発したパラメタリゼーションの検証が可能です。今回はカリフォルニア大学サンタクルスのP.Chuangも参加しました。彼は、雲内の乱流によるエアロゾルの活性化とそれに伴う雲粒の成長に興味があり、モデル計算の実証を本実験装置で行うことを希望しています。彼には、実験に参加した後、地球フロンティア研究システムの全体セミナーで"Studies ofaerosol-cloud-climate interactions"というタイトルで講演を行ってもらいました。
地球温暖化予測研究領域
 炭素循環研究グループでは、気候変動予測研究領域と地球シミュレータセンターの共同で開発された超高解像度(水平0.1度)海洋大循環モデルを用いて、フロンを入れた実験を行っています。海水に溶けたフロンは、化学的生物的に安定で、海の流れや拡散によって中深層へと広がります。図は、北大西洋深層のフロン11濃度の結果を示しています。濃度の高い水(暖色)は、最近大気からフロンを吸収し、北大西洋北部で沈みこむ様子を示しています。この海域は、地球の気候変動に重要な深層水が形成される場所であり、フロンを流すことにより、深層水の形成、広がりを視覚的にとらえることができます。
大気組成変動予測研究領域
 全球化学輸送モデリンググループでは、対流圏オゾンが地域的な大気汚染と地球規模の気候とに及ぼす影響の相関関係の定量化をめざしています。対流圏オゾンは二酸化炭素とメタンに次いで重要な温室効果気体ですが、過去100年の濃度増加(3〜4倍)は二酸化炭素とメタンを遥かにしのぎます。この濃度増加は人間活動によるものと推定されますが、地表付近で発生する光化学スモッグ中のオゾンの増加という側面も併せ持っており、人々の健康や農産物の収穫量にも影響しています。2001年春に西太平洋で行われたNASAのTRACE-P航空機観測では、東アジア起源の非常に汚染された空気をキャッチしました。化学輸送モデルを用いて観測データを詳細に解析したワイルド研究員は、高気圧に覆われた晴天時には中国において光化学スモッグ中のオゾン生成が促進され、曇天時には地球規模の気候への影響が大きくなることを示しました。この結果は地域的な大気汚染と地球規模の気候との複雑な関係を示しており、今後、より高解像度の化学輸送モデルを用いることで多くの知見が得られるかもしれません。
生態系変動予測研究領域
海洋生物過程モデル研究グループが取り組んでいるプロジェクトを紹介します。
  同グループでは、2003年度より地球環境研究総合推進費を受け、東北区水産研究所等との協力のもと西部北太平洋における海洋生態系変動のメカニズム解明をめざした研究をスタートしました。
  本研究では過去50年間に採集された動物プランクトン標本(収集者である小達博士にちなんで通称Odate Collection)の解析が中心となります。Odate Collectionの他には50年以上にわたるプランクトンデータは世界でも米国のスクリップス研究所、イギリスのハーディ研究所が有するのみです。これらの研究所と協力し海域毎のメカニズムを比較することにより、半球スケールの気候ー海洋生態系変動のパターンが明らかになることが期待されます。また本研究で良い結果を出すことにより、近年予算的に軽視されつつある地道なモニタリングの継続の重要性をアピールできればと思います。
モデル統合化領域
共生プロジェクト第7課題の研究を紹介します。
 地球シミュレータ用に開発された大気・海洋・海氷結合モデルCFES(Coupled Atmosphere-Ocean-Sea Ice model for the Earth Simulator)のパフォーマンスの向上のため、現在様々な改良が加えられています。地球シミュレータセンターで組み上げられた結合モデルに対して、モデルの能力を最大限に生かすために必要不可欠な大気・海洋それぞれについてのパラメータチューニングを精力的に行い、気候値の再現性の向上が図られています。また現在大気モデルの陸面部分に組み込まれている「バケツモデル」と呼ばれる単層モデルに変えて、新開発された陸面パラメタリゼーションスキームMATSIRO(Minimal Advanced Treatments of Surface Interaction and Runoff)を導入する作業が進められています。さらに、このように開発・改良された結合モデルをもとにして、変分法データ同化システムが構築されつつあります。現在は気候値実験に向けて開発が進められていますが、1990年代についての再解析統合データセット構築という目標達成に向けて、日々努力を続けています。
国際太平洋研究センター
 山形プログラムディレクターが1月にIPRCを訪れ、気候予測におけるインド洋の役割について東アジアモンスーンとの関わりを中心にセミナーを行いました。
 研究の発展としては、地球シミュレータ及び地球フロンティアとの共同研究の一環として、地球シミュレータ海洋大循環モデルのインドネシア多島海域の出力の解析が行われています。その結果、インド洋と太平洋をつなぐ重要なこの海域での複雑な流れを理解するために、このモデルの出力が極めて有益であることが分かりました。また、衛星観測によって海洋の前線や渦が海上風速の分布に影響を及ぼすことがわかってきました。IPRC局所モデルと衛星観測資料の解析によって、表層の圧力勾配が海上風速に影響を及ぼす主要因であることが明らかになりました。海洋生態系において攪拌と混合の性質が、植物プランクトンのブルーム現象に重要な効果を持つことが見つかりました。これは、生態系モデルを気候モデルの中に組み込む際に、非常に小さいスケールの過程を考慮する必要があることを示しています。
  IPRCは3人の新しいポスドク研究員を迎えました。Chi-Yung F.TamはTim Liと熱帯低気圧の研究に、Andrei NatarovはKelvin RichardsとJayMcCrearyと赤道海流系の不安定と混合に関する研究を行っています。また、吉成浩志はAPDRC(Asia-Pacific Data Research Center)の活動に参加しています。
国際北極圏研究センター
最近の北極圏におけるサイクロン活動の強化
 サイクロン活動は気候変動とトレンドを決めている重要な要素であり、激しい気温、降水量、風力の変動をもたらす重要な気象現象で、最近のドラマチックな北極圏の気候変化に伴い、注目を集めてきています。X.Zangらの研究グループは新たにサイクロン活動指数を導入して気候変動という枠組みの中での北極サイクロン活動を調べました。研究の結果、20世紀後半の中緯度でのサイクロン活動は減少にあるが、同期間の北極での活動は増加していることが判りました。また、中緯度から北極圏に入ってくるサイクロンの数も増大しており、進路が北方にシフトしていることが判明しました。1960−1993年の中緯度でのサイクロン活動の減少の前後にみられる高い北極圏サイクロン活動の傾向は北大西洋とユーラシア大陸でのサイクロン活動の変動との関連が深いことも示されました。この研究から更に、北極圏とその境界帯でのサイクロン活動の相互作用とその経年変動、北大西洋振動、北極海海氷運動間の関係が明らかになりました。
Frontier Newsletter/No.25
FRSGC Index
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