「地球フロンティア研究システム」は発足から7年が経った平成16年7月より、独立行政法人海洋研究開発機構の新体制下において、「地球環境フロンティア研究センター」として、スタートを切りました。今回は、新研究センターとしての今後の計画等についてご紹介します。
地球環境フロンティア研究センター長
松野太郎
日本政府の方針として進められてきた独立行政法人の設立により、海洋研究開発機構も今までより自主的運営が可能となると共に、より公共性、透明性を求められるようになりました。独立行政法人海洋研究開発機構は、海洋科学技術に関する基盤的研究開発、及び研究開発成果の普及及び成果活用の促進等を通じて、社会の要請に応ずるため、決められた義務を果たす必要があります。詳細につきましては、「独立行政法人海洋研究開発機構が中期目標を達成するための計画(中期計画)について」に掲載されています。(URL: http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/PR/0404/0402/
この改革で、海洋研究開発機構は、研究開発を主な活動の基盤として、組織を再編成し、地球環境観測研究、地球環境予測研究、地球内部ダイナミクス研究、海洋・極限環境生物研究のそれぞれの研究開発を担う4つの研究センター、及び研究の基盤となる技術開発を担う3つのセンター(その一つは「地球シミュレータセンター」)を設立いたしました。
地球環境フロンティア研究センターは、このうち、エルニーニョのような自然の気候変動や地球温暖化等の人間活動に起因す
る地球環境の変動の予測の実現を目標としていくものです。今後は新しい5カ年の中期計画に沿い、活動を推進していくこととなり、期間ごとに、業務継続の必要性、組織形態のあり方等に関して、見直しが行われますが、「地球フロンティア研究システム」からの基本方針である、「地球環境変動予測の実現に向けて」を、さらに具体化するべく、活動を続けてまいります。一方、定期的に外部評価を受けることで、研究活動の方針を確認し、社会に対して目に見える研究成果をご紹介していきます。
地球環境フロンティア研究センターは、気候変動、水循環、大気組成、生態系という地球環境変動に関わる4つの 個々のプロセス研究のプログラム及びそれを統合的に研究する地球温暖化及び地球環境モデリングの合わせて6つ の研究プログラムで構成されており、各研究プログラムが、5年ごとの中期計画を実現するため、それぞれの具体的な目標を掲げて、研究を推進して行きます。今後は、この4つの研究プログラムでのプロセス研究を充実させ、同時に、各研究プログラム間での横断研究を推進し、これらをまとめた温暖化・気候変動予測モデル、地球環境システ ム統合モデル等を開発し、数値実験を行います。また、将来の地球環境変動予測研究と共に、季節内から10年規模の気候変動に関する研究も行っていきます。今後も、地球環境フロンティア研究センターとして、われわれの最終目標である「地球環境変動予測の実現に向けて」を推進するため、活動を展開してまいります。
*これまで「地球変動」を英語の"Global Change"に対応する語として用いてきましたが、新機構の中に、マントル対流やプレート/沈み込みなどを対象とした「地球内部変動研究センター」が設立されたのを機に、我々の研究対象を「地球環境変動」と呼ぶことにしました。

 

地球フロンティアの目標である地球環境変動の予測を実現する事は、具体的には予測を可能とするモデルを開発する事です。地球環境変動(Global Change)は、それ自体が自然変動と人間活動による変化の両方を含んでいますが、この2つの成分は、時間スケールが異なり、また社会で要求される予測の性格も異なっています。このため、モデル作りにおいても何に重点を置くかで違いがあり、その点を考慮し、次のような目標の下に複数のモデル開発を進めています。
地球温暖化とそれに伴う気候変化の推定を主目的とする高解像度大気・海洋・陸面結合モデル
   
前記(1)で開発したモデルは2004年度中に地球温暖化実験を行うことを主目的としたため、解像度や組み込まれた物理過程の観点で一般的な自然の気候変動の研究には必ずしも適していません。そこで、いわば(1)のモデルから枝分かれして、多様な気候変動の研究にフレキシブルに対応できるよう、東京大学気候システム研究センターなど他機関のグループとも協力し、現段階で最良と思われるモデルを開発します。2003年度に方針を定め現在具体計画を立てている段階で2004年度から開発に着手しています。
地球環境全体の変化をシミュレートする地球環境(地球システム)統合モデル
   
地球環境の物理・化学・生物的各要素を対象とする専門家が揃う当センターの強みを活かし、各プログラム(及びその関連する日本の他機関)で作られている個別のサブシステム・モデルを元にそれらの相互作用を取り入れて地球環境システムの統合モデルを開発します。2002年度より、「共生プロジェクト・日本モデルミッション」の課題2として開発を開始し、現在、陸域・海洋それぞれの炭素循環モデルの開発と結合を終了しました。大気化学を気候モデルに導入し、大気質変動と気候変動の相互作用を取り扱うモデルも完成しました。今後は、炭素循環と気候変化とのフィードバックを取り入れたモデルの開発を進め、2005年早期に温暖化実験を終了してIPCC第4次報告に貢献することを第一優先とします。
自然の気候変動のメカニズム解明とその予測を主目的とした中・高解像度大気・海洋・陸面結合モデル
   
前記(1)で開発したモデルは2004年度中に地球温暖化実験を行うことを主目的としたため、解像度や組み込まれた物理過程の観点で一般的な自然の気候変動の研究には必ずしも適していません。そこで、いわば(1)のモデルから枝分かれして、多様な気候変動の研究にフレキシブルに対応できるよう、東京大学気候システム研究センターなど他機関のグループとも協力し、現段階で最良と思われるモデルを開発します。2003年度に方針を定め現在具体計画を立てている段階で2004年度から開発に着手しています。
地球シミュレータでしか出来ない超高解像度・次世代大気モデル及び海洋モデル
   
これまでのスーパーコンピューターの計算速度記録を一挙に5倍も超えた「地球シミュレータ」を用いてはじめて可能となる先端的大気・海洋モデルとして、新しい方式による超高解像度モデルの開発を1999年以来続けてきました。これらのモデルは2004年度中に大気モデル、海洋モデルとしての原型が出来上がる見通しです。大気モデルは正20面体を基にした新しい格子を用い、非静力学方程式に基づくもので、水蒸気を含まない「力学コア」に関して3.5kmメッシュで10日間安定に積分を行う事に成功しました。2004年度中には水蒸気と雲微物理過程・放射過程を組み込み「全球雲解像モデル」として一通り完成の予定です。高解像度の大気モデルにおける「対流雲パラメタリゼーション」に対して原理的困難性の認識がこの1、2年世界的に高くなってきているので、このモデルの完成は世界に大きな影響を与えることが期待されます。
海洋モデルは立方体を基礎にした格子で、当初開発して来た局所直交座標に代え、全球をほぼ一様なサイズの格子に切る一般化座標(局所直交性は失われる)を用いた計算効率の良い数値計算スキームを2002年度から開発しています。2003年度には浅水モデルを完成し、ついで3次元「海洋モデル」を開発し、2004年度中に一応の完成に達する予定です。このモデルも海洋モデル研究者の夢である「10kmメッシュの渦解像モデルで全海洋の循環の1000年積分を1ヶ月程度で実行できる」文字通り次世代のモデルとなることでしょう。
 
Frontier Newsletter/No.26
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